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「先進国」における「強欲新自由主義」の実験場になった日本の悲惨な現実

現在の「新自由主義」は、米国の経済学者ミルトン・フリードマンを祖とするシカゴ学派の学説を学んだ所謂「シカゴ・ボーイズ」(シカゴ大学出身の経済学者)たちが世界中に広めたものである。彼らは、ピノチェトが軍事クーデターでアジェンデ民主政権を倒したチリで「新自由主義政策」の実験を行い、その絶大な「効果」を実証した。

この学説が世界に広まる事で巨大な利益が得られる事を知っていたグローバル大資本家層が、彼らを支援した事は言うまでもない。つまり、「新自由主義」は、最初から大資本家層のための「経済学」だった訳だ。

「新自由主義」の基本理念は、次のようなものである。

①市場が人間を支配するのが最も公平(市場原理主義)          ②規制緩和・民営化・小さな政府                   ③資本移動の自由化・グローバル化(他国に土足で踏み込むグローバリズム)                              ④富裕層・大企業の利益優先・格差拡大                ⑤政権と結託し強引に目的を達成・体制破壊(※「ショック・ドクトリン」)

菊池英博『そして、日本の富は略奪される~アメリカが仕掛けた新自由主義の正体』より引用)   ※は筆者

「日本型新自由主義」は上記の基本理念に「対米従属」という日本の宿痾と復古的な「新保守主義思想」というイデオロギーがセットになっている。

「新自由主義」の本質を知る上で以下の宇沢弘文による批判も参考になる。

「新自由主義は、企業の自由が最大限に保証されてはじめて、個人の能力が最大限に発揮され、さまざまな生産要素が効率的に利用できるという一種の信念に基づいており、そのためにすべての資源、生産要素を私有化し、すべてのものを市場を通じて取り引きするような制度をつくるという考え方である。新自由主義は、水や大気、教育や医療、公共的交通機関といった分野については、新しく市場をつくって、自由市場・自由貿易を追求していくものであり、社会的共通資本を根本から否定するものである。」

「CO2による地球温暖化」を口実にした「排出権取引」も「新自由主義」によって新たに創出された市場である。巨額のマネーが動き、その一部は学会やマスコミにも流れているので、今では根拠が定かではない「CO2犯人説」を誰も批判できなくなっている。

「CO2犯人説」は、原発再稼働や新増設の口実にも使えるので、自由主義主義者たちにとっては真に重宝な学説なのだ。「脱炭素」「持続可能な社会」は誰にも批判できない錦の御旗となり、強欲グローバリストたちが全世界で進めているSDGsの根拠となっている。

この傾向は年々加速度を増し、最近では「持続可能な社会」のためには何をしても許される「脱炭素ファシズム」の様相を呈しており、その行き着く先が「グレートリセット」。世界の強欲新自由主義者たちの総本山「WEF世界経済フォーラム(ダボス会議)」が言い出したもので、地球温暖化を作り出している世界人口の大幅削減、家畜を減らす代わりに昆虫食推進などを提唱している。

日本における「新自由主義」は「レーガノミクス」を日本に移植した中曽根政権から始まっているが、歴代自民党政権による「新自由主義政策」には濃淡があり、特に強力に推進したのが中曽根、小泉、安部の「売国政治家トリオ」。

1980年代後半のバブル時代までは日本経済が絶好調で上り調子だったため、「新自由主義政策」の弊害はあまり目立たなかった。しかし、「バブル崩壊」以後は、日本経済の衰退と凋落に伴ってその害悪が急速に露わになって来る。

「レーガノミクス」や英国の「サッチャリズム」がもたらした弊害から学び、いち早くむき出しの「強欲新自由主義」から転換した一部のEU諸国とは逆に、自民党とそのスポンサーである財界は「バブル崩壊」後も「新自由主義政策」を強力に推し進めて、日本を「先進国」における「強欲新自由主義」の実験場にしてしまった。

日本が北欧の「福祉型社会資本主義」やドイツのような「社会的市場経済」に転換できなかったのは歴代自民党政権が無能だったせいもあるが、仮に転換しようとしても宗主国である米国が絶対に許さないという「対米従属国家」としての日本の特殊事情も関係している。

そもそも日本の経済産業構造を戦後も長く続き、高度成長をもたらした「戦時経済体制」(「1940年体制」)から、全く経済成長しない「日本型新自由主義経済体制」に変えたのは、米国だからだ。

米国にとっての日本はATMか金の卵を産み続ける鶏であり、米国債の世界一の大量爆買い、米国市場へのドル建て投資(本来であれば日本国内に投資されたはずの資本)、米国製型落ち兵器の言い値爆買い、義務でも何でもない米軍への巨額の思いやり予算などの形で日本の膨大な富が毎年、米国に流出し続けている。

特に2022年2月時点で1兆3063億ドルにまで膨れ上がった米国債は、「売りたい衝動に駆られたことがある。」とジョーク交じりに発言しただけで時の総理の首が飛ぶので、実質的には永久に換金できない空手形。

一応、多少の利子配当リターンはあるものの、米国債を買う形で米国に移転した日本の巨額の富に引き合うものでは全くない。二度と戻って来ないのだから、実質的に返済の必要のない「供与」と同じものである。

それでも政府自民党や官僚がもう少し有能かつ良心的で「新自由主義」が国民にもたらす害悪に気付いていたのなら、全面転換できないまでも「面従腹背」を決め込み、「新自由主義政策」の実行を米国からねじ込まれない程度に緩和したり、サボタージュしたりは出来たはずだ。

しかし、「バブル崩壊」後の30年間を見ても政府自民党や官僚がそのような態度を取った形跡はほとんどない。

逆に中曽根康弘は電電公社、国鉄、専売公社、日本航空などの基幹公共事業体を強引に民営化、小泉純一郎は「郵政民営化」(郵貯や簡易保険積立金の米国への移転が狙い)を柱にした「聖域なき構造改革」(官から民へ)をぶち上げて所謂「郵政選挙」に勝利、「小泉改革」を実行に移した。

安倍晋三は大規模な「規制緩和」やTPP、日米FTAなどの売国協定締結、使い物にならないポンコツ金融政策に過ぎない「アベノミクス」(官製相場による実体のない株価つり上げ政策と円安誘導)、などによってむき出しの「売国新自由主義」を強引に押し進め、米国に尻尾を振り続けた。

同時に安倍晋三が「日本会議」(中核は「成長の家」原理主義者)、「神道政治連盟」(神社本庁)、「世界平和統一家庭連合」(旧「統一教会」)その他の極右カルト宗教団体をバックに「美しい日本を取り戻す」などと大見得を切って「教育基本法」や指導要領、教科書を改悪。戦前回帰型の「新保守主義」を広めた罪も非常に重い。

また、第1次安部政権で掲げた「戦後レジームからの脱却」とは、「日本国憲法からの脱却」を指す。「平和主義」「国民主権」「基本的人権」を憎悪し、憲法を「改正」して日本を「外地で米国と共に戦争が出来る国」にすると同時に、「緊急事態条項」導入などで憲法を「政府を縛る鎖」から「国民を縛る鎖」に変えようとした事も重大。

「鯛は頭から腐る」の例え通り、安部が振りまいた「強欲新自由主義」の毒素は全身に回り、現在も継続している「2012年体制」によって日本を腐敗した「三流後進国」にまで落ちぶれさせてしまった。

「対米従属国家日本」については、こちらに詳しく書いている。

「バブル崩壊」以来、延々と今日まで続く「失われた30年」によって日本における「新自由主義」の失敗は誰の目にも明らかだが (ただし、1%の支配階層にとっては大成!) 、本稿では、その実験の結果、日本がどのような社会に作り変えられてしまったのか具体的に見て行く事にする。

※米国からの要求や日本における「新自由主義」の司令塔「経団連」による自民党への「提言」(指示)は、次の二つの記事を参照願いたい。

日本における「強欲新自由主義」政策とそれがもたらした社会的害悪

※〇は「新自由主義政策」の具体目標 網掛け部分はその結果

〇政府の介入を最大限排除した市場原理主義による弱肉強食、優勝劣敗の競争社会の実現。 そのためには自由放任の「小さな政府」が望ましい。

社会的格差は優勝劣敗による市場での競争の結果であり、当事者の自己責任として正当化される→国民の貧困化・生活苦による自殺者や生活保護の増加。

自己責任論が最も重視されるので、一に自助で二が共助、三、四がなくて五に公助→この自己責任論はコロナ禍の自公政権の下で遺憾なく発揮され続けている。

PCR検査を絶対に増やさないので感染者数統計が崩壊し蔓延実体不明。  なかなかPCR検査を受けられず、代わりに利権がらみで精度が低い抗原検査を押し付ける)。

大規模隔離施設を作らず、感染爆発で多くの感染者を自宅放置死させる。

東京五輪最優先でコロナ蔓延を矮小化、新型コロナの感染拡大中に東京五輪を強行して感染爆発を引き起こす。

「GO TO」など経済最優先、ザル状態の水際検疫、米軍基地から感染が広がっても「日米地位協定」の「見直しは考えない」。

全国民への給付は1度きり、持続化給付金支給事業や新型コロナ関係IT事業、「アホノマスク」等を民間縁故企業に丸投げして中抜きさせる、コロナ隠しの「マスク外せ大キャンペーン」 など

緊縮・均衡財政による小さな政府➡社会保障や福祉に頼らず自己責任で。 不況下でもPB黒字化(財政健全化)目標を堅持し、政府の財政支出を極力絞って不況を招く。➡内需減少政策

財界や政府与党周辺の縁故企業には潤沢に税金を回すが、一般国民の困窮に対しては冷たい対応しかしない。5回に及んだ「緊急事態宣言」でも全国民に給付金を支給したのは最初の1回だけ。➡内需減少政策

バブル崩壊後、政府・日銀は、緊縮財政政策よる内需の減少、意図的に円の供給量を絞って流動性を低下させ「信用創造」の収縮を引き起こすというデフレ政策を長期間継続。この間、民主党政権下の一時期を除き日本経済は順調に衰退し続けた。➡内需減少政策

自助最優先の新自由主義国家日本は世界一の災害大国なのにで、今でも戦前と変わらない避難所での雑魚寝が当たり前という被災者救援超後進国。

先進国イタリアが実施している被災後48時間以内にシャワー付きトイレ、キッチンカー、空調付きテント+ベッド、衣類や日用品等のセットを届ける「大規模地域分散備蓄体制(TKB48)」のような当たり前の被災者救援制度は絶対に作らない。

驚いたことに岸田総理は能登地震発災後、「保険に入らないのが悪い」という意味の言葉を口にした。これは、言い換えればしっかりした被災者救援システムを作ると災害保険や地震保険の加入者が減り、大口政治献金元である保険会社の収益が落ちる方を心配しているという事。

政府の災害対応ぶりは、日本政府が米国と大企業財界のために仕事をする政府であり、国民のための政府でないことを如実に表している。加えて、被災者救援のための大規模政府予算支出は国民の関心が高く中抜きがやりにくいので旨味がないという計算も働いているはず。

〇大企業や大資本家の利潤の最大化のためには手段を選ばず、何をしてもよいと考える。だから、彼らは政府による「規制」を忌み嫌う。      大幅な規制緩和によって企業が好き勝手に自由に活動できるのがネオリベにとっての理想社会。市民の権利の保護や公共の福祉などより資本の自由な活動を優位に置く。

安倍総理は2012年の施政方針演説で、「日本を世界で一番企業が活躍しやすい国にする」と述べたが、これは「自分の内閣で日本の新自由主義化を完成させる」との宣言だった。

資本の利潤の最大化が最優先で公共の福祉などは無視➡乱開発によって環境破壊を引き起しても問題だとは考えない➡アマゾン開発が有名だが、熱海の「伊豆山土石流災害」も同じ構造。  

神宮外苑再開発計画や➡五輪スポーツ施設建て替えを口実に、それとは関係のない神宮外苑の樹齢100年をこえる立派な樹木1000本以上を伐採。その跡地にオフィスビルや商業施設が入る複合ビルを建設する。
日比谷公園再開発計画も全く同じ。                 
公園や公民館・児童館などの公共施設を潰し、その跡地にマンションや商業施設を建てる計画も各地で進んでいる。

労働者派遣法を「改正」して、人材派遣を全面解禁。その結果、非正規雇用の割合は約4割に達し、低賃金による貧困化と雇用の不安定化が進んだ➡内需減少政策

解雇規制緩和による雇用の流動化と終身雇用制の廃止。→非正規雇用の拡大➡内需減少政策

「高プロ」制度を導入。「労働時間の規制緩和」により自殺者が出る程の長期間労働が可能になり、滅私奉公的なサービス残業やブラック企業などが横行。

政府自民党は、五輪・万博などのメガイベント、各種政府発注事業などに多重下請けによる「税金中抜きシステム」を構築。
                                  政府・特権支配層が五輪・万博などをやりたがるのは、「祝祭資本主義」によって国民が浮かれている間にせっせと中抜きに励み、大儲けできるから。   「外国の人が見に来る世界的大イベント」を名目にすれば国民も舞い上がって歓び大目に見てくれるので、税金を湯水のように流し込むことが出来、まさに「濡れ手で粟」状態。

「祝祭資本主義」は、「ショック・ドクトリン(惨事便乗資本主義)」とは、逆の手法の国民収奪政策。中抜きされた税金は自民党周辺の縁故企業の懐に入って消えてしまうので、日本の経済成長には全く役立たない。国民の税金の「半合法的横領」と言うべきもの。

2016年に電力事業を全面自由化→現在の電力不足は行き過ぎた規制緩和政策の失敗が原因

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〇あらゆる国営企業・公共部門の聖域なき民営化            

従来は市場原理になじまないとされてきた公的業務、公教育、福祉・職安業務、治安維持、上下水道などの分野まで民営化して自由主義市場経済へ組み込む。ゆくゆくは米国のように地方自治体、警察、刑務所、軍隊などの民営化も視野に入れている。

電電公社、日本専売公社、国鉄、日本航空、日本郵政公社、道路公団などを民営化。

2021年「改正水道法」が成立し、地方自治体における上下水道民営化が可能になった。宮城県と浜松市が先陣を切り、コンセッション方式による民営化を推進。宮城県の業務委託策先は、フランスに本社を置く多国籍環境企業ヴェオリア。フランス、米国、ドイツなど水道民営化先進国ではその失敗が明らかになり、再公営化の動きが加速している。

※国鉄、日本郵政公社の解体民営化の失敗は既に結論が出ている。JRの再統合と公営化、日本郵政グループの再公営化は必要不可欠

人材派遣会社による労働者の賃金の「合法的ピンハネ」や内需減退政策         
公務員を特権階級だとして攻撃。正規職員数や給料を減らし、「パソナ」などの非正規派遣職員に置き換える。➡内需減少政策 

東京では「新銀行東京」(別名「石原銀行」)、大阪では、市営地下鉄や市バスを民営化。                                 

従来、警察の仕事だった駐車違反摘発を民営化

〇格差社会の固定化と更なる推進→国民の貧困化

労働者の賃金を抑制・削減して、内部留保と株主配当、経営者報酬を大幅増額や➡内需減少政策

貧富の格差の拡大→大企業は484兆円以上の内部留保をため込み、安部・菅政権の10年間で上位40位までの大富豪の資産は6兆円から24兆円に激増。 超富裕層は、国民の貧困化を横目で見ながら我が世の春を謳歌している。や内需減少政策

1%の超富裕層は投資した巨大資本が放っておいても自己増殖するのでますます肥え太り、残りの99%は汗水たらして稼ぎ出した剰余価値を資本家に搾取された上に多額の税金や負担金を政府に吸い取られて益々窮乏化。2022年の国民負担率は50%を超えている。➡内需減少政策

政府自民党は、国民から搾り取った巨額の税金を各種補助金、政府諮問会議、中抜きなど様々な仕組みを駆使して資本家に回している。➡内需減少政策

貧困化による既婚率の低下と出生数の減少や人口減少➡日本国の消滅               
外国人技能実習生制度の導入➡奴隷同然の待遇のため、行方不明者続出  外国人労働者の導入は、賃下げ圧力になる。➡内需減少政策

貧富の差による社会階層の固定化やイデオロギーによる社会的連帯の分断及び対立の激化。貧困や孤立化に起因する「ローンウルフ型犯罪」の増加。

国民の不満の高まりによる社会の荒廃やテロなどの犯罪増加に対しては、メディアによる洗脳、デモの規制や弾圧、市民に対する監視強化で対処➡監視カメラや顔認証システム、位置情報、決済システム、ネット記事やSNSの監視、マイナンバーカードにあらゆる個人情報を紐付けて管理する。➡中国のようなプライバシーのない監視社会化の実現を図る。

〇大企業や富裕層の大幅減税による再分配政策の否定              

極端な貧富の差を放置して再分配を否定。具体的には、法人減税や直間比率の見直し=直接税の割合を減らして、消費税などの間接税を増やす(目標は直間比率5比対5)

消費税を増税して、代わりに法人税や富裕層の所得税を大幅減税

政府は「消費税は、社会保障のための安定的な財源」と嘘を広め、不況と物価高で国民が苦しんでいても絶対に消費税を減税しない。しかし、社会保障に使われたのは消費税のごく一部で、大部分は法人減税と高額所得者の所得減税による減収分の穴埋め、大企業への輸出戻し税などに使われて来た。

つまり消費税は、回りまわって最終的には大企業や超富裕層の懐に入ってしまうという仕組み。(「政府は平気で嘘をつく」の典型的事例)➡内需減少政策  

消費増税によって国民の可処分所得が低下し、消費が減少→国民の購買力低下に伴い企業の新規設備投資も減退→内要が冷え込み、物が売れなくなる→景気刺激のために日銀が民間銀行にいくら円を供給しても「実需」が無いので貸し出しが出来ず、日銀当座預金に積み上がるだけ(プタ積み)。➡消費増税は最も強力な内需減少政策
                                  その上、PBを重視する政府が公共投資などの政府支出を増やそうとしないので、いつまで経ってもデフレスパイラルから抜け出せないと言う悪循環。 「アベノミクス」による円安政策➡輸入品価格の高騰➡賃金が全く上がらない環境下での物価高(スタグフレーション) ➡円安による日本全体の貧困化➡三流衰退後進国への転落。➡内需減少政策「失われた30年」から「失われた40年」へ                           

国税・地方税、年金・健康・介護保険料など「国民負担率」の際限のない上昇。2021年度の国民負担率48%➡内需減少政策 

賃金の低下、リストラ、非正規雇用化などにより中産階級の解体と没落が進行し、結果的に社会が不安定化する。

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「経済成長率ワーストランキング」                  戦争や内戦を経験していない国でこれほど長期間経済長率が低い国は、日本以外にはない。

〇非営利部門である社会保障や福祉の削減と切り捨て

社会保障関係費の自然増を毎年2000臆円抑制

平成16年の年金制度「改正」で導入した「マクロスライド方式」による年金一律カット➡内需減少政策 

国民健康保険料の大幅値上げと本人窓口負担割合の引き上げ(国保後期高齢者は2倍増)、介護保険利用料2倍増などによって「国民健康保険」や「介護保険」を利用しにくくする。➡内需減少政策
公的保険を形骸化して、民間保険へと誘導➡郵便局による「アフラック」など米国系民間保険の推奨と販売↞米国の要求   

財務省は、国による「高額医療費負担制度」を「無駄」として廃止を提唱。  

75歳未満の自営業者や無職の人が加入する国民健康保険で、1カ月当たり80万円を超える高額な医療費が発生した場合に超過部分の一部を国が負担する制度について「廃止に向けた道筋を工程化すべきだ」と提言した。

これは、社会保障費の削減と健康福祉部門の市場経済への組み込みを狙った新自由主義政策である「国民健康保険の形骸化→米国などの民間健康保険への誘導」という流れの一環。

生活保護費の引き下げ、一部の不正受給を口実にした生活保護受給者バッシングと窓口での申請抑制政策→基本的人権(生存権)の侵害 ➡内需減少政策    

子ども手当や高校教育無償化を必要ないと攻撃して、所得による支給制限を導入させる。➡内需減少政策 

〇労働者の権利を主張する闘う労働組合やストライキの敵視          

事実上財界の労対部門である闘わない御用組合「連合」幹部を優遇して労働運動を分断➡「連合」自体がストライキを抑圧する事で組合の団体交渉力が低下し、賃上げが進まない➡内需減少政策   

【企業による不当働行為】
組合結成に対する妨害、所属組合員への差別やパワハラ、昇格・昇給させない、左遷するなどの不利益処分。闘わない第二組合を作って優遇し、第一組合の分断・分裂を計って弱体化させる。

ストライキは「社会の敵」とする社会風潮を広め、労働者の権利を行使しにくくする。「団結権」「団体交渉権」「ストライキ権」の労働三権は、憲法28条で認められた労働者の権利。

〇「新保守主義思想」による保守的道徳観の復活強化          

明治以降、政府によって人為的に作られた「伝統的」家族観(「家父長制家族制度」)を重んじ、夫婦別姓やLGBTQの権利を認めず、学校での「性教育」を激しく攻撃。                               
環境権や平和的生存権、思想・信条の自由など基本的人権の敵視。

「強欲新自由主義」の本質を糊塗し美化するのが、イデオロギー面で「新自由主義」を補完する「新保守主義思想」。

明治時代に作られ、敗戦まで続いた「伝統的価値観」や軍隊的規律と上位下達、上の者には従順に従う権威主義教育などを現代に復活させようとするもの。「戦前、全国民が暗唱した『教育勅語』にもよい面があり、現代の道徳教育の教材に使うべき」との主張もそのひとつ。

2006年、第一次安倍政権は「教育の憲法」である教育基本法を戦後初めて「改正」。教育基本法は、国が教育の責任を負うこと、権力が教育を歪めてはならない事などを掲げ、教育に対する国家の責務を規定するものだった。                                

しかし、安倍政権は教育の責任は国民・家庭にあるとし、国による国民への直接的な責任を放棄。また、道徳教育の強化によって日本の「伝統」や愛国心を育むことを教育の目標とし、それまでなかった家庭での教育に関する条項を新設。「教育基本法」を戦前回帰の方向に捻じ曲げてしまった。

「こども家庭庁」の新設                       当初は「こども庁」だったものに「家庭」をねじ込んだのは自民党右翼教育族で、バックにいるのは「統一教会」や「親学」を学校や家庭に広めているカルト教育団体「親学推進協会」などの民間右翼団体。

「親学推進協会」理事長の高橋史朗は、「日本会議」の幹部。「親学」副会長、PHP研究所主査、「新しい教科書を作る会」元副会長などの肩書を持つ極右活動家。安倍晋三のブレーンでもある。

「親学」は戦前の天皇制を支えた「家父長制家族制度」をベースにしており、教育の第一義的責任は公教育よりも「家庭」、特に母親にあるとする教育理論。教育の責任を母親に押し付け、子どもの人権を認めない「新保守主義思想」そのもの。

「こども家庭庁」は「親学」がベースとなった「家庭教育支援法案」法制化とセットになっており、「改正教育基本法」の具体化。
                                 「親学」は名称がよく似ている「親業」と混同されやすいが、両者は全く別物。「親業」(P.E.T)は米国のトマス・ゴードン博士が開発した子どもの主体性や考える力を育てる進歩的コミュニケーション理論。

今年相次いで出された二つの最高裁判決「夫婦別姓を認めないのは合憲」、高校女子生徒の茶髪に対する強制「黒染め校則は合憲」は、基本的人権や個人の自由を認めない権威主義的「新保守主義思想」に基づくもの。最高裁自らが明白な「人権侵害」を容認し、憲法の基本的人権を踏みにじる暴挙。        
この判例は最高裁が政府と一体化している事実を示すと共に日本に憲法が定着する事を恐れ、妨げているのは実は最高裁である事を物語っている。基本的人権が定着してしまうと、それが新自由主義政策の実行を阻む「国民を守る規制」の役割を果たすようになってしまうからだ。

政府が被告になる各種行政訴訟や労使対立による労働争議事件、思想・信条の自由に関わる訴訟などで最高裁が絶対に違憲判決を出さないのは、上記の理由と「権威主義国家日本」を守るため。

政府や権力をもつ者の横暴から弱者や被害者を救済しない最高裁は、「憲法の番人」ではなく、「政権の番犬」に成り下がっている。

最高裁の問題については、こちらを参照願いたい。

〇公教育や公務員の間に競争原理を導入し、採算性や効率性を競わせる  国立大学の独立行政法人化、公立学校の学区制廃止や広域化、公務員の人事評価方法の改定、など

国立大学の学校法人化の弊害→公的大学運営費を削られ大学間の競争を強いられた国立大学は民間資金導入に追われるようになった。すぐに成果の出る(カネになる)目先の研究にばかり力を入れ、時間のかかる研究や地道な基礎研究をなおざりにする風潮が蔓延。

そのために本来の使命である研究力や教育力が低下するという本末転倒。 学内でも文科省や企業から金を引っ張って来られる教授が幅を利かせ、「産官学共同」が最優先されるようになった。「大学自治」の形骸化が進み、「ポスドク問題」も一向に解決される兆しはない。 

「国立大学の学校法人化」の弊害や「ポスドク問題」は、こちらのドラマ評で取り上げている。

大阪が典型的だが、公教育に民間活力や企業精神、市場原理を導入するとして素人の民間人校長を登用して不祥事やトラブルが続出。また、学区制を廃止して入学生徒数や学力テストの成績で学校予算に差をつけ、生徒が集まらない学校は統廃合するなどの学校間競争によって大阪の教育が荒廃。   因みに2019年の「全国学力テスト都道府県別正答率ランキング」で大阪府は46位。                         

最近、大人気の「日本維新の会」の正体は自民党以上の極右「強欲新自由主義政党」。「維新」を支持する事は非常に危険で、「自分で自分の首を絞める」に等しい。

「維新」に関する最近の記事

〇「グローバル新自由主義」への門戸開放による売国

TPPへの加盟                            米国やEUなどとのFTA締結                                                                                バイエル(モンサント)、デュポンなど海外の巨大農業複合企業が、日本で種子ビジネスを展開できるようにする種苗法の「改正」         種子法の廃止                            残留農薬、食品添加物規制などの大幅緩和               遺伝子組み換え表示の廃止                      野放しのゲノム編集食品など、その他諸々

                                  以上、日本における「新自由主義政策」を総合的に概観して来たが、反反国民的政策のオンパレードであると同時に、しつこい位これでもかと「内需減少政策」ばかりやってきた事に改めて気づかされる。

米国のエージェントで日本における強欲新自由主義の司令塔竹中平蔵は、新自由主義者たちが散々に食い荒らしてボロボロになった日本を見て、さぞ満足している事だろう。

関連記事

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忌野清志郎「LOVE ME TENDER」(放射能はいらねぇ!)                        

エルビス・プレスリーの代表曲のブルース調アレンジによるカバー。   1988年発売予定のRCサクセション「COVERS」の収録曲だったが歌詞が反核・反原発だったため、アルバム発売予定の2年前にはチェルノブイリ原発事故が起きていたにもかかわらず、政府と電力会社に忖度した東芝はアルバム自体を発売中止にしてしまった。

アルバム「COVERS」の10年後、「君が代」をパンクロック風にアレンジした曲も発売中止になっている。

残念なことに忌野清志郎は、福島原発事故の前年に死去。清志郎がもし生きていたら、何と言っただろう。菅原文太、加藤剛、なかにし礼、大江健三郎、坂本龍一、みんなもっと長生きていてほしかった。

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