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島那三月
2018年9月9日 03:37
ある日、家具商人の店に初老の男が訪ねてきた。 男は、以前から気になっていた玩具をようやく手に取った子供みたいな目で、店内を眺めていた。特に椅子に注目していた。店内に他に客はいなかった。 随分と熱心に眺めていたため、商人はその男に「どんなものをお探しですか」と声をかけた。すると男は、「時の流れを忘れられるくらい、心安らぐ椅子を探している」 と答えた。 商人は少し戸惑ってしまったが、できる
2018年9月4日 00:41
近所の公園のベンチで昼下がりを過ごすのが、いつしかわたしの日課になっていた。何をするでもなく、ただぼんやりと、雲の流れとか、ボール遊びをする子供たちとか、ジョギングをする高齢の夫婦とか、池の鴨が獲物をついばむ姿なんかを眺めている。決まっていつも、池に沿った遊歩道に等間隔で並ぶベンチの一つに座る。眺めが特別いいとかそういうわけではなくて、大した理由はない。あえて理由をつけるなら、等間隔に配置された