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私にとっての坂本龍一さんの音楽

2023年3月28日、音楽家 坂本龍一さんが亡くなったと、訃報を聞いた。

彼に、彼の音楽に、感謝を込めながら、彼の音楽への思いや記憶、そして今改めて聴いて生まれた思いと重ねながら、文章を綴る。
彼の音楽は、「記憶」として残るのではなく、今まさに生きている我々の「心」と対話し、我々の心のなかで思いという花を咲かせ続けると思う。

「Merry Christmas Mr. Lawrence / Ryuichi Sakamoto」は、どうしてこんなに切なさと、何とも言えない無念さや悲しみと、それらが複雑に絡み合った何とも言えない感情と、それを聴くいのちの儚さと、がありながらも、それらを優しく包み込む優しさがあって、そして、そのすべてが等しく美しいのかと。
訃報を聞いて、「Merry Christmas Mr. Lawrence / Ryuichi Sakamoto」を聴いたら、涙が止まらなかった。
今まで、いい音楽をありがとう。そして、これからもあなたの音楽は私の中で生き続けます。

「Aqua / Ryuichi Sakamoto」もまた美しい曲で、今は亡き、白文鳥の「ぴー」が好きだった曲であった。
「Aqua / Ryuichi Sakamoto」は、音楽そのものが自然のようで、この曲を聴いていると、無意識のうちに情景ともいえぬ情景が心のなかに浮かんできて、音楽の世界の方に気持ちよく溶けて行ってしまう、そんな大好きな曲である。

「Aqua / Ryuichi Sakamoto」は、懐かしいような感情と、身に迫る切なさを感じる曲で、過去の古い時間を、還らぬ時間の中を彷徨うような感覚になる。そして、この曲もこの音楽の世界に、音の流れに、時間の流れに、身を委ねて聴き入る時間は幸福である。

「honj / Ryuichi Sakamoto」、「ff / Ryuichi Sakamoto」、《IS YOUR TIME》は、アルバムの「async」のなかの楽曲である。asyncは、asynchronization=非同期 の略で、同期的な音楽を聴きなれた私は、はじめて聴いた時は少し戸惑った。
しかしその後、ICC で開催していた《IS YOUR TIME》という空間インスタレーションで async を聴いて、空間性と非同期性が合わさると、音楽が生命をもったようにうねり、たわむれて、これは音であり、音楽であり、自然であり、世界そのものの表現であるように感じた。
坂本龍一さんの async の体験は、音楽の聴き方だけではなく、やがて、すべての音に対する聴き方・感じ方を新たなものに変えてくれた。
坂本龍一さんは、async を通して、「世界が音楽であること」を教えてくれた。

坂本龍一さんと、彼の音楽に、感謝を込めて。
天国で安らかにお眠り下さい。    2023年4月3日

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