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初めまして、ふうと申します。長い海外生活も26目を迎えました。3人の子育ても佳境にはい…

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初めまして、ふうと申します。長い海外生活も26目を迎えました。3人の子育ても佳境にはいり自分の思うことを書いてみたく始めました。言葉や文化の相違、でもどこにいても変わらないものもある。多方から広い視野で色々眺めていきたいと思います。

最近の記事

1998 ~ 2024     Afterword

#創作大賞2024 #恋愛小説部門 NOTE: POEM    Der, den ich liebe Hat mir gesagt Dass er mich braucht.   Darum Gebe ich auf mich acht Sehe auf meinen Weg und Fürchte von jedem Regentropfen Dass er mich erschlagen könnte.   BERTOLT BRECHT  * Original Th

    • 1998 ~ 2024        18

      #創作大賞2024 #恋愛小説部門 18 赤い鳥のカーディナルの伝説をここでは大体の人が知っている 彼らが庭を現れるのは亡くなってしまった大切な人が貴方に会いにきているというものだ。私はそれを信じている。 そしてそのことを内緒にしている。 私がその赤い鳥を眺めるたびに主人は私を愛おしく見る。   今まで起きたこと全ては、この人とのこの人生のためだったのかもしれない。

      • 1998 ~ 2024        17

        #創作大賞2024 #恋愛小説部門 17 額のしわが濃くなって、生え際の白髪はもう隠せなくなった。 メガネがないと不安になって、お気に入りの指輪が似合わなくなった両手は 朝晩酷くしびれるようになっている。 このノートの中にいる私たちは若くて幸せそうで、まだ何も知らないただの24歳の彼とたった26歳の私だった。 彼のために留学までしたこの言語で私は生活している。ノートの中の彼の繊細さが理解できる。 彼がどうしてこのようなノートを綴ったのかは勿論知らない。 ノートの間にあった便

        • 1998 ~ 2024        16

          #創作大賞2024 #恋愛小説部門 16 結婚してから26年になる。 3人の子供がいる。 子育てとは自分の芸術作品のようではないかと思う。大切に壊さないように丁寧に時間をかけて創り上げる。こんな風にしたいと思うように、こんな風に仕上げたいと思うように。悩んで手を止めて、時間を置いて眺めなおして、また制作に戻る。間違った色を付けたら塗り直しもする。周りの意見に耳を傾けて、時間を惜しまず費やして、決して諦めずに続ける。気がつけば美しい芸術が目の前に広がる。美しくなった自分の芸術

        1998 ~ 2024     Afterword

          1998 ~ 2024        15

          #創作大賞2024 #恋愛小説部門 15 私が日本を出る数日前に私達は買い物に出かけた。 もう既に必要な買い物は済ませていたので二人の時間を楽しむくらいのつもりでいた。 一緒に持っていけるものを買おうと言ってあちらこちらと見て回った。 小さくて負担にならないものと思いハンカチを見せるとあまり気に入らないような様子で続けて見て回っていた。私はそんな彼を見て涙が出るのをこらえたことを覚えている。こんな日はもう終わりだと思いながら彼に会えなくなることをしみじみと感じていた。デパー

          1998 ~ 2024        15

          1998 ~ 2024        14

          #創作大賞2024 #恋愛小説部門 14 私は彼が亡くなった一年後結婚した。 色々と思いを巡らせた人もいただろう。 あの悲しみを考えれば怖いものなど何もなく出来ない事など何もないと思った。幸せでなくてもいい、静かに生きていこうとした頃に主人に出逢った。 主人は普通で小さいことにも宝くじが当たったかのように感動する。 心がきれいで繊細で噓がなくて誰にでも平等に優しい。毎日が精一杯で限りなく前向きだ。そんな主人が眩しくてキラキラして見えた。違う世界に暮らしている人のように思

          1998 ~ 2024        14

          1998 ~ 2024        13

          #創作大賞2024 #恋愛小説部門 13 12月30日に彼は戻り翌日教会での葬式が行われた。 その後しばらく彼の母親の家で過ごすことになった。私達は彼の思い出話をしながらお互いを少しずつ知っていった。6か月の語学留学の後のなかなか厳しい英語のレッスンのようだった。優しく辛抱強く私の話に耳を傾けて3年間の彼の不在を声をあげて笑ったり遠くを見て想像したりしながら埋めていた。 でも彼の母親がする私の知らない昔の彼の話は私を孤独にするだけだった。彼といた時間が物凄く小さなものでしか

          1998 ~ 2024        13

          1998 ~ 2024        12

          #創作大賞2024 #恋愛小説部門 12 私は既に帰国していた。 インドネシアから4時間ほどのオーストラリアで12月23日の夜に彼と会うことになっていた。 6か月ぶりに戻った日本は師走の活気で街中は忙しい人々でいっぱいだった。街中の小さな声も自然に耳に入ることを感じながらイギリスでの6か月を思い出していた。有効期限切れの車の免許証の書き換え講習を受けて実家に戻るとドアの外からも電話の音が聞こえていた。祖母は忙しく流しで食器の片づけをしていた。蛇口からの水の音で電話の音が聞こ

          1998 ~ 2024        12

          1998 ~ 2024         11

          #創作大賞2024 #恋愛小説部門 11 そのペンダントをもらった日は終わりではなくて始まりだった。   全てが後悔の波となって何度も何度も私に向かってきては強くえぐるように後悔を復唱させた。それが過ぎると逝ってしまった彼に対して怒りのような気持が私自身を納得させるようになり責任転嫁のような罪悪感に終わる。そして憐みのような物凄い悲しみが襲い掛かって我に返る。起こってしまったことは変えられないし元に戻ることはないという当たり前なことに気づく。誰かに罵声を浴びさせられるように

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          1998 ~ 2024         10

          #創作大賞2024 #恋愛小説部門 10 階段下から聞こえる声は聞いたこともないような言葉のようだった。 どんな風に階段を降りて黒ずくめの自分を差し出せるのかと考えた。   教会の一番後ろのベンチで誰も知らない、本当に一人で真っ黒に包まれていた。見たことも会ったこともない人たちが長いスピーチをしていた。あれだけ勉強したはずなのに全然わからない、何を言っているのか何が言いたいのか。最後に言葉を交わしたのはこの人たちじゃなくて私なのに、この人たちはもう3年も会っていなかったのに

          1998 ~ 2024         10

          1998 ~ 2024         9

          #創作大賞2024 #恋愛小説部門 9 大学を卒業して大学院へ進むものも多少いて、ほとんどは仕事に就き自分で生活するようになる。それらではない選択をする事は少なくとも僕には大きな決意と勇気が必要だった。両親は離婚を機に難しくなった僕を過保護に眺めるようになっていたし責任や罪悪感のようなものを感じていたに違いない。物分かりがよく手際よく乗り越えているように見えた妹と比べて自分を情けないとも感じていたがどうしようもなく自分を自分で孤立させて行き場がなくなっていた。どんなに言い訳

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          #創作大賞 #恋愛小説部門 8 彼女が僕の彼女になる前、僕は週に2度彼女に会う機会を楽しみに残りの5日を過ごした。僕が外国人として彼女の国で生活しているのだから当然ながら彼女との生活は僕の毎日を大きく変えた。毎日の生活の中でお互いの言葉の習得に時間を費やすも、僕たちは普通に彼氏と彼女として時間を過ごし始めていた。僕は180センチほどの身長で母に似て肌が白く髪も金髪に近い。どこに行っても目立たないわけがない。 僕だけじゃなくて彼女も多くの視線を感じていたはずだ。その視線の良し

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          #創作大賞2024 #恋愛小説部門 7 同じ頃、彼女の家に入り込んだ男性が警察に捕まり彼女だけでなくあの付近の住民を安心させた。彼女はあの夜のことを一切話そうとはしなかったし、その必要もなかった。 僕が上司に彼女との交際を報告すると冷やかしのついでにあの夜の話を少し続けた。 その男性はあの付近で数人の女性を襲った犯罪歴があったようだ。すっかり暗くなった雨の夜彼女をつけて家に入り込んだらしい。暴力を振るわれたがたまたま帰宅した向かいの住人が叫び声を聞き不信に思い通報した結果性

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          #創作大賞2024 #恋愛小説部門 6 あの夜から1か月少し過ぎたころ彼女から連絡があり会う約束をした。 週に2度の個人指導を6週間ほど休んでいた為か電話での会話は少しぎこちなく僕を心配させた。 僕は小さな鉢植えのマリーゴールドを買って彼女に会いに行った。 彼女を久しぶりに見た時、半ズボンとただの白いTシャツとマリーゴールドでなく気取った服装に気取った花にすべきだったと遅い後悔をした。 後で彼女は僕にこのマリーゴールドがすごく嬉しかったと話していた。 あまりにも嬉しそうに話

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          #創作大賞2024 #恋愛小説部門 5 彼女は試験のための個人指導を希望していて僕は例の彼に推薦され 期限付きではあったけれど彼女の個人指導要員となった。 それは彼女の会社の一階部分にあるカフェですることになって2人きりには程遠いものでそれは長く続いた。試験とは彼女が手に入れたい仕事の為のものであってその熱意は僕も感じていた。なかなかそれ以上にならなかった事に戸惑いながらも、僕の気持ちを伝えることは間違っているようにも感じていた。それでも彼女の目標に向けてそれを続け、僕は思

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          1998 ~ 2024          4

          #創作大賞2024 #恋愛小説部門 4 1996年 僕は幼馴染に誘われてきた日本での毎日を謳歌しながらも 想像以上の試行錯誤な日々だった。全く違う生活への興奮と戸惑い、なくならない探求心で驚く速さで時間が過ぎていったものの本来のここに来た目的は何処にもないように思えた。 友人と来た初詣でこれまでとは違う1年を願い横に習い小銭を小さい木箱へ投げ入れ手を合わせた。日本へ来てからの数か月は不安で孤独でもありこの友人たちがいなければ到底我慢できなかった時間であっただろう。 両親を説

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