見出し画像

1998 ~ 2024         9

#創作大賞2024 #恋愛小説部門


大学を卒業して大学院へ進むものも多少いて、ほとんどは仕事に就き自分で生活するようになる。それらではない選択をする事は少なくとも僕には大きな決意と勇気が必要だった。両親は離婚を機に難しくなった僕を過保護に眺めるようになっていたし責任や罪悪感のようなものを感じていたに違いない。物分かりがよく手際よく乗り越えているように見えた妹と比べて自分を情けないとも感じていたがどうしようもなく自分を自分で孤立させて行き場がなくなっていた。どんなに言い訳を並べても僕はただ逃げたかっただけなのだと気付いていた。

僕は彼女に
長く日本に留どまるつもりがないことを伝えて、もし将来を考える恋愛関係を望んでいるなら他を探したほうがいいと話したことがある。
彼女はただ一言わかったと言った。
 
自分でもよくわかっていなかった。

彼女が年上で25歳を過ぎてると話せば、多くの男友達は
”気を付けるように” と忠告する。
日本にある女性の年齢と結婚の話だ。
彼女は自分の人生を生きていて、何も見えてもいなかったのは僕のほうだった。
自分自身の不安に彼女を巻き込んだだけの、思い付きのような言葉で彼女をひどく気づつけたはずなのに彼女は何も変わらずに僕といた。


僕たちは2年ほど一緒に過ごしたあと
彼女はイギリスへ、そして僕は本当の放浪の旅をする為に南アジアへきた。
6か月間の予定だ。
別れもせずに何も約束をせずに日本を出た。

僕は彼女に言った事を彼女が日本を出る一日前の夜まで、彼女が僕の前で初めて泣くまで忘れていた。
僕はその夜、彼女が用意した食事を終える頃に普段と全く変わらない彼女の様子にイライラし始めた。彼女の出発が明日に迫ってセンチメンタルに気持はゆらゆらしていた。
”君は全く寂しそうに見えない” と言うと彼女は僕を強く見てから
”自分の言った事を都合よく変えないで欲しい” と言って顔を僕の胸に押しつけた。彼女は覚えていたのだ。時々距離を感じたり、その距離がいつまでたっても縮まらなかったのはこれが原因だったのかと思いどんよりとした曖昧な気持ちになった。行かないでとでも言って泣いてほしかったのか。一緒に行きたいと言ってほしかったのか。
彼女は約束を守って先のことは一切口にせず僕に何も求めなかった。
僕が変わっただけだ。
僕たちが一緒に過ごした2年間彼女は一度も泣いたことはなかった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?