1998 ~ 2024 17
#創作大賞2024 #恋愛小説部門
17
額のしわが濃くなって、生え際の白髪はもう隠せなくなった。
メガネがないと不安になって、お気に入りの指輪が似合わなくなった両手は
朝晩酷くしびれるようになっている。
このノートの中にいる私たちは若くて幸せそうで、まだ何も知らないただの24歳の彼とたった26歳の私だった。
彼のために留学までしたこの言語で私は生活している。ノートの中の彼の繊細さが理解できる。
彼がどうしてこのようなノートを綴ったのかは勿論知らない。
ノートの間にあった便せんは彼が亡くなるほんの少し前に書かれたものだろうと思う。
私はもう2冊ほど書いていたのではないかと思う。私たちにはもっと沢山の思い出があって喧嘩もしたし私はあんなにキレイではなかった。だから2冊、3冊目を読んでみたい気がする。彼が書いた他の思い出を読んでみたかった。忘れていた事を思い出して見たかった。
なぜこの1冊だけがあの小さいバックに入っていて、他は戻ってこなかったバックパックに入っていたのか。それとも他にはなかったのか。
誰も教えてはくれないだろう。
小包にはオパールの指輪が入っていた。
長い間誰かが使っていたようで金属の部分は傷だらけだが角度を変えるとキラキラ違う色に光る。
25年かけて私のところに辿り着いてくれたこの指輪と送ってくれた誰かの勇気に心から感謝したいと思う。
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