ラディカル・フィールドワーク②
現場を見た、聞いたという幻想
1. フィールドワークを書く時の不安
大学院入学時に、定性的方法論の講義を受けたときのことだった。確かその日のリーディングはシュッツ(1932)の『生活的世界の意味構成:理解社会学入門』であったと思う。日常世界を生きる人々の状況を、意味から読み解いていく現象学的社会学に衝撃を受けた。当時の私は、研究とは現象を観察して何らかの法則を発見していくものだ、と素朴に捉えていた。その後に先輩に進められてバーガー=ルックマン(1966)の『日常世界の構成:アイデンティティと社会の弁証法