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#コラム
推しの退団ー宝塚トップスターとの別れー
「椿さーーん!」
「いままでありがとうーーー」
キャーという悲鳴の向こうに、手を振りながら歩いてくる真っ白な人。
ファンクラブという鉄壁の人垣に守られながら、その人は最終地点まで向かっていく。
「椿さん!私たちはいつまでも忘れませんーーー!」
ファンクラブ幹部の号令とともに、朝から並んでいたファンクラブ会員がいっせいに叫ぶ。
「いままでありがとうございました」
彼女はそう大きくない声を発しな
初めてのファンクラブ入会ー宝塚歌劇の情報源ー
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「あの真ん中に立ってる人じゃない、
私が気になるのはあの左の人」
それがそのスターさんとの出会いだった。
母は舞台の真ん中の人に夢中だったけれど
眩しいほどのスポットライトが当たるその人より
不思議なことに、私にとっては薄暗い照明のなか一生懸命踊るその人に目が行く。
「ああ、この人のこともっと知りたい」
それが宝塚スターを好きになる
ということに随分たったあと気づく
宝塚スターを応援する、ということ
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「宝塚のスターを応援する」
これはとても熱い情熱と根気、時間と
あとなによりもお金がいる。
応援する相手によっては、
スターになるまでかなりの忍耐力も必要だし
本当に上に上がれるのか?と、ハラハラしたり
辞めてしまわないかという不安と葛藤したり
思いもよらない組替えで納得できない位置にならないよう祈ったり。
スターさんがしたっぱのときにはしたっぱの悩みがあって
スター
ディープな世界へようこそー宝塚ー
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今思えば20歳のころの私があのスターさんを応援していたとき、まだ本格的に深い世界までのめりこむことはなかった。
言ってみれば、ライトにちょっと毛が生えたくらいのファンだ。
ファンクラブには入ったけどお手紙は渡したことがない。
なぜなら彼女は番手が上がってからお手紙を直接受け取らなかったからだ。
ファンクラブに入った当初渡せた頃はあったけれども、当時の自分には勇気がなか
正統派男役と言われて
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「聖夜 椿」は正統派男役、と言われていた。
ノーブルな立ち姿やしぐさ、憂いを帯びるまなざしで圧倒的な人気らしい。
◆
「この人を知りたい」
そう思い手にした歌劇をしげしげ眺め、読みふける。
つい先日観劇してから、椿のことが気になって仕方がなかった。
あの作品はコメディーだった。
あの人はおもしろいタイプなのかな。
そう先入観をもった私にとって、椿が「正統派男役」
こうして宝塚沼にはまっていく
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全国ツアー 略して全ツ。
宝塚ファンの中ではこう呼ばれていた。
全国ツアーは年に数回、それぞれ組のもちまわりで行われている。
その年たまたま贔屓の組にあたれば、熱心なファンは全国どんなところでも参上する。
椿が所属する「虹組」はちょうどこれから全国ツアーに出るらしい。
そしてうれしいことに私の実家がある地域に行くそうだ。
これはちょっとした里帰りも兼ねて観劇にでもいっ
全国ツアーが始まるー地方公演の醍醐味と憂鬱ー
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公演会場に到着し席に着くと、意外と狭いことに気づく。
全国ツアーで使用される会場は、地方によってかなりの差がある。
私の実家がある地方の会場は、それは大変古い建物だ。
もちろん座席もかなりの年季を感じる。
そしてこの座席の致命的なところが前が見にくいことである。
宝塚の劇場は座席の配置に工夫がされていて、よっぽど前のめりの人でもいないかぎり舞台を見渡すことができる。
ファンクラブに入る決意
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全国ツアーでの「虹組」の演目はこんなストーリーだ。
逆境の中意思を貫き通す心優しき青年が、最後は愛する人と結ばれ死んでいく。
まさに王道の宝塚ラブストーリーだ。
逆境というのがまたそそる。
そもそもネタバレでも見ない限り、開幕してもストーリーは明かされない。
大筋だけはわかっているけど、なんとなく雰囲気で演目は楽しむものだ。
だからこそ最後死んでしまうのは想定外だ
全国ツアーの入り待ち・出待ち
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運がよかった。
ファンクラブに入ろう、と決意した私にとってこの日は本当に運が良かった。
全国ツアーでファンクラブのテーブルを出していたスタッフは、西会のチームだったのだ。
西会は宝塚大劇場方面を仕切っている私設ファンクラブだ。
めったに行かない宝塚方面での入会申込書をもらうには今日がチャンス。
これで次の大劇場公演からファンクラブ活動に参加できる。
本当にラッキーだ