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設立20年クラスの高齢者施設の高齢化はガラパゴス化が進み、ゾンビのようにみえた話。

高齢者施設をゾンビ呼ばわりする、という非人道的な表現をタイトルにつけましたが、つり広告でもなんでもなくて、本当にそう思ったお話です。
もっと言うと、ここは「監獄か?」そう思った次第で、仕事が終わってもしばらく放心状態だったわけでありますが、気持ちが風化しないうちに、なんとか記事にしておこうと思います。

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フリーランス看護師として高齢者施設の単発バイトをスポット的に入れることがあります。
今回のゾンビ化した高齢者施設の実態については、ある高齢者施設で実際に働いてみた感じたことを、単にこの施設批判、このグループ会社の悪口で終わるのではなく、多かれ少なかれ、どの高齢化施設も潜在的に抱える問題である「高齢者施設の高齢化問題」として取り上げてみたいと思います。

設立20年クラスの施設は多かれ少なかれ「高齢者施設の高齢化問題」を抱えている

いわゆる老人ホームというところは、当たり前だけれどお年寄りにとって、「終の棲家」であり、死ぬまでそこに暮らすことを前提とした場所である以上、施設の築年数とともに入居者の年齢も同じだけ「年期」が入ってくる。
以前もこうした現状について記事にしました。

それゆえ、どの介護施設も潜在的にこの「高齢化問題」を抱えているわけですが、設立20年を迎える施設というのは、これが顕著になって表面化しているのです。
もちろんその間に亡くなっていく入居者もいるだろうけれど、寿命が伸び続けている現代社会では、そのまま生き続けている高齢者もいる。
入居当初は元気だったお年寄りも歩けなくなったり、認知症が進んだり。そもそも老人ホームというところは、在宅で生活できなくなった人、家族が介護できなくなった人が入るところなので、難易度の高い入居者がそもそも集まる場所。そこに加えて施設の老朽化が進んだところは、施設自体も古びているし、入居者の介護の難易度も高くなってくる。

働く側はどんどん新しい施設へ転職していく

設立20年クラスの介護施設、建物の老朽化、入居者の高齢化、介護度の上昇は進むが、スタッフは同じように高齢化するのか?
そうではない。
高齢者が増える一方の現代日本では、高齢化ビジネスは成長産業。
都会では次々と新しい施設、新しいサービス、新しい雇用形態の施設が誕生している。
働く側はそういったところへとどんどん転職していくので、老朽化した介護施設は常勤スタッフがほとんどいなくて、非常勤や派遣スタッフばかりの「ガラパゴス化」した場所となっている。

フリーランス看護師として、いくつもの施設を行き来するうちに、私もこのからくりに気づいた。

新しい施設で働き続ければ、難易度の低いお年寄りをずっと相手にできる

働く側は老朽化した施設と心中する必要はないのだから、いやになったらすぐに転職する。
その時に新設された施設を選べば、しばらくは入居者も少ないし、入ってくる入居者は比較的元気な人が多いので、介護負担は少ない。
単純に考えても、老朽化してすべてが古びている施設よりも、新設された施設の方が気分がいいし、スタッフ同士の人間関係もリセットできて、働きやすかったりする。
完全なる立ち上げ期からの入社だと、それはそれで別の大変さがあるかもしれないけれど、古い施設と新しい施設、どちらも給料は変わらないとしたら、働き側は新しい施設へ流れていくだろう。

限界地域と都会のような縮図

夏休みに熱海の限界地域の民宿に泊まったことがあった。ほとんど人が住んでおらず、環境はいいのだけれど、空き家ばかりで夜は外をあるくのがこわいくらいだった。
日中に歩いてみると、海沿いだったこともあり、お年寄りがポツンと家の庭先で海産物の日干しなどの作業をしている人が一人だけいたけれど、周囲を散歩しても若者の姿はまったくなかった。

島や地方の限界地域ではこのように、「限界地域」と呼ばれるところが点在している。

築年数の経った老人ホームは、同じように、古い建物とともにそこに住み続けるしかないお年寄りだけが残り、働き手は新しい施設(都会)に移動していく。

そのガラパゴス化した場所には、私が夏休みに家族で旅行したように、継続的にそこに住む人ではなく、旅行者としてならたまに来たいと思う人もいるだろう。

私が派遣スタッフとして、単発バイトで仕事をしたもの同じだ。
そこで毎日ずっとは働けないけれど、たまに、あるいは1回ぽっきりそこでバイトするだけならやってもいいかな?という人が訪れる。
でも、毎日そこに住み続けるのは不便。

老朽化した高齢者施設は非正規バイトで回すしかなくなる

今回働いた施設は、すでに介護の仕事の多くを単発バイトや派遣スタッフがやるようになっている。
それでも穴が開くことが多いとスタッフの人はもらしていた。
単発バイトのドタキャンが多く、入浴介助などに支障が出ることもあるという。
そうなると、スタッフ不足でその日の入浴はできず、お風呂に入れるのは週1回というようなことが常態化していると。
「入れなかった分は別の曜日に振りかえ、などということもしていなくて、だからずっと同じ服だったりするんですよね」
と語っていた。

この施設だけではない。
スタッフ不足で単発のバイトばかり、という介護施設の話はよく聞く。それでもまた運営できていればいい方で、人手不足に伴い、経営が回らなくなって、施設自体を閉めて、入居者は同系列の別の施設へ移動になった、と言う話を介護仲間に聞いたばかり。

「限界地域」である老朽化の進んだ施設は、「終の棲家」としてそこに住み続けられるかは、誰にもわからない。
それが、介護施設の現状であり、設備の老朽化と入居者の高齢化が進んでくれば、どの施設も抱えることになる、潜在的な問題である。

ゾンビ化、監獄と思った理由

話が長くなってしまい、冒頭で触れた、私がゾンビだの、監獄だのと言った理由をあまりはっきり書いていなかったことに気づいた。
これ以上書くと話が長くなってしまうので、また別の機会に詳しく書こうと思うけれど、入居者の置かれた状態が、私にはそう思わせた。

仕方がないけれど、スタッフは日々「やらなければならない」仕事に追われているので、自分で動けない入居者は寝かせっぱなし、入居者の部屋も汚い、ナースステーションもゴミ(のようなもの)の山。
個人的、個別性のある会話はまったくなく、「スタッフの仕事」に必要な声掛けしかされていない。
入居者の特徴を知れるような会話はいっさい聞かれなく、話をしている人もみかけなかったので、まるでゾンビみたいだなと思ったし、余計な私語はできない、自由な行動はできない監獄みたいだな、と感じました。


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