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『invert [インヴァート] 城塚翡翠倒叙集』 相沢沙呼

相沢さんも私が好きな作家さんの1人だ。『小説の神様』は橋本環奈さんらで映画化されたことで有名になったが、"有名になる前から好きだった"とほざいてしまえるくらい結構前から好きだった。


あらすじ(上記講談社サイトより)

あなたは探偵の推理を推理することができますか?
綿密な犯罪計画により実行された殺人事件。アリバイは鉄壁、計画は完璧、事件は事故として処理される……はずだった。
だが、犯人たちのもとに、死者の声を聴く美女、城塚翡翠が現れる。大丈夫。霊能力なんかで自分が捕まるはずなんてない。ところが……。
ITエンジニア、小学校教師、そして人を殺すことを厭わない犯罪界のナポレオン。すべてを見通す翡翠の目から、彼らは逃れることができるのか?
ミステリランキング五冠を獲得した『medium 霊媒探偵城塚翡翠』、待望の続編は犯人たちの視点で描かれる、傑作倒叙ミステリ中編集!
invert
in・vert
【他】…を逆さにする,ひっくり返す,…を裏返しにする;
〈位置・順序・関係を〉反対にする;〈性質・効果などを〉逆転させる;

主人公は霊媒師?探偵?.....警察と密接な関わりを持つ、1人の女性"城塚翡翠"だ。この本は前作である『medium 霊媒探偵城塚翡翠』の結末を知ってからでないと楽しめないため、「究極のどんでん返し』が起こるこの前作を手に取ってみることをぜひおすすめしたい。

元々ミステリーとかサスペンスとかそういうのは好きだけれど、城塚翡翠の謎の解き明かし方は見ていて飽きない。今作では最初から犯人が明らかになっているからこそ、「探偵の推理を推理」しながら楽しめるのだ。

とはいえ城塚翡翠はあざとい。天然でよく転ぶ....なんていう犯人が少し油断してしまいそうな"男の人に気に入られやすい女性"を装うのだ。多分クラスにいたら嫌われているタイプ、、、といえば伝わるだろうか。

もちろん城塚翡翠自身がモテたいわけでもなく、犯人に心から好かれたいわけでは当然ない。だからこそ彼女の化けの皮が剥がれ、騙されていたと知った時の犯人の顔がより滑稽になるのだ。


今回は中編集ということでどの話も先に犯人が分かっていて、翡翠が徐々にその事件を推理していく.....という流れなのだが、225ページに翡翠のこんなセリフがある。

「(略)わたしはひとりよがりの殺人を赦しません!人を殺してはいけないという社会を守り続けることでしか、人の命を奪う暴力を除外する術はないのです!大切な誰かを護るためには、人を殺したら必ず報いを受けるのだと!罪を償うべきなのだと!そのルールを徹底して知らしめることでしか、わたしたちは殺人という暴力から命を護れないのです!」


涙を浮かべながら こうも感情をあらわにする翡翠は珍しい。だからこそ、この城塚翡翠シリーズにはまだ続編があると信じたい。翡翠が霊媒師とまではいえなくとも"何らかの他人のオーラを見ることができる"というのは事実であり、その力を時には使って わざわざ警察の捜査に協力している理由が彼女にはあるはずである。

前作は衝撃のラストであり、講談社さんのサイトにも

あまりの衝撃的結末に続編執筆不可能と言われた、5冠獲得ミステリ『medium 霊媒探偵城塚翡翠』待望の続編!

なんていうふうに書かれているにも関わらず続編(今作)が出たのだから、ぜひ次も期待したい。何かにがんじがらめになりながらも決して諦めずに殺人犯の罪を解き明かしていく彼女。
翡翠に寄り添い過去を明らかにすることで 彼女を 彼女が生きている世界から解放してほしい、そんなふうに思ってしまった。


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