3つの詐欺の物語.
辻村さんの小説の素敵なところはどんなに暗い話でも後味が決して悪くないところだなぁ,と思う.騙された側が絶望していく話でも騙した側が良い思いをする話でもなくて,騙された側に希望が残る話である.
ジェンガは1つずつブロックを抜いて,上に置いて,崩れないようにまた積み上げていくというゲームであるが,このタイトルはどのようなことを案じているのか.
何気ない隙間に魔の手が入ってきて,騙されるということか.
ちょっとした気の緩みで,頭のどこかでダメだと分かっている詐欺に加担してしまうことか.
1度何かが欠けてしまっても,頑張ればもう1度やり直せる(また積み上げることができる)ということか.
どれでも良いけれど,一気に読んでしまえる話でおもしろかった.
ちなみに1番不気味なのは最初の「ロマンス詐欺」の話である.
Facebookで見知らぬ相手とやりとりをしてお金を取る.コロナ禍での大学生の孤独感が溢れ出るような話であり,実際自分の周りにも詐欺の片棒を担いでしまった人がいたんじゃないだろうか?と急に恐ろしくなってしまった.
都合よくポンポン金がもらえる話などこの世には絶対ない,と私は思っているけれど,金をもらうための"何気ない会話のやり取り"の中で救われる若者が,この世に本当にいるのだろうか?お金があるという満たされ方よりも,自分は1人ではないという満たされ方の方が幸せ,っていう人は意外とたくさんいるか.
本の感想シリーズは明日で最後の予定です.