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『闇祓』 辻村深月 作 #読書 #感想

パワハラ、セクハラ、、、世の中には色々な「ハラスメント」がある。
この本に描かれているのは、「ヤミハラ」である。現実にも確かに存在していそうではある(本の中の世界ほどではないが)、というか存在しているけれど 言葉として表面化されていないだけかもしれない。

ちなみに病みハラとは全く違った意味である。
あらすじはこんな感じだ。(Amazonより)

あいつらが来ると、人が死ぬ。 辻村深月、初の本格ホラーミステリ長編!
「うちのクラスの転校生は何かがおかしい――」
クラスになじめない転校生・要に、親切に接する委員長・澪。
しかし、そんな彼女に要は不審な態度で迫る。
唐突に「今日、家に行っていい?」と尋ねたり、家の周りに出没したり……。
ヤバい行動を繰り返す要に恐怖を覚えた澪は憧れの先輩・神原に助けを求めるが――。
身近にある名前を持たない悪意が増殖し、迫ってくる。一気読みエンタテインメント!


https://kadobun.jp/special/yami-hara/

上記の特設サイト(うまくリンクが貼れなかった)によると、闇ハラの定義はこうだ。

ヤミ-ハラ【闇ハラ】
ヤミ-ハラスメント【闇ハラスメント】精神・心が闇の状態にあることから生ずる、自分の事情や思いなどを一方的に相手に押しつけ、不快にさせる言動・行為。本人が意図する、しないにかかわらず、相手が不快に思い、自身の尊厳を傷つけられたり、脅威を感じた場合はこれにあたる。やみハラスメント。闇ハラ。ヤミハラ。

ぶっちゃけ闇ハラ、受けたことあるわ!って思った方、いらっしゃいますか?
私もぶっちゃけ思い浮かぶ某人物の顔があったので....笑。

自分の考えを押し付けるだけ押し付けてくる人。しかもそれがしつこい。会う度。相手はまるで悪意がなさそう。そういった経験はないだろうか。

この小説は4章+最終章で構成されており、最初の4章では別々の場所が舞台になる。
小学校や高校、ご近所、団地、そして職場.....。

不気味な、怖い、何かが差し迫ってくるような、目を背けたくなるような、人間関係が描かれている。コミュニティの中に確かに存在している「闇」が、強く浮かび上がってくるような感覚があった。


最終章の伏線回収が美しいホラー小説でもある。そしてファンタジー要素も組み込まれており、
闇祓=闇を祓う人 と、闇の根源になる人(=闇ハラをする人)が存在する。
闇ハラを直接される相手、間接的に流されてしまう相手など、登場人物が数多く登場する作品である。


前半でも少し触れたけれど、闇ハラってそれが浮き出ていないだけで心というかコミュニティには確かに存在するよね。それをコントロールできている人が多いから、表面に出てこないかもしれない。

相手に良かれと思って言ったこと・やったことが 実は相手に不快な思いをさせている。けれどそれに気づかない。だからこそ誰しもが加害者になり得る。そういう怖さがある。


何度も言ってるけど、「君のために」、「あなたのためを思って」....は怖いのだ。

気づかないうちに誰かの闇ハラにより、「よくよく考えてみれば間違っている、おかしい」....そんな考え方が人間関係の中に浸透していることがあるのかもしれない、、と考えると、それもまた怖い。



さて、闇ハラをしてくるような相手の考えに束縛されて、知らぬうちに心を蝕まれて....というのはもちろん怖いのだけれど、
それ以上に共依存が怖いように思ってしまった。
闇ハラをしてくる相手に頼られて、妙に褒められて、自己肯定感が高まって.....。そうすると自分もその相手に悩みを相談するようになったり、もっと認めてほしくて それを暗に乞うたりする。
だから恋愛と同じような不気味さを感じる小説でもあったかな。



この辺で。





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