みみずくの耳

たわいもない話を書きます。

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緑の君

人は入れない不思議の森の片隅に 緑の君が住んでいます。 たぷたぷとした泉のほとりに 赤い屋根と白い煙突。 彼女の家には、小人達が集まります。 彼女の振る舞う甘いお…

みみずくの耳
3週間前
10

100万回

「自分のためだけに生きるのには限界がある」 そう気づいた時のお話をします。 何だか落ち着かない29歳を越え、30歳になり、いい意味で諦めがついて肩の荷が降りたと思っ…

みみずくの耳
19時間前
5

幸福論

この生きづらい世の中に 私は子を産み落としました 血を吐くかのように乗り越えた苦しい日々を 自らの子どもに味わわせることを 良しとしたのです 子どもは私に 生まれて…

3

わたしの仕事

話を聞きますが、時々ちゃんと聞いてません。 あなたのまわりにふわふわと漂う空気を解析します。 だからといって何かするわけじゃありません。 ほどよい距離感、を大切…

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地下二階の庭

どうしてこんなに悲しいんだろう。 雨の音が聞こえる。 どうしてあんなことを言ってしまったんだろう。 何度も反芻する。 気を悪くしたんじゃないかと不安になる。 そ…

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産後の恨み、更年期の嗜み

産後の恨みは一生ものだという。 実際、私は根に持つ方だ。 初めての出産。 我が子は夜中の2時から朝の5時まで寝ない子だった。 退院前日の夜は、ナースステーションに預…

300

プレイボール

子どもを育てながら働くということは、古い表現になるが「星飛雄馬のギプス」をつけていることに似ていると思う。 まあ身動きがとれない。窮屈で不自由。 ジャムの瓶は相…

4

ケサランパサラン

ケサランパサラン シトリン リンデン たんたんたんぽぽここまでおいで 君に降り注ぐ暖かいものたち 深く息を吸い込んで ケサランパサラン 雪虫泣き虫 泣いてる顔だって可…

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くろねこ

くろねこどらねこノラノワール うたをうたうわ レットイットビー しあわせひっかけ フィールソーグー あうとトゥナイト よるのフクロウ わたしはここよ 見つけちゃだめ…

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カサンドラコンピューター

未来を見ることは、それほど難しいことではない。 個々の現状、思考傾向、施行条件、案件をインプットする。 予測が弾き出される。 火を見るより明らかだ。 テスト勉強を…

みみずくの耳
2週間前
4

「産まれちゃうよ」

人にはきっと一生忘れない言葉、というものがあると思う。 私にとってその言葉のひとつがこれだ。 ようやっと産休に入った頃のこと。 まだ正期産に入っていないのに、や…

みみずくの耳
2週間前
6

わたしのほんとの願い

ハンモック 花ぶらんこ 白いヴェールのウェディングドレス 豪華客船 もかまたり 「夢の中ではいつも風が吹いている」 透きとおった宝石のような湖 グリーン車 静寂 雨の…

みみずくの耳
2週間前
9

いつまでも あると思うな エビフライ

みみずくの耳
2週間前

Pick-me-up

ふわふわと漂う意識が、 パチンと弾ける音で呼び戻された。 ここはどこだろう。 ああ、そうか、森に帰ってきたんだった。 思えば長い道のりだった。 見えているのに辿り…

みみずくの耳
2週間前
1

青い鳥

その鳥は不思議の森の西のはずれに住んでいました。 長く美しい2本の尾羽と、遠くまで響く鳴き声は人々を魅了しました。 しかし、いつの頃からか、その青い羽根は高値で…

みみずくの耳
3週間前
2

冷凍庫で長らく放置されたしらすとねぎを入れた卵焼きがおいしかったことが、私の機嫌を直すのだ。

みみずくの耳
3週間前
緑の君

緑の君

人は入れない不思議の森の片隅に
緑の君が住んでいます。

たぷたぷとした泉のほとりに
赤い屋根と白い煙突。

彼女の家には、小人達が集まります。

彼女の振る舞う甘いお菓子に魅せられて
木の実や赤い花を見つけては
褒めて褒めてとやってきます。

あまりに沢山の花を抱えてきた小人を、たしなめることもあります。
彼はしょげながらも、どこか嬉しそうにしています。

なにせ緑の君はとても美しく
困った顔も

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100万回

100万回

「自分のためだけに生きるのには限界がある」
そう気づいた時のお話をします。

何だか落ち着かない29歳を越え、30歳になり、いい意味で諦めがついて肩の荷が降りたと思ったはずだった、のに。

私はこれからずっとここで同じ毎日を過ごすのか

同じ電車の同じ車両に乗って
同じ景色を見て
同じ机に座って

そうして少しずつ老けていくのか。

背筋が凍るような感触がしました。

そいつは、ヤヴァい。
まじで

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幸福論

幸福論

この生きづらい世の中に
私は子を産み落としました

血を吐くかのように乗り越えた苦しい日々を
自らの子どもに味わわせることを
良しとしたのです

子どもは私に
生まれてきた意味を
あまりにも簡単に与えてくれました
拍子抜けするくらいに、簡単にです
生きる意味なんてないのよ、とジリジリ灼けるように抱えていた絶望を
子どもは笑顔ひとつで軽々しく否定してきます

それを幸福と呼ぶのには、ためらいがありま

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わたしの仕事

わたしの仕事

話を聞きますが、時々ちゃんと聞いてません。

あなたのまわりにふわふわと漂う空気を解析します。

だからといって何かするわけじゃありません。

ほどよい距離感、を大切にしています。

奥義はまだ手にしていません。

「言語化」は万能じゃないと知っているのに、
言葉の持つ力に惹かれています。

分からないことがわかった、とよくつぶやいています。

時給で働いています。
高いのか安いのかよく分かりませ

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地下二階の庭

地下二階の庭

どうしてこんなに悲しいんだろう。

雨の音が聞こえる。

どうしてあんなことを言ってしまったんだろう。

何度も反芻する。

気を悪くしたんじゃないかと不安になる。

そんな自分が心底面倒くさくなる。

もう今日は誰にも会いたくない、そう思いながら本棚の背表紙を眺める。

本はいい。

誰かを傷つける心配がないから。
私が傷つく心配だけすればいいから。
 

自分が傷ついたことを誰かの責任にしよう

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産後の恨み、更年期の嗜み

産後の恨み、更年期の嗜み

産後の恨みは一生ものだという。
実際、私は根に持つ方だ。

初めての出産。
我が子は夜中の2時から朝の5時まで寝ない子だった。
退院前日の夜は、ナースステーションに預けた。しばらく眠れない夜が続くことを覚悟し、今晩だけでも休んでおこうと思ったのだ。

諸事情により、里帰りはしなかった。
義母と産後ヘルプサービスにお手伝いをお願いしてあるから、何とかなるだろうと思っていた。実際何とかはなった、の、だ

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プレイボール

プレイボール

子どもを育てながら働くということは、古い表現になるが「星飛雄馬のギプス」をつけていることに似ていると思う。

まあ身動きがとれない。窮屈で不自由。
ジャムの瓶は相変わらず開けられないが、5kgの米袋なら軽々と持ち上げられるようにはなる。

そんなこんな修行の毎日。
こんなに頑張って毎日徳を積んでいたら、ついうっかり解脱しちゃうんじゃないかしら。そんな風にひとりごちる。

でもまだ悟りは開けない。

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ケサランパサラン

ケサランパサラン

ケサランパサラン シトリン リンデン
たんたんたんぽぽここまでおいで
君に降り注ぐ暖かいものたち
深く息を吸い込んで

ケサランパサラン 雪虫泣き虫
泣いてる顔だって可愛いんだ

ふわふわゆらゆらおかえりなさい
さらさらひらひら行ってらっしゃい

遠く遠くに聞こえる声は
こだまコトダマ言ノ葉満ちる

チルチルミチルは青い鳥
くろねこどらねこノラノワール

言えなかった言葉も
言ってしまった言葉も

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くろねこ

くろねこ

くろねこどらねこノラノワール

うたをうたうわ
レットイットビー

しあわせひっかけ
フィールソーグー

あうとトゥナイト
よるのフクロウ

わたしはここよ
見つけちゃだめよ

花いちもんめにかごめかごめ

はやく逃げるわ逃げるが勝ちよ

やなことないないあっちへポイポイ

姫りんごとか食べたい気分よ
夏とか冬とか関係ないわ

カサンドラコンピューター

カサンドラコンピューター

未来を見ることは、それほど難しいことではない。
個々の現状、思考傾向、施行条件、案件をインプットする。
予測が弾き出される。
火を見るより明らかだ。

テスト勉強をすればテストの点数は上がる。
インフルエンザなど予想外のことはもちろんあるが、それはあくまでアクシデントだ。

インプットする情報は正確なほど、予測の精度は上がる。
不正確な情報には修正が必要だ。

できるならやりたいのか、本当にやりた

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「産まれちゃうよ」

「産まれちゃうよ」

人にはきっと一生忘れない言葉、というものがあると思う。

私にとってその言葉のひとつがこれだ。

ようやっと産休に入った頃のこと。
まだ正期産に入っていないのに、やたらとお腹が張ってしまう。40代の高齢出産、もとからの運動不足もあり、体力は限界。それなのにイヤイヤ期真っ盛りの上の子の保育園から、15時のお迎えを指示されてしまった。
あまりにも辛くて、夫の送り迎えを許可してもらうために診断書を書いて

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わたしのほんとの願い

わたしのほんとの願い

ハンモック
花ぶらんこ
白いヴェールのウェディングドレス
豪華客船
もかまたり

「夢の中ではいつも風が吹いている」

透きとおった宝石のような湖
グリーン車
静寂
雨の音

「こんな夢をみた」

夢の中のわたしは万能の神にもかかわらず、空を飛ぶことさえままならない。
追いかけられる。
落ちる。
蛇に虫に闇に。

「旅をするように生きたい、なんてのたまってみる。」

人生は旅だ。
思うようにならな

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いつまでも あると思うな エビフライ

Pick-me-up

Pick-me-up

ふわふわと漂う意識が、
パチンと弾ける音で呼び戻された。

ここはどこだろう。

ああ、そうか、森に帰ってきたんだった。

思えば長い道のりだった。
見えているのに辿り着けない蜃気楼のように、
指の間からすり抜ける砂のように、
私に還る旅は困難を極めた。

ここは暖かくていい香りがする。
温めたミルクとシナモンの香りだ。

うとうとしながら寝返りをうつと、
柔らかな光がまぶたを刺した。

ふと、不

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青い鳥

青い鳥

その鳥は不思議の森の西のはずれに住んでいました。

長く美しい2本の尾羽と、遠くまで響く鳴き声は人々を魅了しました。

しかし、いつの頃からか、その青い羽根は高値で取り引きされるようになりました。

しまいには長い尾羽を求め、狩人が森に入ってくるようになりました。

狩人を恐れた青い鳥は、鳴くのをやめてしまいました。

そしてその頃から、青い鳥は西の森の奥深くで、ひっそりと暮らすようになったのです

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冷凍庫で長らく放置されたしらすとねぎを入れた卵焼きがおいしかったことが、私の機嫌を直すのだ。