mimi

小説ブログ。アメブロは日々のつぶやきを。SNSに不慣れで、手探り中です。少しでも気に入…

mimi

小説ブログ。アメブロは日々のつぶやきを。SNSに不慣れで、手探り中です。少しでも気に入ってくださったら、スキを押していただけるとすごく嬉しいです。月に一度の更新を目標にしています。https://ameblo.jp/cono29 Twitter: mimi @mimi_1lovU

最近の記事

詩『太陽』

今日は夏至だから、太陽をテーマに。 『太陽』 太陽は夜を愛している その証拠に、 太陽はいつも夜を追って照らす 夜を追って 太陽は登り 夜を探して 太陽は沈む   夜は太陽を求めている その証拠に、 夜はいつも太陽の後をついて歩く 太陽を追って 夜は明け 太陽を探して 夜は更ける 求め合いながら けして出会わない二人が 視線を交わす ときめきの刹那が 一日の始まりと終わりを染める

    • イラスト『深海魚のように眠る』(村上春樹「パン屋再襲撃」より)

      『深海魚のように眠る』 僕はできるだけ急いで毛布をといて銃をとりだし、それを客席に向けたが、客席には学生風のカップルが一組いるだけで、それもプラスチックのテーブルにうつ伏せになって、ぐっすりと眠っていた。テーブルの上には彼らの頭がふたつとストロベリー・シェイクのカップがふたつ、前衛的なオブジェのように整然と並んでいた。(p.79) 「僕は毛布に銃を包み、妻は両手にマクドナルドのマーク入りの手さげ袋を持って、シャッターの隙間から外に出た。客席の二人はそのときになっても、まだ

      • 不気味の森シリーズ、まとめ

          今月は小説の公募に挑戦していたので、代わりにイラストを。 『見る花』 『香る花』 『食べる実』 『牡丹と蝶』 『スイレン』

        • 詩『あなたが泣いた日』

          『あなたが泣いた日』  私があなたと見つめあった時、世界は消えた。音もなく、光もなく、ただ存在だけがそこにあった。存在だけが。真っ暗闇に浮かぶ青い目玉がこちらを見つめ、言葉は喉元を降りて、胃をムカつかせた。正体のない星がチラチラと光って、めまいを催した。  私たちがどこで道を誤ったのか、誰も知らない。ここに言葉はなく、標識はなく、ただただ地平の彼方へと無機質に続いていく灰色の一本道だけが、後戻りしようと図る私たちを冷たい目で見ている。  戻り道がどこにあるのか、覚えていな

        詩『太陽』

        • イラスト『深海魚のように眠る』(村上春樹「パン屋再襲撃」より)

        • 不気味の森シリーズ、まとめ

        • 詩『あなたが泣いた日』

          短編小説『私はネコ』

          今日はネコの日だったと聞いたので、取り急ぎ、体裁だけ整えて。 未完成のような気がするので、今後、訂正することがあるかもしれません。 冗談のつもりで楽しんでもらえたら幸いです。 『私はネコ』  うちには、人間が一人いる。  始終、泣いたり笑ったり、忙しない生き物だ。  しかし、いつも私の食事の面倒など見てくれて、悪い奴ではないようだ。  冷たい窓際でうっかりうたた寝をしてしまい、どうにも腹の調子が優れないのでぐったりしている時などは、体を優しくさすってくれた。その後、彼は私

          短編小説『私はネコ』

          詩『揺れる』

          揺れる 揺れる ゆりかごは 揺れる 揺れる ゆりかごは 安らいで眠る赤ん坊を起こして もう一度あやしてやるために 揺れる 揺れる ゆりかごは 忘れられずにいることを 何度でも思い出させてやるために ゆりかごは 揺れる ゆりかごは 揺れる けたたましい泣き声が 引き裂いた夜の暗闇は

          詩『揺れる』

          短編小説『ある通信会社クマ社員のふつうの1日』

          午前  ぼくがこの小さな星のき地にやってきて、4ヶ月になる。  今日もおだやかなピアノが歌って、ぼくをゆり起こしに来る。いつものように窓のブラインドが開いて、光を部屋にさし入れる。  この星で朝と夜を分けるものは、この音とブラインドの開け閉めだ。ここの太陽は、地球の太陽より、赤みがかって大きくて、光はちょっと弱々しい。そして、オレンジ色の気球がと中でのぼるのをあきらめたみたいに、じっと空の真上にはりついている。だから、ぼくらのいるき地は、いつまでも真昼。  そんな太陽の、いつ

          短編小説『ある通信会社クマ社員のふつうの1日』

          短編小説『便利な生活』

          質問 M?Ut***** さん 2IEB/Je/ZL  4@:%〜:#“ 私は小さな頃から数学に親しんできました。なぜなら、ビッグデータがそう言ったからです。ビッグデータは、あらゆる遺伝的、潜在的条件から数学の適性を正確に算出し、数も数えるようになる前から、私は円周率を子守唄にして眠りました。 今は経理の仕事をしています。仕事は楽しいし、順調です。後悔なんてするはずもない、私にぴったりの仕事です。生活には満足しています。周りには私と同じように育った人たちがいて、私はとて

          短編小説『便利な生活』

          詩『馬』

          馬が向こうからやってくる気配がする 獣臭い息を切らして 体毛は汗に湿り 重い蹄の音が頭蓋の奥を叩く ありがたくないことになるのは分かっている その馬は私を乗せるのを嫌がって身震いする そのくせ何かを期待して後をついてきては 言い知れない要求を鼻面で訴えてくる なだめても 餌をやっても その要求を満たすことはできない ただただ私を小突き回すことだけが 生きがいであるように 満足という言葉は遠い ひたむきと言える執拗さで 私にはないものを私から引き出そう

          詩『馬』

          お知らせ あるいは 覚え書き

           私の書き物を読んでくださっている方々、本当にありがとうございます。  自分の表現したものが人目に触れることには不安もありつつも、アクセスやボタンを押して評価をいただくと、ひとしお嬉しいものなんだなと実感しています。  あくまで趣味として、遊びとして書いているにすぎないはずなのに、気がつけば、思う以上にやっきになっていて、一人前にも、もっともっとすごいものを書こうとか、できるだけよく見せようと欲深くなってしまうことに、創作の難しさを感じています。それでも、そんなふうに夢中にな

          お知らせ あるいは 覚え書き

          クリスマス小説『きっと君は来ない』

          『きっと君は来ない』  正直、恋とか愛とかって下らないと思う。  クリスマスって、そういうバカバカしい欲望をいやに美しく飾り立てただけのもんだろう。  盗人の目をした巨大広告の微笑みのもと、何も知らないふりをしてはしゃぐ恋人たちが群れ歩いている。どんなに浮かれ騒いだって、その愛とかなんとかいうのものは春の雪より儚くて、遅かれ早かれ、思うより美しくなれない現実に気づかされて、失望するか、見ないふりを演じ続けるかを決めなくちゃいけないハメになるんだろう。  そうだとしたって、そ

          クリスマス小説『きっと君は来ない』

          小説『漂流者』

          1  あれからどのくらい経ったのだろう。日付を数えることすら忘れてしまって、今、時間でも空間でも私は迷子でいるみたいだ。  海に漕ぎ出た日の、胸の高鳴りを懐かしくも切なく覚えている。優しく背中を押す海風、船出をことほぐ心地いい波の音に見送られ、視界はどこまでも明るく開け、地平の彼方からの呼び声が聞こえてくるようだった。  上も下も切れ間のない青の中を、吸い込まれるように進んでいた。  大きくはないが快適な船で、忙しくした後の夜には、楽しい笑い声が響いていた。みんなはどうして

          小説『漂流者』

          小説「ただれる唇」

          オリジナルの短編小説です。楽しんで頂ければ幸いです。 『ただれる唇』  我が家の幸せの上には、イグアナが一匹座っている。冷たく、醜く、不気味な生き物だ。  紫外線ライトの下にじっとして、虚空を見つめている。餌をやればバリバリと食べるが、何を思っているのか、皆目わからない。一匹きりで寂しいのか、独り占めして嬉しいのか。  息子が欲しいというので買い与えたが、すぐに飽きてしまった。子供というものは、いつもそうやって身勝手なものだ。手に入らないものばかり欲しがり、手に入ると簡単

          小説「ただれる唇」

          『タルトタタンの憂鬱』(米津玄師『メランコリーキッチン』より)

          『タルトタタンの憂鬱』  選択というものはいつも微妙なものだ。    正しい選択と間違った選択、いい選択と悪い選択というものがあることは明白だ。  しかし、肝心の選択は、自由という名のもとに我々の前に投げ出されているし、その良し悪しというのは、結果を見るまで本当には知りえない。振り返ってみて初めて、ひどく間違った選択を後悔しても、結果はもはや変えようもない。なぜなら、結果こそが、その選択の正誤を決めるからだ。それは、ルールを知らされないポーカーゲームのようなものだ。しかもそ

          『タルトタタンの憂鬱』(米津玄師『メランコリーキッチン』より)

          『春雷』(米津玄師『春雷』より)

          『春雷』  のどかな春の盛り、それは突然現れる。やにわにかき曇り、暗くなる空に、一瞬の光。轟音。花を愛でる賑やかな席の真ん中に、急に場違いな阿修羅が現れるようなこと。  そんなふうなことが、実際に起きるとは信じがたいことだ。しかし、現実にはそんなこともあるものだよ。信じて欲しい。そのことを君に言いたくて。  あの雷鳴が、どういうわけか耳から離れない。浮かれたざわめきの中を真っ直ぐに射抜いて、僕の胸を揺らしたあの音。ヒヤリと背中を撫でるくらいに混じり気なく、ごまかしなく刺し貫

          『春雷』(米津玄師『春雷』より)

          『カムパネルラ へ』(米津玄師『カムパネルラ』より)

          『カムパネルラ へ』  リンドウの花が、冷たい秋風に気持ちよさそうに揺られていました。うだるような夏から解放された川は、いっそう澄んで、軽やかに歌うように流れ、キラキラ輝いています。どこか遠くで、もの寂しげなオルガンの音が響いていました。  ザネリは、右手に学生鞄を抱え、左手はずいぶん丈の足りなくなった学生服のポケットに入れ、橋を渡る手前でなんの気なしに口笛を吹き、そうしてから、少し立ち止まりました。川は変わらず優しく流れています。  これから会う約束をしているジョバンニの

          『カムパネルラ へ』(米津玄師『カムパネルラ』より)