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詩『あなたが泣いた日』


『あなたが泣いた日』


 私があなたと見つめあった時、世界は消えた。音もなく、光もなく、ただ存在だけがそこにあった。存在だけが。真っ暗闇に浮かぶ青い目玉がこちらを見つめ、言葉は喉元を降りて、胃をムカつかせた。正体のない星がチラチラと光って、めまいを催した。


 私たちがどこで道を誤ったのか、誰も知らない。ここに言葉はなく、標識はなく、ただただ地平の彼方へと無機質に続いていく灰色の一本道だけが、後戻りしようと図る私たちを冷たい目で見ている。
 戻り道がどこにあるのか、覚えていない。


 固い意志を持って、遠くへ誘うように思えるこの一本道すら、その行方を話さない。道を行くのか、行かないのか、てんで興味などないというふうに、土気色の顔が、血の気のない空を見上げている。


 言葉を失ったまま見つめ合う私たちは、それでいて、言葉にすがるしか術はなかった。
 溺れかけた大海原の真ん中で、いっときの気休めと息継ぎのために、からっぽの浮き袋を当てにしたけれど、私たちの望みには適わなかった。どちらも、という私たちに、浮き袋は、どちらか、と答えた。


 あれかこれかを選ぶ重みに、私たちはあまりに非力だ。どちらも選びきれないまま、波にゆらゆら酔わされて、吐き気が込み上げている。


 あなたがほんの少し、腕の力を緩めてくれれば、なんてことを思いながら、そんなことは起こらないことを知っている。私たちは鏡に映ったお互い自身なのだから。その上、あなたを呪ってしまったことにも嫌気がさして、もう沈んでしまいたい気分になった私の腕を、あなたは不思議に引き止める。
 打ちつける潮水で、あなたの目だけが光っている。

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