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東野圭吾『新参者』感想

※微ネタバレあり




この作品は、東野圭吾の加賀恭一郎シリーズのいっかんで読んだ。

一言で表現すると、「人情が結びついて殺人事件の背景は浮かびあがる。」

加賀恭一郎が日本橋署に異動して初めて担当する殺人事件。9章で構成されており、人形町という同じ町のさまざまな人々に加賀が聴き込み調査を行なっていく。

この人が犯人かと思いきやそうではないという展開が続く。章ごとに異なる人を描いているので、それぞれが独立した短編集のようでもあるが、要所要所で複雑に伏線が張られていて、終盤で意外な展開に繋がってくるのがおもしろい。

殺人事件が起きた以上は、犯人を捕まえるたけではなく、どうしてそんな事件が起きたのかを追及する必要がある。そうでなければ、同じ過ちがまた繰り返されることになるだろう。そう加賀は述べている。

今回加賀が聴き込み調査をして得た情報はほとんどが事件には直接関わりのないものだった。
しかしそれらによって加賀と読者は人形町という町に生きる人々の空気感をリアルに掴むことができた。

また、巡りめぐって被害者がなぜ殺されたのか、その背景を読み解くことにもつながったのだ。

こういった加賀の姿勢は多作品でも一貫して表現されているように思う。
殺人事件の捜査というのは特殊な事例だ。しかし一般化すればすなわち、
何かアクシデントが起きた際、誰がどんな問題を起こしたかだけではなく、「その背景まで明らかにする」ことで再発防止につなげるということだろう。

こういった問題への向き合い方は誰もが実生活に活かせるものではないだろうか。

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