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文学を読んだり、語ったり

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小説についてあれこれ思ったことを集めて参ります。
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大見得切った小林秀雄だったのに、すっかり呑み込まれてしまった。

大見得切った小林秀雄だったのに、すっかり呑み込まれてしまった。

書けない感動などというものは、皆嘘である。ただ逆上したに過ぎない、
              小林秀雄『ゴッホの手紙』

最初は順調でした。ゴッホが父親と同じく聖職者の道を歩み始め、そこで挫折し、弟テオに経済的にも精神的にもすがりながら、絵の道を志す……。小林の筆は快調でした。それがやがて、だんだん言葉が少なくなります。ついにはゴッホの手紙

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文学の正体

文学の正体

  土   
              三好達治
 蟻が
 蝶の羽をひいて行く
 ああ
 ヨットのやうだ

まつすぐな道でさみしい    種田山頭火

咳をしても一人       尾崎放哉

これらの短詩も自由律俳句も小さな孤独を謳っている。
そして大きな孤独に届いている。

自らの孤独を感知し、韻文としたとき、他者の孤独に届くことがある。このレアで幸運な状況を「文学」という。韻文だけではな

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