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いちめんのなのはな

この詩を初めて知った時、私はまだ幼かったが強烈に私の記憶に残った。


『風景 純銀もざいく』 山村暮鳥

いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
かすかなるむぎぶえ
いちめんのなのはな

いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
ひばりのおしやべり
いちめんのなのはな

いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
やめるはひるのつき
いちめんのなのはな



大人になってフランスに住み始めて、パリからロンドンに向かうために乗った国際列車ユーロスターの車窓から突然広がった菜の花畑を見て、ふっとこの詩を思い出した。


私が小さい頃住んでいた家の近くにはバスも車もたくさん通っていたが、道路の周りにはいくつも田んぼがあった。

初夏にはカエルの大合唱が聴こえたり、秋の稲刈り後にはぴょんぴょん飛び跳ねるいなごを見つけては捕まえたり、春になるとれんげ畑とシロツメクサの畑で花の首飾りを編んだり、そして菜の花畑に姿を変えた黄色い田んぼにしばし見とれた。 

黄色の菜の花畑は圧巻だった。もう40年以上前の風景なのでだんだん記憶がうっすらとしてきてはいるが、それでもあの黄色の菜の花は今でも忘れられないほどとても印象的だ。

菜の花やれんげ、シロツメクサは緑肥といって肥やしにするためにそこに植えていると聞いた。もしかしたら菜の花からは食用油を取ったり菜の花そのものを食用にもしていたのかもしれない。



田んぼの草花たちは、例えばバラの花のように高貴で華麗なイメージは無い。でも可憐で健気でやさしく、通りすがりの人の心を和ませる。
そんな野に咲く小さな草花が、私は大好きだ。

人間にも、バラのように存在感があってその場にいるだけで、一瞬で空気がパッと明るくなるような華やかな印象の人と、野の花のように一見目立たないけれど、ひっそりと佇む誠実な姿が人々の心に深く印象付けることの出来る人とに分かれると思う。それぞれに主張の仕方は違うが、どちらも美しいし、素敵だなと思う。



その後も、時々ユーロスターに乗るが、春に黄色の菜の花の風景を見る度に、そして、日常の生活の中でこの詩を時々思い出す度に、海外に住んでいるにも関わらず得も言われぬ懐かしい、優しい気持ちに包まれる。


そんな菜の花の存在が、私は大好きだ。






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