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美味しければいいってもんじゃない! 短編小説で簡単おしゃれレシピ! ベーグル・サンドイッチ2種
レシピなお話⭐︎ カフェ風ベーグル・サンドの魅惑
お昼のお弁当の定番はサンドイッチである。
嘉穂は、初めは「楽だから」という理由から作り始めたサンドイッチという魅力的なお弁当にすっかり取り憑かれてしまった。
はじまりはベーグルサンドだった。もともとパン好きの嘉穂は、複数の有名デパートの地下に店舗を構えているベーグルのチェーン店で六つセット売りされていたベーグルを買い込んだ。
朝食に食べ
齢八十八、指揮者にないもの
身を包む空気には、風もなく、濁りもなく、熱もなく、湿気もなく。
無駄なもののない空間だ。
壁越しに耳に入ってくるのは一定の振動数を保つ長い弦の音、遊び吹かれる木管の音階、弾むような金管の鼓笛。それらが雑多に入り混じる、「まだ」混沌状態のものたち。
「マエストロ、そろそろです」
瞼を開ける。
私の前の鏡には、顔に深い皺が刻まれた老人が一人座って映っている。同じく皺だらけの手が、台の上に
帰るために、旅立つ夏
チューリヒ国際空港
「当機はただいまより、着陸態勢に入ります。お席をお立ちのお客様はお座席にお戻りになり、シートベルトをしっかりとお締めください」
耳に感じる圧に変化が起こり、喉元が圧迫されるような気分がする。さっきまで外を隠す濃紺色だったサイド・ウィンドウがゆっくりと無色透明に変わる。眼下に広がる雲海の合間に頂を出すアルプス。盛夏だというのに銀白に包まれて雄壮に聳え立つ姿を照らすのは、雲の向