蜜柑桜

ジュブナイル・ファンタジーを書きます。 普段は主にカクヨムさんにおります。代表作「シレ…

蜜柑桜

ジュブナイル・ファンタジーを書きます。 普段は主にカクヨムさんにおります。代表作「シレア国」 短編大賞はエブリスタ『白銀に紅 名宿の桜』 このたび創作大賞2023参加のため登録しました。 「楽園の果実」というジュブナイルです。

マガジン

  • 創作大賞2024

  • 創作大賞応募作品 シリアス・ハイファンタジー 天空の標

    創作大賞応募作品『天空の標』  森に守られたシレア国では、先頃より先王と母后が相次いで逝去した。王位継承者第一王子カエルムは即位を前に側近のロスと近隣諸国訪問中である。  海に面した強国テハイザは陸の資源を欲し、かねてよりシレアと緊張関係にあった。カエルムは強固な友好条約を目指し外遊の終わりにテハイザを訪れる。  しかし止まることなく天体の動きを示すテハイザ国の宝、「天球儀」が停止し、隣国の王子は災禍の種だと王との謁見を阻まれる。  一方シレアでは、国で唯一「時間」を知らせる「時計台」が止まった。そしてさらなる危機が……  一刻も早い帰国が要される。  二人はこの危機を乗り切れるか。  自然と人間の定めた秩序を軸に、本格ファンタジー開幕。 各話表紙とマガジン表紙(シレア国周辺地図)のイラストは如月芳美様からいただきました。

  • シレア国 兄王子中編

    硬派ファンタジー、イケメン主従、アクションありのバディもの。 正統派イケメン王子と苦労人系イケメン従者です。 30000字なので、サクッと読んでください! よろしくお願いいたします。 画像はあさぎかな様にいただきました。 画像の全体像は各話のページでどうぞ。

  • 美味しければいいってもんじゃない!

    簡単おしゃれなカフェサンドレシピ小説をまとめました。

  • 2024年の年始連続投稿(今年の願いややりたいこと)

    2024年年始企画に参加したものの、5連続投稿できずに終わってしまいました。。。

最近の記事

  • 固定された記事

天空の標 第一話

あらすじ 森に守られたシレア国では、先頃より先王と母后が相次いで逝去した。王位継承者第一王子カエルムは即位を前に側近のロスと近隣諸国訪問中である。  海に面した強国テハイザは陸の資源を欲し、シレアとは緊張関係にあった。カエルムは強固な友好条約を目指し外遊の終わりにテハイザを訪れる。  しかし止まることなく天体の動きを示すテハイザ国の宝、「天球儀」が停止し、隣国の王子は災禍の種だと王との謁見を阻まれる。  一方シレアでは、国で唯一「時間」を知らせる「時計台」が止まった。そして

    • 他サイトコンテストでも重厚ファンタジー応募中

      おはようございます! 創作大賞に参加中の短編・長編、エッセイなど、読んでいただきありがとうございます。  創作大賞では「天空の標」がいく人かの方におすすめ小説として記事に載せていただき、とても嬉しく思っています。  流行りとは異なると思いますが、好まれるのはすごく励みになります!  今後、創作大賞2024では、「天空の標」と同じ世界観で王女の話「時の迷い路」を連載し始めます。こちらは公募に出したこともあり、選考を通過させていただいたものですので、改稿してから再挑戦です。

      • 曇り空の下で、熱いフォカッチャを

        『海外留学』と聞くと、充実した素晴らしい思い出のできるキラキラしたイメージを思い浮かべるのかもしれない。  ことに行き先が観光名所も多いヨーロッパとなれば、学業以外の文化歴史に触れ、友人たちと日本では不可能な現地ならではの余暇を楽しみ、第二の故郷とも呼べる場所を得て帰ってくる——少なくとも、巷にある留学プログラム紹介や体験者の声にはそういうものが多いのではないだろうか。広報にある写真を見ても画面からはみ出さんばかりの極上の笑顔が目立つ。  確かに、そういう留学も多いだろう。

        • 創作大賞応募 長編ファンタジー「天空の標」完結

          完結しました! 全五十話、シリアス・ファンタジー、主従バディです。 ぜひいらしてください。 大人気、イケメン主従のバディもの、しかしテーマと内容はシリアスです。 人の性とは。人が求めるものとは。 どうぞよろしくお願いいたします。 唯一無二のファンタジー世界がここにあります。

        • 固定された記事

        天空の標 第一話

        マガジン

        • 創作大賞2024
          4本
        • 創作大賞応募作品 シリアス・ハイファンタジー 天空の標
          50本
        • シレア国 兄王子中編
          14本
        • 美味しければいいってもんじゃない!
          3本
        • 2024年の年始連続投稿(今年の願いややりたいこと)
          3本

        記事

          天空の標 第五十話(最終話)

          「国事史  月海暦 千四百九十八年 盛秋新月。  天の標が失われ、蛮族、城内に厄をもたらす。  海より炎立ち昇り、王都災禍に見舞われし。  国の主、いにしえの祖に倣いて、石に四方を尋ねん。  天の球と国の宝、天空の理を識らしめたり。  時の標失いし友の国、止水、人を惑わす。  主の住まいに、我が国の至宝投じられし。  都を潤す大河、海の命と輝きに、己が道の導きを得る。  時の音とともに、止まりし流れ解き放たれたり。  両国の宝、再び標を示して迷うところなし。    か

          天空の標 第五十話(最終話)

          天空の標 第四十九話

          終章 旅の終わり  石壁に囲まれた部屋の中は、水面に落ちる滴の音さえしない。  何ものも動かない。時が止まったように。  そもそも時間は「流れている」ものなのだろうか。それは人間の意識でしかないのかもしれない。  しかしそれでも、「過去」という名で呼ばれる瞬間は積み重なっており、「未来」と呼ばれる瞬間のことは我々にはわからない。そして「時」と呼ぶものの流れる方向が定まらなければ、自己の生命が辿る道も見失ってしまう。  川が常に上流から下流へ、山の頂から海へ向かって流れるよう

          天空の標 第四十九話

          天空の標 第四十八話

          第十五章 火焔(三)  暁色の中に真南の水平線を浮かび上がらせた薄明は、刻一刻と王都の空を浸食していった。濃藍の空に紅が混じりゆくさまは、禍々しくも美しい。抗い難く目を奪う妖しい魅力に、城内の人間はこれまで感じたことのない恐怖に襲われた。  王の一喝にいち早く行動を起こしたのは、下級官吏たちである。大臣が床に倒れ、琥珀色の髪の男が近衛師団長の前に屈したのを目にしながらのこの惨禍だ。中核だった二人が制されて叛意喪失し、峻厳たる国王の一言でより優先すべき事柄に目が醒めた——彼ら

          天空の標 第四十八話

          天空の標 第四十七話

          第十五章 火焔(ニ)  常ならぬ状況を察知したのか、馬の足取りに困惑が感じられる。それもそのはずだ。本来なら闇の中に星が輝くはずの新月の夜であるのに、あたり一面に光明が広がっているのだ。妖しい光は南から次第に空を浸食したようで、今やシレアの北に連なる山脈の稜線までも紅に縁取られている。  天球儀に起こった異常は、天球儀という機械の問題にとどまらず、そこから実際の空にも影響が及び出したのか。  シレア国首都、シューザリーンには東西南北に門がある。手紙を読めば行くべきは東門。カ

          天空の標 第四十七話

          天空の標 第四十六話

          第十五章 火焔(一)  上階から降りて窓硝子を割り武装した男たちが部屋に乱入してくる。怒号をあげ得物を振りかざし向かってくる先から、ロスとクルックス、そしてテハイザ王は床に打ち倒していっていた。  日はとうに沈み、外はもうすっかり闇に覆い尽くされている。新月の今日、月明かりもない。 「大人しそうに見えてなかなか、こういうのにも慣れてるじゃないか」  ロスは走り込んで来た男の足をすくい、後ろに倒して気絶させると、横に並んだクルックスに顔を向けた。さっきからこの調子で立て続けに

          天空の標 第四十六話

          天空の標 第四十五話

          第十四章 鳴動(三)  水道は次第に狭くなっていく。渡り廊下の下は、やっと小舟一つ通れるだけの幅だ。櫂をつくだけの余裕が脇にない。カエルムは渡り廊下の手前で大きく水をひと掻きすると、櫂を船上に横倒しにし、自分も身を屈めた。小舟は勢いをつけて、渡り廊下の下をすり抜けた。  するとスピカの言う通り、前方に船着場が見えてきた。その奥には丈高い木が並ぶ。そういえば城を取り囲む形で、城下との間を区切る小さな緑地帯があったはずだ。  船着場の脇には、杭に繋がれて一頭の栃栗毛の馬が佇んで

          天空の標 第四十五話

          天空の標 第四十四話

          第十四章 鳴動(二)  窓の桟を軽く蹴って、カエルムは宙に身を投げた。視界の右側に例の不可思議な水面が見える。半円形の部屋で左端の窓から出たのだ。自分の目指す落下点は真南にある水面からやや東にずれたところに当たる。  脚の裏に空気抵抗を感じながら真っ逆さまに落ちる。肩口で留めた紅葉色の羽織が吹き上げられ、頬の横で布が風に叩かれて鳴った。頭上から聞こえていた騒音は羽織の音に邪魔され、どんどん小さくなる。それに反比例して城に面した蒼い水面がみるみるうちに近くなり、城の最下層の壁

          天空の標 第四十四話

          天空の標 第四十三話

          第十四章 鳴動(一)  ロスは窓辺に駆け寄り、大鷲の脚から書簡を手早く取った。組紐から解放された鷲は、大きな羽ばたきとともに上空へ飛翔し、翼を翻すや北へ向けて悠々と飛んで行く。シレアの方角だ。  カエルムはロスから書簡を受け取ると、無言で組紐を解いた。紙を閉じたところに押されているのは、緊急を示す印。  書を開いたカエルムの顔に緊張が走った。テハイザ王に向けられた眼差しの険しさが、事態の深刻さを示している。 「どうやら、陛下の意を正しく汲まない者たちが血気に逸った行動を取っ

          天空の標 第四十三話

          天空の標 第四十二話

          第十三章 真意(三)  差し迫った問題を真剣に案じるカエルムとは対照的に、テハイザ王は心配ない、といった体で懐から小さな円盤を取り出し、立ち上がってカエルムにそれを見せた。 「我が国が先頃発明した羅針盤です。ここから遥かに離れた地で取れた金属片を用いています。我が国の神器と非常に近い性質を持っており……これが北を示す性質があるらしい」  テハイザ王が掌に載せたそれを覗き込むと、皿状になった円盤の中心に面と平行になる形で細長い針が取り付けられていた。そして円の縁近くに四方の名

          天空の標 第四十二話

          天空の標 第四十一話

          第十三章 真意(ニ) 「貴殿の訪問の申し出を好機ととらえました。私がシレアと友好を強化したいとの旨は大臣以下、諸官にも前から述べている。その私の意向を汲んだ上で、貴殿がいらした際の初めの応対は任せる、と」  ——そう言い渡して自由に泳がせた時に、彼らがどのように行動するか。 「それで殿下の暗殺ですか!?」  ロスが激昂して足を前に踏み出す。即座にカエルムがその前に腕を伸ばして制止した。 「やめろロス。一応、こちらが自由に動けるように保険をかけては下さったのだから」  確認の

          天空の標 第四十一話

          天空の標 第四十話

          第十三章 真意(一)  その人物は、窓の外に広がる大海を背に三人を真正面から出迎えた。長い碧地の装束が床に広がり、絨毯の紺碧色を飾る。布に精緻に織り込まれた玉虫色の飾り糸が裾に波形を描き、散りばめられるように縫い取られた金銀の粒の一部が、帆船と南十字星を描きだす。テハイザ国の紋章である。  男性としてはあまり背のある方ではないが、真っ直ぐに顔を上げた立ち姿は体格以上の存在感を覚えさせる。部屋に射し入る陽光を受けて目映く輝く髪は、太陽のごとき黄金色。  クルックスが片膝を折り

          天空の標 第四十話

          天空の標 第三十九話

          第十二章 抜刀(三)  通路はなだらかな弧を作りながら下方へ向かって伸びていた。向かっていく先は城の最南端。白亜の石灰石でできた壁に窓はなく、他の廊下に比べるとひんやりとした空気に満ちている。絨毯や布製の装飾が皆無のせいか、靴音が四方の壁にぶつかって反響を繰り返し、立体的な響きとなって狭い空間に広がる。 「先ほどは助けて頂いてありがとうございます」  クルックスは落ち着きを取り戻したようだった。走りながらロスに顔を向け小さく頭を下げる。 「礼を言うのはこっちの方です。逃げ場

          天空の標 第三十九話