リーフの羽 4枚目

「みんなが戦争について思うことを発表しましょう」

次の日、学校へ行くと社会の授業が私を
待っていた。

「戦争は、とても悲しいことです。同じ悲劇を繰り返してはなりません」

「素晴らしい答えだわ。では、次の人」

ありふれたことを答える生徒と、それを褒めちぎる先生に、大きな疑問を抱いた。
 
「なぜ戦争が起きたかについても、考える必要があると思うわ」

手を挙げて、思うことを口にする。
すると先生は、くるりと向きを変え、私に背を向けた。

「ヨソもんが、また訳の分からんことを言っとるで」

「黙って聞いちょれ。何されるか分からんぞ」

冷たい声があたりに飛び交う。
大粒の雫が降り注ぐ崖の底から、必ず這い上がろうという、強い気持ちで言葉を続けた。

「天皇制度は、なくした方が良いと思うの。天皇陛下バンザイと言って、天皇を崇めたのが、戦争の原因の一つでしょう」

「・・・この世に特別な人間なんて、おりわせんからのう」

闇に怯えながらも、光に導かれて勇気ある一歩を踏み出す。
どこかで見たことのある光景だった。

「畑中くん、いまなんて?」

「この子の言うことも一理あると、わしは思うで」

昨日会ったおじいさんの孫かもしれない。
そんな予感が脳裏を過った。

「なぜ戦争は起きたと思う?みんなの意見も知りたいわ」

大きな声で、クラスメイト達に問いただす。
崖の底から這い上がる小さな鯉(こい)は、強くてたくましい龍へと変貌していった。










 

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