未智起(michiki)

~どう、抱きしめる?~ 日々変化し続ける文化、価値観、ジブン。 千差万別十人十色なそ…

未智起(michiki)

~どう、抱きしめる?~ 日々変化し続ける文化、価値観、ジブン。 千差万別十人十色なそれぞれのストーリーを、どう色付けて、どう抱きしめて進んでいこう。 そんな毎日の想いを、感性と理性での中でさまざまな視点から綴ります。

最近の記事

泣く。そして、前を向け。

ー彼女は口を開けて泣いていた。 (なにが悪い) (なにが悪い) (なにが必要か。) 彼女は一人部屋の中で両手で顔を覆い 両目から少しずつ、少しずつ 涙を流していた。 (なにが悪い。) 彼女は責める対象を探していた。 ただ、どこかで気づいている。 (責めたいわけじゃない。) 彼女は考えていた。 何を変えるか。相手か、自身か、環境か。 高校の女性教師が昨日言っていた。 「他人は変えられません。また、変えようとするべきでもありません。  変えるのは、自

    • スピード

      ー赤か橙か。やさしくふっくらとした女性を思わせるその花の名前を、彼女は知らない。 冬の寒い空気に包まれながら、ぼうっと歩き空を見上げていた彼女の目に、一つの花が映った。 花の先端が内側へくるりと曲がり、まあるくまあるく折り重なるそのふくよかな外形が、彼女を引き付けた。 花の中央にはきれいな黄色が美しく集まっている。そこに吸い寄せられる蝶や蜜蜂を想像し、花を見つめる彼女のこころを一層甘く膨らませた。 周囲には誰もいない。彼女は一人で歩いている。 湖を囲むその歩道は、周

      • 動かない視線

        ー久しぶりの外出で、彼女は多くの人々の前を通り過ぎた。 (ヒールなんて履かない。) (人が好むリップなんて塗らない。) (貴方達の好みになんて、ならない。) 彼女は険しくも涼しい顔をして大理石の床の上を歩いていた。 周囲は煌びやかなアクセサリーに、すれ違うたびに混じるパヒューム、女性らしいと表現されがちな似通った服装。定番の、ハイヒール。 まるで装飾された街の中のパーツの一部の様な、人の集団。 彼女の踵は僅か1cmの高さでその街を横切る。 沈んだ光沢の、黒い牛

        • 波打つ視線

          ー僕は彼女を目の前にすると、視線をどうしたら良いのかわからなくなってしまう。 僕にとっての、特別。 僕たちは、世の中がまだ慌ただしい混乱と非現実的楽観の渦を流動させ始めた、今までにない初めての夏の時期に、出会った。 「肌が、正直なの。」 彼女は白く、触れたくなるほど柔らかそうな 僕が求める女性らしい肌の一つを持っていた。 ー肌が正直ー この言葉が何を示しているのか理解しないまま、僕は彼女の頬に触れた。 日々の惨たらしい仕事人生の中で、ふと僕の前に現れた彼女は、

        泣く。そして、前を向け。

          彼女が涙する理由

          ー彼女が泣いている。  いや、涙を浮かべている。 お気に入りの重厚感を携えた木製の階段を一段一段上っていくと、彼女は冷え切った空気の中で腕を組み 階段の手すり部分にもたれながら腕の上に顔をのせ くりっとした両目を、涙ぐませている。 空は青い。快晴だ。 空の青は薄い、しかし儚さは無い。 さわやかな青の中に、白く生き生きとした大きめの雲が、晴れやかな様子で泳いでいる。 そんな美しい空をまっすぐ見つめながら 何故彼女は涙ぐんでいる? 158cmの小柄な身長に

          彼女が涙する理由

          CASE15:少年と青年

          (僕は君が好きだ。) 机の心地よい香りに包まれつつ、伏せた顔を少しだけ右へ傾け、前に居る彼女へ視線を向ける。 小柄でショートボブの彼女。 14歳の僕よりも少しだけ背の低い彼女。 小顔で目はアーモンドで白い肌で 笑った顔が、誰よりもかわいい彼女。 僕だけの彼女。 僕は彼女を誰よりも愛していると自負している。 彼女のかわいさを一番愛せるのは、僕だ。断言できる。 あたかも自分の恋人に対する愛のささやきの様に想いを馳せている彼は、ずっと彼女に片思いをしていた。 接

          CASE15:少年と青年

          CASE14:Heaven

          ーやや強めの風に、緑色のカーテンが軽やかに跳ねるー 女A「なんだか風強くなってきてない?やだぁ、もう。」 女B「なんかさー、最近多いよね。突然の天候変化。早くかえりたーい。」 窓際の50代女性のペアが口早に話しながら仕事を放棄し雑談に花を咲かせている。 (風が吹いていて…私の元には何が吹く。) 彼女は風が滑り込んできた窓の内枠から、遠くの空を見つめてみる。 「purururururu」 コールが鳴り響く。 女1「はい、株式会社◎◎でございます。」 つまらない

          CASE13:7

          今日は7の数字によく気が付く。 (なんだろう、なんか当たるのかな。宝くじ買ってないのにな。) 男はそんなことを考えつつ、コーヒー店でカフェオレを買い、電車に乗るまでの道すがら足早なスピードに合わせて喉に通す。 (残業なくなったし、いちいち出費が大きく見えるなぁ。) 地方都市の最も大きい駅の道端で、誰かがメガホン越しに大きく訴えを叫んでいる。但し、淡々と。 「みなさん、このままではいけません!変えましょう、みんなで!!」 そんなことを片方の耳で少しだけ聞きながら、男

          CASE12:花のうつつ

          数日前、僕の目の前に現れた彼女はとてもキュートだった。 雰囲気もさながら、マスクをはずした時のやわらかでさわやかな印象が離れない。 殺伐としている僕の課は、特に華もなにもない。 毎日大体決まりきった仕事にヒステリーな上司。 それを受け流すだけのチームメンバー。 自身もその中で波なく過ごす一人。 毎日が薄く、うすーく 過ぎていっていた。 「おはようございます。本日からお世話になります。よろしくお願いします。」 彼女は月曜の重ったるい朝に、突然やってきた。 誰

          CASE12:花のうつつ

          CASE11:天井と空

          彼女は天井と空の区別が曖昧になりながら、上を向いていた。 (もう気にしても仕方ない。会うことはない。) 何年かぶりに興味を示せた異性との関係が途絶えてから、時々思い出してしまう。 しかしもう会うことはない。 心に穴が空いたとまでは感じないが、空虚ではある。 そう、空虚。 猫でもいれば、ベッドで横になりながらひたすら撫でていることだろう。 彼のひとつひとつの表情が、彼女の記憶の中で好みの色形で着色されていく。 窓の外の木をに目を向けた。 (何故、緑の葉がついて

          CASE11:天井と空

          Essay:選択と採用と幸福

          こんばんは。今日はとても冷えましたね。 気持ち的に負担の多い日々が続いている方がとても多いかと思います。 一つ一つの重みのある事柄は、その時その時でしっかりとしまう場所を決め、新しい毎日を迎えていきたいですね。 さて。 「リスタートを切るのであれば、なるべく早く切らせろ。」 よく耳にする言葉です。 昇り詰めるタイプの方がある程度のところまで行くと、さまざまな自論や持論を打ち出して生きているのだなぁと感じる昨今。 その中で私自身が自身に採用(受容)させたmotto

          Essay:選択と採用と幸福

          CASE10:明日という一日

          ー彼女は黙読をしていた。ー 新たな仕事で使用する資料、計40p。 たかだか40pを読み上げるのに、2hも使ってしまった。 年齢には勝てないという言葉に振り回されたくないが、取り敢えず年齢のせいにしておこう。脳がスピードを緩めることのメリットも、きっと多いはずだ。 彼女はここ最近、ポジティブ面に視点を向け直す癖が戻ってきている。 元来の彼女が戻ってきたのである。 「なんでもやってみればいいんだよ。」 脳に休憩を。とSNSを開いては一人で呟く。 やらずに後悔、やら

          CASE10:明日という一日

          Essay:食べること 太ること 美しくなること。

          ふと、頭にさくらんぼが浮かんだ。 クリームソーダの上にのっている、なんとも言えない派手なピンク色とは違う、とれたてで皮に張りがありつややかに光を反射している、それ。ピンク色というよりは、赤と黄色のグラデーション。 何故突然さくらんぼを思い出したのか…フレッシュな気分にでもなりたかったのだろうか。 ブドウパンやお惣菜を頬張りながら、まっっっっっったく関係のないさくらんぼが、はっ!と頭に浮かんだ違和感は、アイテムのかわいらしさと同時に少々の疑問符を頭に張り付けた。 フレッ

          Essay:食べること 太ること 美しくなること。

          Essay:20201016 精神と健康と病

          こんばんは、晩は。と言うよりは、もう夜。時期に真夜中。 さてはて。本日は唐突にエッセイです。 私は約30歳、職業人として専門分野を磨きつつ…というよりは…散々にしごかれつつ、自分なりに「これじゃいけない。」と感じ考え行動しながら生きてきた現状ニートの女性です。 特技と言えるものは特にありませんが、好奇心旺盛で社交的らしいです。そして水がない砂漠地帯でも花が咲くほどのタフな側面と、逆の側面が混ざりこんでいる生物らしい。です。 趣味や興味は、英語や美術芸術や産業、ついでに

          Essay:20201016 精神と健康と病

          CASE9:乾いた風にのせて

          ーあたたかな心と共に歩く彼女と、乾いた秋の風が美しいー 彼女は一人で歩いていた。 田舎ではあるが、人口がそこそこでそれなりに住みよいその街を。 いつも訪れる公園には、100m程の銀杏並木がまっすぐに続いている。 彼女の足元から延びる葉の煌めきは、乾いてひんやりしている空気を伝って空へ拡がっていくいくようだ。 今、彼女のこころは晴れやかだ。 足元は数年前に自分へのご褒美と称して購入した、社会人になってから初めての値の張るブーツがお伴している。…値が張ると言っても、セ

          CASE9:乾いた風にのせて

          CASE8:彼女の3分

          今日は何を思いつこう。 そんな彼女は3分でなにかを綴ることにした。 黄色と茶色ー金木犀 金木犀の甘い香りーフルーツの成熟 成熟したー昔から特別な君 君の笑顔ー笑顔と君と私 私ー君の距離はどれくらい 手が繋げたら。 冷えてきた秋の空に君を想う。

          CASE8:彼女の3分