見出し画像

泣く。そして、前を向け。

ー彼女は口を開けて泣いていた。


(なにが悪い)

(なにが悪い)

(なにが必要か。)

彼女は一人部屋の中で両手で顔を覆い

両目から少しずつ、少しずつ

涙を流していた。

(なにが悪い。)

彼女は責める対象を探していた。

ただ、どこかで気づいている。

(責めたいわけじゃない。)

彼女は考えていた。

何を変えるか。相手か、自身か、環境か。

高校の女性教師が昨日言っていた。

「他人は変えられません。また、変えようとするべきでもありません。

 変えるのは、自分か環境です。

 他人は変えられません。」

頭にこびりついているその言葉が、泣きながら歯を食いしばる彼女には必要に感じられた。

(他人は変えられません。また、変えようとするべきでもありません。)

彼女は頭の中で唱える。

(変えるのは、自分か環境です。)


(変わるのは、ワタシです。)


顔を洗った彼女は、スニーカーを履き、軽く走り出す。

(変わるのは、ワタシ。)


気付くと、寒空の中にもう蕾を開き始めた桜の色がちらほら見える。

(まだ2月だ。早いな。)

そして彼女は考える。

(早いのかな。)

桜の開花を早いと感じた自身に視線を向かわせる。

(少しずつだな。)


彼女はきっと、自分の足で進んでいける。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?