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CASE11:天井と空

彼女は天井と空の区別が曖昧になりながら、上を向いていた。

(もう気にしても仕方ない。会うことはない。)

何年かぶりに興味を示せた異性との関係が途絶えてから、時々思い出してしまう。

しかしもう会うことはない。


心に穴が空いたとまでは感じないが、空虚ではある。

そう、空虚。


猫でもいれば、ベッドで横になりながらひたすら撫でていることだろう。


彼のひとつひとつの表情が、彼女の記憶の中で好みの色形で着色されていく。


窓の外の木をに目を向けた。


(何故、緑の葉がついているんだ。)


彼女は珍しく、愛しがっていた緑色の葉たちを、嫌悪した。

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