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CASE13:7

今日は7の数字によく気が付く。

(なんだろう、なんか当たるのかな。宝くじ買ってないのにな。)

男はそんなことを考えつつ、コーヒー店でカフェオレを買い、電車に乗るまでの道すがら足早なスピードに合わせて喉に通す。

(残業なくなったし、いちいち出費が大きく見えるなぁ。)

地方都市の最も大きい駅の道端で、誰かがメガホン越しに大きく訴えを叫んでいる。但し、淡々と。

「みなさん、このままではいけません!変えましょう、みんなで!!」

そんなことを片方の耳で少しだけ聞きながら、男は思う。

(税金のこととかかな。…やっぱり宝くじでも買おうかな。)

物欲が少なく、計画性の高いその男はお金に困っているわけではないが、毎日ひたすら頭を使いながら時間を効率的に使う男にとって、今の収支はなんだか気になるものであった。

丁度電車が遅れている。

(20分も空きが出たのであれば、まぁいいだろう。)

男は最寄りのチャンスセンターに寄り道した。


「毎年大きなあたりが引けるのは、ここ!」

恰幅の良い中年の売り子さんが声を挙げて集客している。

このご時世だからか、本当に当たりが出やすいのか、購入者は多い。

男は中途半端に4枚買ってみた。

(7枚にしときゃよかったかな。まぁいいか。)

雑にポケットにその束をしまい、ホームへと向かう。


ーそこから1か月以上経ったある日ー

(なんだ、今日はよく7の文字が目に入るな。)

男はそんなことを考えつつ、コーヒー店でカフェオレを買い、電車に乗るまでの道すがら足早なスピードに合わせて喉に通す。

(そういえばポッケの中につっこんだままだ。)

あの日以降暫く袖を通していなかったジャケットをたまたま来ていた男は、ホームでおもむろに手を突っ込んで、その束を引き出す。

携帯で雑に検索する。

(当たんねーよなぁ。)

ごみ箱を探そうかと顔を横に向けているとき、向かいのホームの風が強く吹いてきた。

表の一枚が向こうのホームに向かって吸い込まれていく。

そして他のちり紙と一緒に、ホームの下へと吸い込まれていった。

吸い込まれていったそのホームに、一人の女性が立っていた。

(当たりだ。)

数か月前に連絡が途絶えてしまった彼女が、そこに、居た。

(…当たりだよな?)

男はじっと向こうへ視線を向けてしまう。

こちら側のホームに電車到着間際のアナウンスが響く。

再度大きな風が吹く。今度はこちら側からの風だ。


(あたりだよ。)

一秒にも満たない長さで、彼女の視線が男と重なり合った。

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