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南インド寝台列車の旅とインドの教育事情

まさか年に2度もインドへ行くとは思ってなかった。チケットのブッキングで色々あったが、まぁ終わり良ければってことで、せっかくの機会を活かすことにした。今回は初めて乗ったインドの寝台列車とイベント参加で訪れたカルールという地方都市で訪れた学校でのお話。

南インド内陸部を横断するMangalore Express

渡航1カ月前くらいに、チェンナイに私をお招きくださったMさんと滞在中のスケジュールを決めていた時、「ちょうど香織さんがこっちに来るタイミングで、カルールという街でジャパンフェスのようなイベントがあるとjapan Foundation South Indiaから連絡があり、ご参加いただけないかってお話が来たんだけどどうかしら?」とのこと。
カルール? ってどこですか?
調べてみたけど、出てくる情報は
「テキスタイルの街」
「ヒンズー教の大きな寺院がある」
「アメジストが有名」
そして滞在予定のチェンナイからは電車で7時間半くらい。車で行ってもだいたい同じくらいの時間がかかる。 車と電車が同じ時間かかるの? まぁいいか。

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とりあえず全くピンとこないまま、「誰かと一緒だったらインドで電車の旅にトライしてみたい」という好奇心と、現地でのチケットはご用意いただけるということだったので「行きます」と返事をした。
Mさんからは「インドのイベントって、とにかく人だけはたくさん来るのよ。 その分、紛失や破損、スケジュール通りに事が運ばないっていうのは当たり前に起こると思ってもらった方がいいから。」とアドバイスいただき、いつも以上に細心の注意を払って準備した。 

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私たちが乗ったMangalore Expressは東海岸のチェンナイを出発し、内陸のコインバトールを通り、西海岸のマンガロールまでの道のりを繋ぐ長距離列車。発車時間帯によってルートが変わるが、始発から終着まで乗ると、だいたい16時間以上かかる。エクスプレスとは名ばかりの、のんびりした気の長い道のりだ。

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駅構内は深夜でも混雑! ネタ満載のインドの寝台列車

さて、チェンナイのEgmore駅をMangalore expresses でいざ出発!
23時とはいえ駅は長距離列車の乗り入れでラッシュタイム。前を行くMさんの背中を見失わないように大きなスーツケースを転がしながら、ホームをずいぶん端まで歩いた。

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目的地のカルールまでは電車でも車でも7時間半と言ったが、その原因はこの連結の長すぎる列車のせいなのでは?と思うほど長い。

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日本では電車が来たら、とりあえず列車に乗り込んだ後で車両から車両へ移動する事に何の疑問も持たないが、インドでは車両ごとに等級があり上級車両と下級車両の行き来はできない。だから自分が乗る予定の車両、または同じ等級の車両の乗り口まで行って乗らないと、中で繋がってないので大変な事になる。
駅に改札はなく、「○番線に○○行きが到着します。」というようなアナウンスや発車のベルもない。自分たちで確認して乗り、中でスタッフにチケットを見せる。気が付くといつの間にか列車は走り出していた。

【インドの寝台列車プラン】

* 1AC=1等車(エアコン付き個室。2段ベッドで2人部屋か4人部屋。寝具カバー付。)
* 2AC=2等車(エアコン付き2段ベッド。仕切りはカーテン。寝具カバー付。)
* 3AC(エアコン付き3段ベッド。体を起こすと背筋が真っ直ぐ伸びないぐらい天井が低い。)
* スリーパー(エアコンなし3段ベッド。知らない人が勝手にベッドに上がり込んできたり、寝てるのに物売りに起こされるらしい。バックパッカーはけっこう使う人が多い。)
* ジェネラル(エアコンなし座席。外から見た感じ、車内灯も無さそう。最安値にして最強にカオス。心配とストレス全開。怖くて寝れないらしい。日本人はほとんど乗らないだろう。お金で買える安心をケチってはいけない。)

今回は2AC車に乗車。うっかり寝過ごしてしまったら個室の場合、中から鍵をかけているので起こしようがない。なのでもしもの時のために個室ではなくカーテンのベッドをチョイスしてくれたそうだ。予約したシートへ行くと1ベッドごとにカーテンもあり、シーツも洗い立てが用意されていてまだ温かい。ベットは狭いが小さい私には全く問題なし。読書灯もコンセントもある。トイレも水洗だし、ちゃんと掃除がしてあり許せる範囲。

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23時半頃出発したので早々に皆さん就寝。
乗ってみて分かったことだが、発車のお知らせがないということは、到着のお知らせもないということ。到着時間とgoogle mapで現在地を確認しながら目的地に着いたら降りる。電車はまだ出発したばかりで降りるのは7時間も後のことなのに、なんだかソワソワしてなかなか寝付けない。それでも細い2段ベッドで寝返りを繰り返しながらウトウトしているうちに眠っていた。目が覚めるともう外は明るかった。

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窓を覗くと線路に座って喋っている人たちが見えた。時間調整で止まっていたようだ。それにしても外の天気がよく分からないぐらい窓が汚い…。
車内に食堂車や自動販売機などはないので、駅に停まるとチャイ売りやコーヒー売りがやってくる。いわゆる駅弁なんかも売りに来るようだ。何かのTV番組で見たような光景にワクワクしながら電車の旅を楽しんだ。

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ちなみにコーヒーもチャイもエスプレッソを飲むような小さなカップ1杯が10ルピー。¥30弱だ。

カルールのホテル

カルール駅に到着すると現地のオーガナイザーとご一家が出迎えてくれ、ホテルまで送ってくれた。

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宿泊先はどんなホテルか心配していたが、チェンナイにもあるチェーンのビジネスホテルで安心した。シャワーの水圧も良く、なかなか快適。

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ちなみにホテルのレストランでは、ベジタリアンメニューとノンベジメニューの両方があった。カルールはチェンナイよりもさらに辛味が強い料理が多いそうだ。

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滞在中、別のレストランにも行き、ミールスを食べたが「チェンナイよりも辛いね」とインド人も言っていた。

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辛いものが苦手な私は泣きながら食べた。店の人が気を利かしてヨーグルトやレモネードを持ってきてくれたが、私にとってはそういうレベルではなかった。でも美味しくてけっこう食べてしまった。胃が熱いという初めての体験。インド料理は好きで、自宅でもインドカレーを作るほどなので、本場の料理を思いっきり食べられないのはとても損した気分だった。もっと辛さに強くなりたい。

インドの私立学校の教育レベルに驚愕

さて、ここからはインドの学校教育の話。イベントのオーガナイザーは学校経営者の方で、今回は私たちをSri SankaraVidyalaaという私立学校に案内してくださった。海外で学校を見学させてもらう機会もなかなかないので、私も同行させてもらった。
この日はちょうど生徒が成果発表会をしているので見てほしいと案内され、生徒の作品が集められた展示室へ。 中学生くらいの子たちだった。そこで生徒たちのプレゼン力の高さに驚いた。展示物の前を通ると「Excuse me madam 」と生徒から声をかけられ足を止める。自分たちの作品や研究発表の成果のプレゼンが止まらない。 

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原稿を読むわけでもなく、自分の考えや研究の結果、展示作品の特徴などを自分の言葉で積極的に説明する。今のこの子達のプレゼンレベルなら日本で営業マンとして十分やっていけるんじゃないか?と思いながら、生徒たちの熱心な話に耳を傾けた。この辺りの地域もチェンナイと同じくタミル語を話す。しかし授業は英語。もちろん私たちへのプレゼンも英語。
日本の子供たちだったら、こんなにもちゃんと自分の意見を見ず知らずの外国人の大人に伝えらえるだろうか。しかも第二言語で。

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学校の規模からすると展示室にいる子たちは本当に一握りの成績優秀者だろう。頭でっかちで知識ばかりではない。実践力がある。

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たしか前にMさんから聞いた話だが、インドでは日本の教育制度とは違うため、就学してから初めての大きな試験は10年生修了共通試験というらしい。その試験に合格した者のみが上級中等学校に進み、その後大学に進学できるチャンスを得る。全国一斉のセンター試験のようなものなので人生を左右する。受験生の両親は子供の試験の1〜2週間前から会社を休み、身の回りの世話や健康管理に専念するなんて話も当たり前なんだとか。それって過保護過ぎない? とも思ったが、何しろインドは人口が多い。ボーッとしているといろんなものを取りこぼす。取りこぼした人に手を差し伸べてはくれない。だから失敗は許されない。その一回の試験でその後の人生が決まるとなれば、過保護とか言っている場合ではないのだ。そんなわけでインドでは教育熱心な両親も多く、小さい頃から常に競争社会で揉まれている。ともあれ発表会は「こういう子達が世界で活躍するんだろうな」と容易に想像できるクオリティの高さだった。

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確かにインドはカーストの名残もあり、格差社会が色濃く残っている。外を歩けば「それを仕事として生活していくのはとてもじゃないけど心もとない」というような人たちが路端で様々なものを売っている。それは全く珍しいことではなく、けっこうどの街にもいる。大都市へ行けば行くほど増える。つまりそういう人生と隣り合わせだということを子供達もよく知っている。だから親が厳しく「勉強しなさい」と言う意味を理解しているようだ。そして自らの成果を主張し、認めてもらう努力を怠らない。気が抜けなくて厳しい環境だとは思うが、身につけておいて損はないスキルだろう。
「インドはIT系が強い」という印象があるが、実際インド教育の特徴として、数学教育を重視している。小学生でも20×20までの掛け算の暗記や、その法則の理解なども徹底していて、理系脳育成レベルが日本とは桁違い。そして国策としてIT関係の大学や学部が増設されている。先に述べたような子供達がさらにふるいにかけられて大学へ進学するのであれば、ますます研ぎ澄まされたエリート達が生き残っていくことになる。

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今回見学させてもらった私立学校の教育レベルの高さは素晴らしかった。というか「中学生でもうすでにこのレベルなのか」と圧倒された。私のようなフワフワした人間は生き残れる気がしない…。 

旅で味わうカルチャーショックとはまた違うタイプのギャップが衝撃的だったので、水引とは全く関係無い話だけど留めておきたくて記した。

さて、次回はカルールでのジャパンフェスの話。 お楽しみに!


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