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国際情勢:プーチン大統領について④

 ここで急に、話の流れを妨げる形となり、申し訳ないが、速報扱いという事で、以下の動画を紹介する。(④は4.189字)
 
 Paix en Ukraine : Zelensky veut négocier urgemment
 ウクライナ和平:ゼレンスキーは早急な交渉を望んでいる

 10:38  216,349 回視聴 2024/07/02 LCI

 Le président ukrainien Volodymyr Zelensky a déclaré qu'il travaillait sur un "plan global" concernant la manière dont Kiev envisage la fin de la guerre avec la Russie.
 
 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、キエフがロシアとの戦争をどのように終わらせるかについて「包括的な計画」に取り組んでいると述べた。(拙訳)
 
 余程、戦況が悪いのだろう。ウクライナの大統領が、白旗を上げたがっているように見える。このまま、一気に交渉のテーブルに就いて、和平交渉に入る流れになるとよいのだが、ロシア側の反応はまだである。
 
 全て失敗しているが、和平交渉は、これまで何度か、行われている。

 2022/04/07からのそれが一番重要だったと思うが、この時は、当時イギリスの首相だったジョンソンによって、西側が反攻作戦を全力で支援するからと、ウクライナの大統領に言って、和平交渉が流れてしまった。

 この時の「プーチンは戦争犯罪人だから」というジョンソンの台詞が、全世界のメディアに流れて広まり、戦争続行の雰囲気が醸成されて、和平交渉のテーブルは遠退いた。そしてウクライナによる反撃が始まる。

 だが2023年の後半までに、ウクライナの反攻作戦は失敗に終わった事が、全世界に露呈した。
 
 今年の夏から、西側のF-16戦闘機が供与されて、ウクライナ東部の制空権を取り返す話が出ているが、それよりも前に戦線がもたず、フランスのマクロンの出る幕もなく停戦、そして和平交渉のプロセスに入るなら、これ以上良い事はない。欧州大戦の危機は遠ざかる。
 
 だが西側は、ロシアを弱らせて、ロシアの膨大な資源を得たいという狙いがあるから、そんな簡単に諦めたりしないだろう。これまで先行投資した軍備をどうするのか?という話もある。これだけ西側の支援を受けて、ウクライナ一国で、勝手に降参して、ロシアと和平交渉に入る事はできないだろう。
 
 最悪、西側はウクライナの大統領を変えてでも、継続するつもりではないか?
 
 ただロシア・ウクライナの当事者同士で話し合う事は、止められないから、和平交渉はやった方がいい。
 
 どれだけ、西側が邪魔しても、戦争当事者同士が、戦闘をやめれば、戦争は遠退く。
 
 ロシア側の反応、回答が気になる処である。戦争の早期終結を願うばかりである。

 話をプーチンのインタビューに戻す。

NATOの東方拡大について

 プーチン大統領
 「NATOは東方には拡大しないというのが合衆国の約束でした。だが拡大は5回起こりました。5回の拡大の波がありました。私たちはそれをすべて容認しました。私たちは彼らを説得しようとしていました。やめてくれと。私たちは今、あなた方と同じようにブルジョアである。我々は市場経済であり、共産党の力はない。交渉しようと。」

 President Putin
 “ I'm talking about the United States the promise was that NATO would not expand Eastward, but it happened five times. There were five waves of expansion. We tolerated all that we were trying to persuade them. We were saying please don't we are as Bourgeois now as you are we are market economy and there is no Communist Party power. Let's negotiate.”

 1989年にベルリンの壁が崩壊した後、ソ連のゴルバチョフ書記長とアメリカのブッシュ大統領で話し合い、口頭で、NATOは東方に拡大しないと約束したらしい。なぜ文章に残さなかったのか不明だが、流れ的にワルシャワ条約機構軍が解体される事も決まっていたので、それと交換条件で、NATOも存在意義がなくなると思ったのか?

 2022年8月に、ゴルバチョフは亡くなったが、最期までずっと「西側は約束を破った」と言っていた。ロシア・ウクライナ戦争は2022年2月に始まっているから、彼も半年くらい、戦争の経過は見ている。どう認識していたのか、分からないが、これが第三次世界大戦の火種になるなら、西側との口約束を後悔していたかもしれない。
 
 西と東の政治家が、個人的な信義で、重要な約束を取り交わす事はよい。だが後で代替わりして、トラブルになるなら、文章を残すべきだっただろう。どういう話をしていたのか不明だが、ワルシャワ条約機構軍がなくなるなら、NATOも不要という議論が、当時世間にもあった事は、テレビや新聞記事で見ている。
 
 冷戦が終結したのだから、NATOもワルシャワ条約機構も必要ない。だからNATOは東方に拡大しないのは、当然の事なので、わざわざ文章に残すまでもないというのが、当時の流れだろうか?だがこれがそうならず、ロシア・ウクライナ戦争にまで繋がっているので、ロシアの政治家が甘かったと言うべきだろう。
 
 だがもしゴルバチョフがいなかったら、第三次世界大戦はもっと早くに起きていただろう。彼がいなかった場合、恐らく1980年代に第三次世界大戦は起きていただろう。今思い返しても、冷戦当時の緊張感は恐ろしいものがあった。これは一例に過ぎないが、1983/9/1の大韓航空機撃墜事件を、子供ながらにも、鮮明に覚えている。
 
 周りの大人に尋ねても、誰も答えられなかったので、自分で夜テレビを点けて、何時間も報道を見ていた。小学生ではあったが、民間航空機が空で迷子になって、ソ連の戦闘機に撃墜されたという事は理解していた。なぜ近くに空港に不時着させず、撃墜したのか、その考えが分からずとも、ソ連は恐ろしい国だと心底感じた。
 
 当時のあの流れ、あの雰囲気であれば、第三次世界大戦は近いという感覚はあった。原爆が落ちて、まだ40年も経過していなかったせいか、年配の人には、核戦争に対する明確なイメージがあり、恐怖していた。学校で、職場で、米ソ開戦、第三次世界大戦を、念頭に置いたような大人たちの会話を、時々聞いていた。
 
 だが1985年に、ゴルバチョフがソビエト共産党書記長の座に就任してから、世界は大きく変わった。彼のペレストロイカは、必然的な結果として、ソ連崩壊を招いた。結果、危機は未然に回避された。ロシア人には、ソ連崩壊は自国が衰退したように感じられたせいか、酷くゴルバチョフを憎んだ。とんでもない。彼は世界を救っている。

 ゴルバチョフがいない世界線では、1980年代後半で、米ソ開戦となり、この星は全面核戦争になっていたとしても、おかしくない。それくらい、彼は世界の運命を変えている。一種の救世主だったと考えている。だが彼は仕事を一つやり残した。ソ連がなくなり、ワルシャワ条約機構軍もなくなっても、NATOは消えなかったのだ。

 ではなぜNATOは消えなかったのか?なぜNATOは解体されなかったのか?
それは必要か、不必要かで、語れる代物ではなかったからだ。

 NATOとは、ロシアに対する恐怖心・憎しみが、形を変えて、地上に現れたものである。
 
 西側が根本的に、ロシアを理解して、心から許さない限り、NATOは存在し続ける。
 
 名前を変えてでも、代替物が存在し続けるだろう。NATOとはそういうものだ。
 
 NATOの根底には、ロシアに対する恐怖・憎しみがずっとある。これは一種の呪いだろう。
 
 あの西側兵器群をつぶさに見て、一つ一つ、性能を頭に入れながら、本当にそう感じた。
 
 だがプーチン大統領は、このNATOという呪いを、退魔師として、解呪しようとしていた。
 
 これは後述するが、プーチンが、本当に取り組んでいた事であり、彼が本気だったと分かる。
 
 話を戻す。
 
 NATOの東方拡大が結局、第三次世界大戦を招くなら、ゴルバチョフの仕事は先送りに過ぎなかったという事になるだろう。これが今、火を噴いている。ロシア・ウクライナ戦争になっている。西側はロシアに対する恐怖と憎しみで結束されている。西側からロシアに対する恐怖と憎しみが消えない限り、火種は燃え続けるだろう。
 
 ゴルバチョフは、それが分かっていなかったと言われても仕方ない。だから甘く見て、口約束で放置した。今、彼の写真を見ても、恐ろしく明るい眼をした男だなと思う。彼の目には、この世界は輝いて見えていたのかも知れない。世界が美しいと本気で言える男の目だと思う。政治家のくせに、政治家の目をしていない。理想家の目だ。
 
 本当に魂が明るくて、中から光り輝いているから、あんな目をしているのだと思う。神の如き瞳だ。
 
 イギリスの首相マーガレット・サッチャーが、西側指導者として、最初にゴルバチョフと会った時、「彼となら一緒に仕事ができます!」と言った事が印象に残っている。さもありなんと思う。ゴルバチョフは女にもてる。
  
 ゴルバチョフが来日した時、女子高生の間で、ゴルビー人形なるものが流行り、今の推しぬい?のような感じで、彼女たちの鞄に、マスコットのようにぶら下がっていた。その人形には、彼のハゲ頭の赤い染みまで再現されていた。「国家最高機密らしいよ?」と彼女たちがそう噂していた事を記憶している。本当に変な男だ。神の使いか?
 
 Urbani, servate uxores ; moechum calvum adducimus!
 都市の人達よ、妻たちを守れ。我々は禿頭の間男を連れ帰った!
 
 ユリウス・カエサルがローマに凱旋将軍として帰還した時、第十軍団の兵士たちから揶揄された言葉だ。
 
 カエサルもハゲ頭で、女にもてた。クーデタで斃された点でも、ゴルバチョフはカエサルと似ている。
 
 歴史上、似たような考え方をして、大国を変えようとしたから、同一の運命を辿ったのだろう。
 
 以下、ローマの運命とロシアの運命の類似性を示しておく。
 (ロシア帝国は、東ローマの継承国でもあるので、ロシア革命で途絶えたものの、現代と繋がりはある)
 
 共和制ローマ→クーデタ→帝政ローマ
 カエサル→ブルータス→アウグストゥス
 
 ソビエト連邦→クーデタ→ロシア連邦共和国
 ゴルバチョフ→エリツィン→プーチン

 
 登場人物もよく似ている。大国の運命が同一のため、役者も同じ役回りを演じたのか?
 あるいは、登場人物が似ていたから、大国の運命も同じ道を辿ったのか?
 
 もしこの三人が転生者であれば、後説になるが、大国の運命が、神の計画によるなら前説になる。
 
 実際は、前説と後説の複雑な絡み合いによって、大国の運命が展開されているのだろう。
 
 勿論、差異もある。カエサルは暗殺されたが、ゴルバチョフは暗殺されなかった。
 
 ブルータスはすぐ退場したが、エリツィンは多少続いた。だが何をしていいか分からなかった。
 
 酒ばかり呑んで、人の家で暴れる。イギリスのエリザベス女王は、無作法者!と怒った。
 
 エリツィンが訪問した時、女王の別荘で、棚のボトルを全部開けてしまった話は有名だ。
 
 クーデタをやった人というのは、クーデタをやるまでが仕事なので、その後の計画は基本ない。
 
 なおゴルバチョフの不始末は、エリツィン大統領ではなく、プーチン大統領の代で回って来た。
 


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