自分を慈しむ心: セルフコンパッションの力

笠原彰　とちぎスポーツ医科学センター協力心理相談員　プロメンタルコーチ　作新学院大学教授

2024年2月10日 10:18

多くの人々が、自己批判の渦中に陥りがちです。「なぜ自分はこれができないのだろう？」や「自分のイライラが嫌い」といった思いに捉われ、自分への否定的な見方によってさらに苦しみを増してしまいます。

心に余裕を持ち、他人に対しては思いやりを示せても、自分自身への同じ慈しみを持つことは意外に難しいものです。失敗やミスを自己責任とみなし、その結果自分を責め続けることで、精神的な負担が増すという悪循環に陥る人も少なくありません。

このような状況を脱するためのキーワードが「セルフコンパッション（自己への思いやり）」です。自己批判を超え、自分自身への理解と優しさを持つことで、完璧主義の圧から解放されることができます。

自己への思いやりを持つことには、多くのメリットがあります。不安やストレス、憂鬱といった感情と上手に付き合えるようになり、挫折や失敗を経験しても、再び立ち上がり目標に向かって努力する力が湧いてきます。

セルフコンパッションは練習によって身につけることが可能で、実践することでその効果を実感することができます。以下に、セルフコンパッションを高めるための練習法を紹介します。

1. 自己への思いやりの育成

困難に直面した時、以下の質問を自問自答してみましょう。

友人だったら、どのように接しますか？
自分自身には、どのように接していますか？
友人と自分への接し方に違いはありますか？
困難な時、何を求めていますか？
どのようにして自分自身に思いやりを示せますか？
自分に必要なものは何ですか？

2. 思いやりの時間を設ける

セルフコンパッションには「優しさ」「共通の人間性」「マインドフルネス」の三つの要素が重要です。ストレスを感じた時には、この三つの要素を含む練習を行いましょう。

今感じていることに注意を向け、深呼吸します。
感じている感情に名前をつけ、それを受け入れます。
自分を慈しむために必要な言葉や行動は何でしょうか？

3. 「共通の人間性」を認識する

困難な状況では「自分だけが苦しんでいる」と感じがちですが、苦悩は人間共通の体験です。自分の体験や感情を批判することなく、「共通の人間性」を認識しましょう。

自分の感情や体験を批判的に見てしまう時、その思考に気づきましょう。
「悩む」「助けを必要とする」「失敗する」は、人間であれば誰にでもあることです。

笠原彰心理学的分析：

自己への思いやりは、自己認識と自己受容のプロセスを通じて、精神的な健康とレジリエンス（回復力）を高める重要な要素です。自己批判のサイクルから抜け出し、自己受容に向けた一歩を踏み出すことで、自己効力感を高め、人生における挑戦に対してより積極的に取り組むことができるようになります。自己への思いやりを実践することは、自己理解を深め、より充実した人生を送るための基礎を築くことにつながります。

笠原彰プロフィール：

作新学院大学メンタルトレーニング教授
とちぎスポーツ医科学センター協力心理相談員
プロメンタルコーチ
自己肯定感養成プロコーチ
ライフバランスアーティスト
健康運動指導士
メンタルヘルスファーストエイダー
メンタルヘルス運動指導員

アスリート、コーチ、指導者、ビジネスマン、音楽家など、人生をより豊かにしたい全ての方の挑戦をサポートします。

専門的な知識を習得したプロメンタルコーチとメンタルアスリートを養成しています。完全個別指導でプロメンタルコーチとアスリートを養成します。

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