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【自作詩集】 霧の森〜記憶を彷徨いながら〜

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オーストラリアに来てからの風景や心情を綴った詩 心から消し去ることのできない想いなどの書き殴りの詩
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#メルボルン

【詩/写真日記】蘇る時間(トキ)と空間

【詩/写真日記】蘇る時間(トキ)と空間

【君の瞳に映るもの】

光が差し込むその部屋に
足を一歩踏み入れた
突然セントポール大聖堂の鐘が鳴り響く

廃屋となった空間に過去が蘇る
移民が集まるこの街
縫製工場で忙しそうに働く女性達
オフィスから鳴り響くタイプの音
乱雑に書類が散らばるメールルーム
電話交換室から聞こえるのは君の声なのか
なぜ外を見つめている
その悲しい表情で何を見ている

置き去りにされた時間
君の瞳が語る儚い世界
過去か

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【詩】南十字星の駅で

【詩】南十字星の駅で

改札を抜けて「またね」と

友達に笑顔で手を振った

冷たい風が吹き抜ける

南十字星の駅で

西に向かう列車を見送った

青かった空が

薄紫に変わりゆく

iPodから流れるEnigmaの曲

この街の躍動が

この街の人々のエナジーが

彷徨い続ける魂にこだまする

メルボルンには本当に「南十字星」という駅が存在する。
英語だとSouthern Cross Station(サザンクロス駅)。

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【詩】矛盾している私

【詩】矛盾している私

都会の洗練された街並みも好き。
自然の香りのする田舎の風景も好き。

小洒落たレストランでの食事も好き。
寂れたチャイニーズレストランでのご飯も好き。

流行の服着て颯爽と歩くのも好き。
ジーンズにブカブカのTシャツ着て歩くのも好き。

目標に向かって努力するのも好き。
なーんにもしないでボーっとしているのも好き。

大きなことに挑戦するのも好き
慎重に考えて行動するのも好き

日本人の慎ましく静

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【詩】 春の目覚め

【詩】 春の目覚め

うっすら開いたまぶた
目に映るのは優しい日の光

まだ眠気が体を包み
ベッドにふんわり溶け込んでいた

扉をノックする 楽しげな風の音色

つま先をそっとベッドの外に出してみる
冷たい空気が 指を突き刺すことはもうない

窓から差込む日差がすでに眩しくて
時計をおもむろに引き寄せた

気だるさを覚えながら
ベッドを抜け出し窓をあければ
首をかしげて私を見つめるトカゲの子
生暖かい春の風が 
芝生の

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【詩】 静かに流れる時の中で

【詩】 静かに流れる時の中で

ふと窓の外に目をやった
春も間近というのに
すぐ目の前の大きな木には
葉の1つもついていない
冬の名残を刻む木を
茜色の空が包んでいる

枝と枝の間に浮かぶのは
赤い屋根が連なる町並み
遥か向こうにかすむ
平和に過ぎた今日に感謝して
静かに時は流れていく

今日もまた
昨日と変わらぬ風景を
穏やかな時間の中で
厳かに見守る大きな木
冬の名残を刻んでも
春のように温かい

静かに流れる時の中で
森羅

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