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これからもずっと、ギターは弾けない。

わたしは現在バンドでベースとボーカルを担当しているのだけど、高校時代は軽音楽部でギターを弾いていた。「実は昔、ギターを弾いていたんですよ~」と自慢できるほど上手くなかったし、今思うとギターよりベースの方が性に合っていた、というくらいの話だったから、周りの人にこの話をしたこともほとんどがない。


高校時代のわたしは、ギターが全然上手くなかった。まずギターをはじめるにあたって、コードを覚えるのが面倒くさくて嫌だった。だから、一つもコードを覚えることなく、いきなりスコアを見てギターを弾きはじめた。
※なお、ベースを弾いている現在もコードは一つも分からないし、「コードを覚えたほうがいいよ」という助言も耳にタコができるくらいいただいたが、いまだに覚えていないし覚える予定もない……。

それから基礎練習的なものも面倒くさくて嫌だった。ギターの教本をもらったこともあったが、最初の数ページを練習したのち、再びその本を開くことはなかった。

アンプの設定について勉強したり覚えるのも嫌だった。正直アンプの設定についてぼんやり分かるようになったのは、大学以降、いや、現在のバンドに加入してからかもしれない…。とりあえず当時は「Gain(ゲイン)」という、音を歪ませるつまみを強めにして音作りをするのが好きだった。


そんな面倒くさがりのわたしが、ギターを弾いていた。スコア通りに弾けるようにはなったけれど、イマイチ『上手い』って感じにはならなかった。指の皮が硬くなるくらい練習していたけれど、フレットをたくさん抑えるコードは苦手だったし、ハンマリングやチョーキングも上手くできなかったし、エフェクターを使うなんてもってのほか!(そもそもアンプのことさえよく分かっていないのに)技術がイマイチなギタリストであった。ただ歪んだギターの音を作るのはちょっとだけ上手くて「ヒガシノ先輩みたいな音が出したい!」とライブのあとに、わたしの使ったアンプを見に来る後輩が一人いた。

こうして高校の3年間、ギターを弾いてみたのだけど、大学のバンドサークルに入ったあとはあっさりとベースに転向することになる。理由はバンドサークルにありがちなパートの人員不足、つまり当時は「ベーシストの人数」が不足していたのだ。そこでわたしは高校時代のバンドメンバーにベースを借りて、何となくベースをはじめる。一応サークルでの初めてのライブではギターも弾いていたのだけど、ベースを弾く方が楽しくなってきたため、何の未練もなくギタリストの名義を捨てることになった。


高校時代、ギターの上手い先輩はいたし、彼らみたいなプレイがしてみたい!という憧れは少なからずあった。ピックの角度を調整したり、押さえ方を工夫したり、いろいろとチャレンジしたがわたしの技術は向上しなかった。これは個人的な考えであまり上手く表現できないのだけど、人は”ある一定のライン”を越すと、「技術」を自分のものにした状態になり、上手くなっていくんだと思う。そのラインを越えた人たちは、弦をカッティングしたりミュートすることを自然に(無意識レベルで)できるし、コードの移動もスムーズだ。つまり常に「余裕」を持って楽器が弾ける状態になる。でも、わたしはどうしてもその”一定のライン”を越えることができなかった。だからいつまでたってもギターが下手くそだった。

おそらく、わたしはベースという楽器との相性が良くて、そのラインを比較的はやく越すことができたのだと思う。わたしは短大生だったのでそのバンドサークルには2年間しか在籍していなかったが、大学2年生からはオリジナル曲に挑戦するほど、無理なくベースが弾けるようになっていた。でもこれがギターだったら、在学中にオリジナル曲に挑戦するなんて、到底無理な話だっただろう。


たまに、わたしが昔ギターを弾いていたと聞いて「じゃあ弾いてみてよ!」「セッションしようよ!」などと言う人がいるが、とんでもない。高校のときでさえ、満足に弾けなかったわたしが、今まともにギターを弾けるわけがないでしょう。

わたしは”かろうじて”ベースは弾けるがギターは弾けない。
それは、これからもずっと。

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