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最強姉妹の末っ子

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『最強姉妹の末っ子』第27話

『最強姉妹の末っ子』第27話

「待ちなさい!」
 私は裸足のまま追いかけようとしたが、回転し過ぎて三半規管が狂ってしまったのだろう、突然視界が歪んだかと思えば、頭の中が揺れた。
「おえ……」
 一気に吐き気が押し寄せてきて、まともに立っている事もできずに、その場で倒れてしまった。
 あぁ、追いかけなきゃいけないのに、気持ち悪くて動けない。
 心臓は高鳴り、耳鳴りも聞こえてきた。
 三ツ頭対策用に作った剣と火のポーションを組み合

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『最強姉妹の末っ子』第25話

『最強姉妹の末っ子』第25話

「私を騙したの? お姉様」
 ムーニーは唖然とした顔でロリンを見ていた。
「違うわ。ムーニー」
 ロリンは首を振った。
「あれは最終手段よ。魔機を停止させ、この国の人達を元に戻して、チャーム王子の居場所を教えてくれたら、何もしない。
 本当よ、私を信じて」
 ロリンはそう言ってムーニーの両手を握った。
 彼女は一気に顔を赤らめて、サッと違う方を向いた。
 しかし、ウーンと唸っているだけでなかなか口

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『最強姉妹の末っ子』第24話

『最強姉妹の末っ子』第24話

 ムーニーの手にボタンの付いた小さな箱を持っていたので、私はすぐに取った。
 縦一列に二つ並んでいて、『拘束・解放』と書かれたボタンと『放電・停止』と書かれたボタンがあった。
 私は両方押した。
 すると、椅子の装置が止まり、ティーロとティーマスを拘束していたものが外れた。
 二人ともほぼ同時に倒れたが、意識はあるようだった。
「グオオオオ!!!」
 主を倒されて怒っているのだろう、三ツ頭のドラゴ

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『最強姉妹の末っ子』第22話

『最強姉妹の末っ子』第22話

 だけど、城内は迷宮だった。
 部屋数も多い上に、工場みたいにガラス窓で中の様子を確認できないから、一つ一つ扉に耳をあてないといけなかった。
 その上、巡回している魔機達の相手をしないといけない。
 一匹でも見逃したらすぐさまムーニーに報告されてしまうので、確実に仕留めて、出来るだけ発見が遅れるように空き部屋に隠したりしながら、彼らを探した。
 階段を見つけたら、上へあがるようにした。
 国の偉い

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『最強姉妹の末っ子』第21話

『最強姉妹の末っ子』第21話

「ところで、メタちゃん。ドレス、ボロボロじゃない?」
 満足するまで私の抱擁をしたロリンが聞いてきた。
 確かに変態生脚……じゃなかった。
 黒い騎士との戦闘で、ドレスが所々破れていた。
「新しいの無いの?」
 私がそう聞くと、ロリンは「ちょっと待ってて……」と二つの丸いものを置いて、リュックの中を漁った。
 待っている間、私はロリンが応援している時に持っていた丸いものを拾った。
 これは一体何な

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『最強姉妹の末っ子』第20話

『最強姉妹の末っ子』第20話

「え、え、うぇ?! な、なんで?!」
 私が目を丸くしていると、黒い騎士は「不審者が地下室に向かうのを見かけたから」とロリンの方を指差して言った。
「ロ〜〜リ〜〜ン〜〜?」
 私が隣にいる姉を睨みつけると、ロリンは『しまった』という顔をした。
「そうだった。ポーションの効果継続中に違うポーションを食べたら、後の方に上書きされるんだった……」
 青ざめた顔でそう言った。
 つまり、先に透明化ポーショ

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『最強姉妹の末っ子』第19話

『最強姉妹の末っ子』第19話

「このっ! 離しなさい! このっ! このっ!」
 私が口でそう叫んだ所で無駄と分かっていたけど、もしかしたら言う事聞いてくれるかなと思い、叫んでみた。
 だけど、予想通り淡い期待だった。
 彼らは私が見えていないかのように無視し、廊下を進んだあと突き当りの階段を降りていった。
 ズシンズシンと揺れる度に、まるで地獄の方に降りているみたいな心地になって、ますます叫んだ。
 段々辺りは暗くなっていき、

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『最強姉妹の末っ子』第11話

『最強姉妹の末っ子』第11話

 まるでサウナにいるかのような室内に、なぜロリンが水着着用を強要させたのか、よく分かった。
 カタカタ揺れているけど、動いているのかな?
 私がキョロキョロ辺りを見渡すと、座席の後ろに窓があった。
 入ってくる時に前の操縦席に気を取られて気づかなかった。
 こんなに暑いのに割れたりしないのは、かなり分厚くしているのだろう。
 だけど、曇ったりはせず外の景色はくっきりと見えた。
 草花が見えたとかと

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『最強姉妹の末っ子』第10話

『最強姉妹の末っ子』第10話

 道標を失った私達は亡霊のように彷徨った。
 いや、真っ直ぐに進んでいるけど、あの装置があるのとないのとでは、心理的な負担が全然違っていた。
 覚悟を決めて転移ポーションを食べようかと話し合ったけれど、やはりムーニーと三ツ頭のドラゴンが気になって、徒歩を選ばざるを得なかった。
 出来れば、戦闘は避けたかったからだ。
 けど、どっちみち探してくるだろうから、奴が次なる手を準備する前に息の根を止めた方

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『最強姉妹の末っ子』第9話

『最強姉妹の末っ子』第9話

 なんて事を思って歩いていると、突然目の前にまた三ツ頭のドラゴンが前に立ち憚った。
 え? なんで居場所がバレたの?
 目をパチクリさせながら振り返ると、私達が歩いてきた道の後ろから魔機達が走ってきていた。
 先頭に狼の魔物がいることを考えると、匂いで私とロリンの居場所を突止めたらしい。
 クソッ、匂いまでは透明化できなかったか。
 私が舌打ちをするご、ムーニーが「末っ子ぉおおおお!!!」と悲痛な

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『最強姉妹の末っ子』第8話

『最強姉妹の末っ子』第8話

 なんか変な旅立ちになってしまったが、兎にも角にも愛しの王子様を助けるため、私とロリンは草原を進んだ。
 春の穏やかな気候だからか、小さくて可愛らしい花達が咲いていた。
 そこら中に咲き乱れているというよりは、赤い花だったらその色限定が集まって群生している感じ。
 まるで一つ一つが独自の街でも出来ているかのようだ。
 青く茂っている草が境界かな?
 彼らはどんな話をしているのだろう。
 きっと隣の

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『最強姉妹の末っ子』第6話

『最強姉妹の末っ子』第6話

「大丈夫? メタちゃん?」
 私の視界には、ロリンや大勢のピニー達に覗きこまれていた。
「へ、平気よ……」
 本当は全ての骨が砕けたと言わんばかりに痛かった。
 爆発と衝撃の耐性は付けられていなかったの?
 私は何度か深呼吸してから起き上がった。
「ふぅ……あれ? 魔機達は?」
 あんなに私達に襲いかかってきた魔物ロボットの姿がどこにもいなかった。
「ムーニーが飛んで行ったから、一匹残らず尻尾を巻

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『最強姉妹の末っ子』第5話

『最強姉妹の末っ子』第5話

「な、なんなのこれ?!」
 私が呆気に取られていると、ムーニーは軽やかな足取りでドラゴンの背中に乗った。
「アハハハッ! こいつは魔機! 魔物をベースにして作られたロボットだ!」
「魔物を……ベース? どういうこと?」
 私が首を傾げていると、ロリンは背負っていたリュックを投げ棄て、「魔物の容姿や身体能力などを参考にして作られたってことよ」と教えてくれた。
 つまり、今目の前にいるドラゴンは本物の

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『最強姉妹の末っ子』第3話

『最強姉妹の末っ子』第3話

 パフェの奥底にあるコーンフレークを食べ終える前に、ロリンは戻ってきた。
「め、メタちゃん……はぁはぁ、ちょっと……付いてきて!」
 ロリンは息せき切って私の腕を掴むと、走り出した。
 私は慌ててコーンフレークを食べ終え、空の容器を通りすがりのピニーに渡した。
 
 一緒に走って連れて来られた場所は、ロリンの研究室だった。
 ここにはビーカーやフラスコなどの実験器具はもちろん、変な臭いのする草や干

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