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最強姉妹の末っ子

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『最強姉妹の末っ子』第14話

『最強姉妹の末っ子』第14話

 人混みを掻き分けて、また路地裏に入っていく。
 奥に進むと、そこら辺に転がっていそうな空き箱が山積みになっていた。
 ティーマスはそれを一個一個丁寧にどかしていた。
 時間短縮のため、私もロリンもティーナも一緒に協力すると、入り口が現れた。
 金庫みたいに小さくて頑丈そうな扉だった。
 ティーマスがドンドンと強めにドアをノックすると、「誰だ」とたくましい声が聞こえた。
「俺だ。ティーマスだ」
 

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『最強姉妹の末っ子』第13話

『最強姉妹の末っ子』第13話

「ぎゃああむぶぶぶぶ!!」
「シーー!!」
 私が悲鳴を上げようとした所、ロリンに無理矢理口をふさがれてしまった。
 そのちょうどに、魔機達が首なしボディの所に集まっていた。
 何かを観察するようにジロジロと見た後、周囲を確認していた。
 どうやら頭を探しているらしい。
 見たくないけど、チラッと女の子の方を確認してみた。
 小麦色の三つ編みをした可愛らしい顔立ちをしていて、ここの国民と同じく口元

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『最強姉妹の末っ子』第12話

『最強姉妹の末っ子』第12話

 あんなに重たそうに背負っていたロリンのリュックがいつの間にか片手で持ち上げられるくらい軽くなっていた。
 チラッと中身を見たが、空の瓶でいっぱいだった。
 はたしてピグマリーオに着くまで持つかどうか不安だ。
 辺りが明るくなったおかげで、周囲の景色を確認する事ができた。
 出発する前は緑豊かな草原だったのが、いつの間にか枯れ木が多くなっていた。
 不毛の地――とでも言うのだろうか、雑草一本すらも

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『最強姉妹の末っ子』第11話

『最強姉妹の末っ子』第11話

 まるでサウナにいるかのような室内に、なぜロリンが水着着用を強要させたのか、よく分かった。
 カタカタ揺れているけど、動いているのかな?
 私がキョロキョロ辺りを見渡すと、座席の後ろに窓があった。
 入ってくる時に前の操縦席に気を取られて気づかなかった。
 こんなに暑いのに割れたりしないのは、かなり分厚くしているのだろう。
 だけど、曇ったりはせず外の景色はくっきりと見えた。
 草花が見えたとかと

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『最強姉妹の末っ子』第10話

『最強姉妹の末っ子』第10話

 道標を失った私達は亡霊のように彷徨った。
 いや、真っ直ぐに進んでいるけど、あの装置があるのとないのとでは、心理的な負担が全然違っていた。
 覚悟を決めて転移ポーションを食べようかと話し合ったけれど、やはりムーニーと三ツ頭のドラゴンが気になって、徒歩を選ばざるを得なかった。
 出来れば、戦闘は避けたかったからだ。
 けど、どっちみち探してくるだろうから、奴が次なる手を準備する前に息の根を止めた方

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『最強姉妹の末っ子』第9話

『最強姉妹の末っ子』第9話

 なんて事を思って歩いていると、突然目の前にまた三ツ頭のドラゴンが前に立ち憚った。
 え? なんで居場所がバレたの?
 目をパチクリさせながら振り返ると、私達が歩いてきた道の後ろから魔機達が走ってきていた。
 先頭に狼の魔物がいることを考えると、匂いで私とロリンの居場所を突止めたらしい。
 クソッ、匂いまでは透明化できなかったか。
 私が舌打ちをするご、ムーニーが「末っ子ぉおおおお!!!」と悲痛な

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『最強姉妹の末っ子』第8話

『最強姉妹の末っ子』第8話

 なんか変な旅立ちになってしまったが、兎にも角にも愛しの王子様を助けるため、私とロリンは草原を進んだ。
 春の穏やかな気候だからか、小さくて可愛らしい花達が咲いていた。
 そこら中に咲き乱れているというよりは、赤い花だったらその色限定が集まって群生している感じ。
 まるで一つ一つが独自の街でも出来ているかのようだ。
 青く茂っている草が境界かな?
 彼らはどんな話をしているのだろう。
 きっと隣の

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『最強姉妹の末っ子』第7話

『最強姉妹の末っ子』第7話

 私は待っている間、旅立つ準備の最終確認をした。
 携帯食料とナイフとお金と着替え。
 鞄は動きやすいポシェットに入れて首から掛ければ……うん、見た目は完全にピクニックに行くような感覚だけど、万が一戦いがおきてもいいように身軽な格好が一番だよね。
 私は満足した様子で頷いたとほぼ同時に「できたー!」とロリンの声が聞こえた。
「何ができたの?」
 私が駆け寄ると、机の上にピニーと同じ三角帽子を被った

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『最強姉妹の末っ子』第6話

『最強姉妹の末っ子』第6話

「大丈夫? メタちゃん?」
 私の視界には、ロリンや大勢のピニー達に覗きこまれていた。
「へ、平気よ……」
 本当は全ての骨が砕けたと言わんばかりに痛かった。
 爆発と衝撃の耐性は付けられていなかったの?
 私は何度か深呼吸してから起き上がった。
「ふぅ……あれ? 魔機達は?」
 あんなに私達に襲いかかってきた魔物ロボットの姿がどこにもいなかった。
「ムーニーが飛んで行ったから、一匹残らず尻尾を巻

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『最強姉妹の末っ子』第5話

『最強姉妹の末っ子』第5話

「な、なんなのこれ?!」
 私が呆気に取られていると、ムーニーは軽やかな足取りでドラゴンの背中に乗った。
「アハハハッ! こいつは魔機! 魔物をベースにして作られたロボットだ!」
「魔物を……ベース? どういうこと?」
 私が首を傾げていると、ロリンは背負っていたリュックを投げ棄て、「魔物の容姿や身体能力などを参考にして作られたってことよ」と教えてくれた。
 つまり、今目の前にいるドラゴンは本物の

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『最強姉妹の末っ子』第4話

『最強姉妹の末っ子』第4話

「なになになに?! 何が起きたの?!」
 ロリンはこの緊急事態に動揺していた。
 そこへピニーが球体を持って来た。
 彼女はそれを奪うように取り、出っ張りを押した。
 また幻が姿を現した。
 そこには我が城の廊下や食堂が浮かび上がってきたが、ピニー以外に見慣れないロボットがいた。
 いや、ロボットなの?
 オークやスライム、ゴーレムのような見た目をしているけど、全身は真っ白で光沢感があり、口から炎

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『最強姉妹の末っ子』第3話

『最強姉妹の末っ子』第3話

 パフェの奥底にあるコーンフレークを食べ終える前に、ロリンは戻ってきた。
「め、メタちゃん……はぁはぁ、ちょっと……付いてきて!」
 ロリンは息せき切って私の腕を掴むと、走り出した。
 私は慌ててコーンフレークを食べ終え、空の容器を通りすがりのピニーに渡した。
 
 一緒に走って連れて来られた場所は、ロリンの研究室だった。
 ここにはビーカーやフラスコなどの実験器具はもちろん、変な臭いのする草や干

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『最強姉妹の末っ子』第2話

『最強姉妹の末っ子』第2話

 最悪だ。
 もう何もかも。
 私は食堂の椅子に腰をかけながら今の状況を呪った。
 どうしてこうなった。
 姉達が出席しないのは当然だけど、花婿をさらうとは思ってもみなかった。
 今頃だったら、とっくに式を終えて王子が呼んだ招待客達と披露宴をするはずだった。
 それなのに、それなのに――あぁ、涙が出てきそう。
「本当、やんなっちゃうよね」
 だが、ロリンのパンパンに膨らんだ顔を見たらすぐに引っ込ん

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『最強姉妹の末っ子』第1話

『最強姉妹の末っ子』第1話

・あらすじ
 世界屈指の技術力を持つ国メタメターナ。
 その王族の13人姉妹の末っ子であるメタはチャーム王子との結婚に胸を踊らせていた。
 ウェディングドレスに着替えて会場に向かうが、なぜか彼の姿はなかった。
 11人の姉達にさらわれた事を知ったメタは彼を助けるため、天才発明家であり姉でもあるロリンと一緒に旅に出る事にした。
 これはさらわれた王子を救うため、一人の姫が、姉の作った武器やポーション

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