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#散文

神様

神様

A:この世に神がいるとしたら、「それ」はきっと全知全能ではない。だって全知全能の神がいたら起こりうらないことが日々そこら中で起きているもの。

この世に神がいるとしたら、もしかして「それ」は地球があることを知らないかもしれない。青い水に満ちたこの惑星が存在することさえ、神の辞典には載っていないかもしれない。

すなわち神は、春に芽がいっせいに息吹くことも、夏の汗ばむ太陽も、秋の程寒い風も、冬の静け

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夜

夜がふけていく。日めくりのカレンダーが一枚めくれてから数時間が経った。時刻は午前2時過ぎであったが、二人は今何時かなど全く興味がなかった。時間の概念を数字化するのは形のない流動的物体を箱に押し込んで均等に切り刻むようなもので、極めて不自然で人工的だ。身勝手ともいえる所作である。なにより二人は今、胸の少し下の辺りから流れ出す水煙のような気持ちを吐き出すのに精一杯だったのだ。なので現在時刻が7:00だ

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都会と心、感性

都会と心、感性

西武池袋線、土曜日、午後6時21分。私は急に、生きていると感じた。

馴染みのない路線、馴染みのない座席の色。突発的に決まった予定、山積みになっていないタスク。

少し休んでおこうと目を閉じると、電車が動く音が聞こえる。馴染みのないガタンゴトンのリズムを聞いたとき私は急に、あぁ、私は今生きていると思った。

「最近、自分が"生きている!"と感じた瞬間はなんですか?」上級生のインフルエンサーがインス

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