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神様

A:この世に神がいるとしたら、「それ」はきっと全知全能ではない。だって全知全能の神がいたら起こりうらないことが日々そこら中で起きているもの。

この世に神がいるとしたら、もしかして「それ」は地球があることを知らないかもしれない。青い水に満ちたこの惑星が存在することさえ、神の辞典には載っていないかもしれない。

すなわち神は、春に芽がいっせいに息吹くことも、夏の汗ばむ太陽も、秋の程寒い風も、冬の静けさも知らないのだろう。地球の美しさもその循環への畏怖も知らないのだろう。我々人間も忘れかけていることだけれど。

この世に神がいるとしたら、多分「それ」に性別はないだろう。性別は繁殖するための手段の副産物なのだから、神に性別などないだろう。つまり神は恋すらしないのかしら。相手を思ってどうしようもなくて居ても立っても居られない、動物的な本能を知らないのかしら。それは少し寂しい。神は人間ではないのだからそれを寂しいとは思わないだろうけれど。

結局のところ神はいるのかしら。春に桜がふわぁと一斉にさいて心嬉しいのも、山にトンボが飛び交って夏を感じるのも、「もう秋だね」といいながらかき氷を食べるのも、じぃっと静かに冬を越すのも、神の仕組みなのかしら。

B:この世に神がいるとしたら、それは人間がつくったんだよ。カール・マルクスがいうように、宗教は人が作ったのではなく、人の集合体(社会とか村とかそういったもの)が作ったものなんだよ。社会のルールブックなのさ。

この世に神がいるとしたら、そりゃ聖書のように、仏典のように、人間にわかる形に残されるのさ。人工物なのだから人間に理解してもらえないのなら、不良品だ。

この世に神がいるとしたら、少し人数が多い気がする。いっぱい神がいすぎるんだ。同じゲームなのにルールブックがいくつもある。そりゃ争うわけだ。同じルールで暮らす人の間でさえ争いは起こるのに。

A:じゃあとどのつまり、この世に神はいないのね。

B:いや、そんなことはないさ。全知全能の神はきっと単数だけれど集合体なんだよ。人間が思う神ってきっと地球上にいる人全ての集合体なんだ。全知全能なのは、みんなが力を合わせているからじゃないかな。そこになにかキラキラした素晴らしいものをみている。で、神なんて名前をつけてみたり。

A:へぇ、、そうかしら。もっと美しくて壮大で絶対的なものじゃないのかしら。

B:美しくて、壮大で、絶対的じゃないか。全体は単体よりも美しくて、壮大で、絶対的なものだよ。

A:なんだか、しっくりこないわ

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