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クレーム・ディプロマットって、なんだ?[クリーム編vol.3]

実はみんなよく口にしている人気なクリームの謎多き名前の由来に迫るお話です。
今回のテーマは、クレーム・ディプロマット
今までvol.1、vol.2で一緒にお勉強してきたことの復習にもなります!
見習いパティシエ、真白けいと共に楽しんでいきましょう。

Crème diplomateって、なんだ?

まずは定義をご紹介します。

crème diplomate
(クレーム・ディプロマット )
||
クレーム・パティシエールと
クレーム・フエッテを
合わせたクリーム

出ました!!
クレーム・パティシエール」!!
そして「クレーム・フエッテ」!!

これは皆さんと勉強しましたから、僕もわかります!

まだご覧になっていない方はぜひ見てみてください。そしてこの記事に戻ってきてください!
それまでここで待ってます!!

↓クレーム・パティシエールはこちらから

↓クレーム・フエッテはこの記事の中に

…ちょっと、ちょっと、
あなた今メンドクサイと思って飛ばしてここまで来たでしょー?

復習にもなるので、簡単に説明しましょう。 わかってるよって方はすみません…。
しばしお付き合いください。

しょうがないのでクリーム編vol.1、vol.2の振り返りを兼ねて


まずはクレーム・パティシエール。

crème pâtissière
(クレーム・パティシエール)
||
卵黄に砂糖、小麦粉を加え牛乳と混ぜて
炊き上げたクリーム

※バニラで香りをつけることが多い
カスタードクリームのこと

続いては、クレーム・フエッテ。

crème fouettée
(クレーム・フエッテ)
||
砂糖を加えずに泡立てた生クリーム

うんうん、そうだったそうだった!
思い出してくれたなら嬉しいです!!

そして、詳しくはその記事を見てほしいんですが、なんと今回の内容が示唆されていました!

[クレーム・フエッテの場合]
クレーム・パティシエールと合わせたり、ムースに使われる

復習はこんなところです。つまり…

クレーム・ディプロマットとは、クレーム・パティシエールが一段とふんわり軽くなったもの

です。
なので、パティスリーに行ってシュークリームを食べてみて、

真っ黄っきで重めで濃厚だったら
クレーム・パティシエール、
黄色よりちょっと白っぽくてふわっとしてたらクレーム・ディプロマット

を使っていそうです。
シュークリーム1つ取ってみてもお店の方向性がチラッと見えるんですね。

クレーム・ディプロマットの由来

まずは、名前の意味から!

diplomate=外交官
つまり、クレーム・ディプロマットは、
外交官のクリームという意味

イメージしづらい名前ですね。
由来を紐解いていきたいと思います。

プディング・ディプロマットという冷製デザートから派生して、クレーム・ディプロマットが生まれたといわれる

と、いうことは、このクリーム最大の謎である外交官という名前の由来はプディング・ディプロマットを調べることでわかりそうです。

まず、プティング・ディプロマットとはどういうものなのでしょうか。

すごく簡単に言うと、フレンチトーストの液のようなものにパンを浸し、フルーツなどと一緒に型に入れて湯煎でゆーっくり火を通したおやつらしいです。泡立てた生クリームを添えることが多いっぽい。

フレンチトーストの液といえば牛乳砂糖ですから、そして火を通して弾力のある質感と考えると、クレーム・パティシエールと似てますよね…。
そして泡立てた生クリームを添えると…。

要素的にはギリギリクレーム・ディプロマット になりそうな気配はある…かな?

そして、そのプディング・ディプロマット に至るまでのいきさつが3説あるようです。

(ⅰ)1814~1815年のウィーン会議というヨーロッパの国際会議に出席したフランス外相タレーランのお付き料理人アントナン・カレームが作ってお出しし、そこで名付けられた説。

アントナン・カレームとは音楽界で言うモーツァルトみたいな超天才として知られてますが、別記事で勉強するとして、ここはさらっといきます。

(ⅱ)1822年、フランス貴族であり美食家で知られるシャトーブリアン子爵がイギリスへ大使の任務を背負って赴いた際、お付きの料理人モンミレイユシャトーブリアンプディングとして考案したが、これがわかりやすく外交官風プディングと呼ばれた説。

シャトーブリアンという名前はお肉のイメージがありますね。

シャートーブリアン


まさしく、この料理人モンミレイユがシャトーブリアン子爵のために用意したのがこんにちでも美食家の間で親しまれるお高いお肉、シャトーブリアンなんだとか。
今は一旦お肉のことは封印します。

(ⅲ)1856年、外交官マルセリュスのお付き料理人モンミレルが、シャトーブリアン風プディングを発表したところ、外交官風プディングと呼ばれて評判になった説。

あれ、これは(ⅱ)とちょっと似てますね。
まずマルセリュスというのがどういう人物なのか調べましたが、出てきませんでした

ただ、モンミレルモンミレイユと響き似てません?モンミレルは情報が少なくて出てきませんでしたが、モンミレイユのスペルを見てみてください。

モンミレイユ(Montmireil)

どう思いますか?これ、日本人が発音を間違えてモンミレルになっている事件の匂いがする…!
あくまでボクの憶測ですけども。

ここで、クレーム・ディプロマットに至るまでの流れを想像を含めて考えてみます。
でも今回全部は繋げられず。
それが(ⅰ)なんですが、これはこれとして覚えておいてみてください。
(ⅱ)と(ⅲ)をベースにして推理してみます。
それからさっきの考察に基づいて、モンミレイユ=モンミレルとします。

[事実]1822年、シャトーブリアン子爵イギリスを大使として訪れる。料理人モンミレイユ同行。

[事実]会食にて、モンミレイユ、パンプディングをアレンジして出す。

[想像]会食の客の間でプディングがおいしいと話題になり、シャトーブリアンの用意した料理であるため、シャトーブリアンプディングだとか、外交官風プディングだとか呼ぶ。

[事実]1848年、シャトーブリアン死去。

[想像]主君のいなくなったモンミレイユ、今度は外交官マルセリュスに仕える。

[想像]シャトーブリアンの元にいた頃作った
プディングを思い出し、少し改良して再現する。

[事実]1856年、かの美食家シャトーブリアン風プディングとして発表。

[想像]シャトーブリアン、マルセリュス両者とも、外交官である時代に出したため外交官風
プディングと呼ばれるようになる。

[想像]時代は下り、クレーム・パティシエールを軽い味わいにするため、クレーム・フエッテを合わせる者が現れる。

[想像]材料や味わいが似ていることから、プディング・ディプロマットを連想し、クレーム・ディプロマットと名付けられた。

どうでしょう。
なんかちょっと弱い気もします。
自分でももっと納得できたらいいのですが。
みなさんの力もお貸しください!

さて、ここでせっかくなので似たクリームをもうひとつご紹介しちゃいます!!

Crème légèreって、なんだ?

調べているとクレーム・ディプロマットと間違いやすい!みたいなことでこの子が紹介されていました。

crème légère
(クレーム・レジェール)
||
クレーム・パティシエールに
クレーム・フエッテを合わせたクリーム

ただね、定義がちょっと色々バラバラでした。
区別しやすいのでとりあえずこれを選んでおきます。

曖昧なのでパターン別にしておきます。

パターン①〈ゼラチンの有無〉
クレーム・ディプロマット…ゼラチンあり
クレーム・レジェール…ゼラチンなし

パターン②〈一緒、両者ともゼラチンなし〉
クレーム・ディプロマット
=クレーム・レジェール

パターン③〈1択、ゼラチンなし〉
クレーム・ディプロマット…ゼラチンなし
クレーム・レジェール…存在しない

正解はないと思います。
なぜなら、ここまで読んでくれたら共感してくれると思いますが、お菓子の名前って、基本後からつくような感じがしませんか。

ある状態のものができたら、そこに名前をつけよう!という順番。

あそこで食べたお菓子がおいしかった!で伝わって、いろんなとこで作られて、そこにパティシエが名前をそれぞれつけてきました。

売りやすい名前をつけたり、由来を味方にして名前をつけたり、想いを込めたり、状態のそのものズバリだったり、ユーモアを効かせたり。

現代にこんなにいろんな名前の、いろんなお菓子が伝わってて、こういう事故もあります。

でも忘れたくない。それら一つ一つ全部、積み上げてきた歴史だだと言うこと。人の営みの、先人の努力の結晶だと言うこと。

だから僕はもっとみんなに知って欲しい。おいしいだけじゃないことを。
今僕らが食べているものが、次の世代に繋がっていく。

そういうことも伝えていきたいです!いちパティシエとして!

というわけで今回は以上です。
ちょっと長くなりましたが、最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!

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の方もよろしくお願いします!

次回のテーマは…
ムラング・イタリエンヌ

参考文献
猫井登、お菓子の由来物語、幻冬舎ルネッサンス、2011
辻製菓専門学校 小阪ひろみ 山崎正也、使える製菓のフランス語辞典、柴田書店、2018
ディプロマットのお話、leclosmontmartre、exite.ブログ、閲覧日2021-3-8, https://www.google.co.jp/amp/s/janick.exblog.jp/amp/17753059/
山吹は踊る LE CONGRES NE MARCHE PAS, MAIS......、Parismidori & Benoit.desu、フランス便り Soyez les BIENVENUS!、閲覧日2021-3-8、http://blog.livedoor.jp/parismidori/archives/51267695.html
ディプロマット、お菓子の辞典 て、閲覧日2021-3-8、http://www.la-fontaine.co.jp/jiten_te.htm
シャトーブリアン(料理) - Chateaubriand (dish)、Wikipedia、閲覧日2021-3-8、https://ja.wikiarabi.org/wiki/Chateaubriand_(dish)
シャトーブリヤン(Chateaubriand)
<美味しいお肉の話 用語篇>、ビストロノミーラトリエ1959、閲覧日2021-3-8、https://latelier1959.com/dictionary/2017/08/chateaubriand.html
フランソワ=ルネ・ド・シャトーブリアン、Wikipedia、閲覧日2021-3-8、https://ja.m.wikipedia.org/wiki/フランソワ=ルネ・ド・シャトーブリアン
ロールケーキの作り方、トムノキノレシピ、アメブロ、閲覧日2021-3-8、https://www.google.co.jp/amp/s/gamp.ameblo.jp/j-ayumu/entry-12151034951.html
肉食女子必読!牛肉の超希少部位「シャトーブリアン」の豆知識、excite.ニュース、閲覧日2021-3-8、https://www.google.co.jp/amp/s/www.excite.co.jp/news/article-amp/Asajo_51512/
クレーム・ディプロマット、パティシエwiki、閲覧日2021-3-8、https://www.patissient.com/wiki/クレーム・ディプロマット
クレーム・ディプロマットの作り方、フランス菓子ラボ、閲覧日2021-3-8、https://patissieres.com/recette/recipes/creme-diplomate/
製菓学校講師が教える!クレーム・レジェール?ディプロマット?、パティシエ歴15年 元製菓学校講師から学ぶオンラインスイーツスクール『Saki.+』、アメブロ、閲覧日2021-3-8、https://www.google.co.jp/amp/s/gamp.ameblo.jp/satting517/entry-12445895508.html

※この記事は上記の参考文献を元に執筆しました。諸説あるものは一部のみ紹介しています。
また、新たな事実を勉強し次第、追記・編集する場合があります。

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