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[素材編]グラニュー糖って、なんだ?

パティシエ的知られざる砂糖の6つの機能についてのお話です。
今回のテーマは、グラニュー糖。
見習いパティシエ、真白けいとともに学んでいきましょう!

6つの役割って、なんだ?

まず始めに、グラニュー糖の特徴をサラッと書かせてください。

サラサラとした白色の結晶
※実際は透明ですが乱反射のため白く見えます
・粒径約0.2~0.7mm
・ショ糖99.97%と砂糖の中でも純度がトップレベルで高い

砂糖の中にも色々と種類がありますが、機能がわかりやすく出るのはグラニュー糖です。
そのため、お菓子作りでは基本的にグラニュー糖を使います。
その機能とは、次の6つです。

1. 甘味の付与
2. 親水性
3. タンパク質変性抑制
4. 再結晶
5. 着色性
6. 溶液の沸点上昇

なんのこっちゃ
そうですよね。
字面がとても嫌ですが、内容の説明でなるほどと思ってくださるように、なるべく易しくお伝えできればと思います

1. 甘味の付与[お菓子をお菓子らしく]

みなさんご存知の通り、砂糖は甘味を感じさせますが、これがないと成立しないくらい、お菓子にはとても大切な役割です。

その中で、グラニュー糖はどういう甘さかというと、淡白で上品な甘さ、つまりスッキリしています。

これは、始めにご紹介した通り、グラニュー糖の中でショ糖の割合が99.97%と、純度が高いためです。逆に、雑味となるミネラルなどがほぼ入っていないとも言えます。

ショ糖=ブドウ糖と果糖が結合したもの

さらに、結合体だからこそ甘みがスッと消えるんだとか。

砂糖にはグラニュー糖以外の種類もありますが、その甘味度をグラニュー糖を基準に表したりするみたいです。

2. 親水性[水にくっつく]

これはですね、水を求める砂糖の性分らしいです。

そして実際なじみやすいということで、たくさんお菓子作りに使われ、その状況からさらに3つに分類されるようです。

【其の一】脱水性
例)ジャムを作る時、果物に砂糖をかけておくと水分が出てくる

いきなり想像しにくいかもしれません。
実は、書いていない順番があります。

①砂糖をまぶすと、果物の表面の水分と結びついて溶ける(とても濃いシロップになる)

②果物の内側の薄いシロップと、外側の濃いシロップの濃度を合わせようとする

③水分だけを通す薄い膜から外へ水分がどんどん移動する(浸透圧)

これをまとめて脱水性と呼ぶようです。
もともとの果物の水分や風味を活かすことができるため、便利です。

【其の二】吸湿性
例)
・卵の泡立て時に水分を吸着し気泡を丈夫に
・砂糖漬けを作った時に自由水を吸着して防腐作用をもたらす
・ペクチンなどに混ぜておくと水分を吸着した状態で粒子同士の間に入り込み、粉末を液体に分散させる

つまり、水分を砂糖さんがいるところに引き寄せることで、フラフラしていた水分が役割を持ち、ベシャベシャにしないということです。

また水が自由にフラフラしてないことで悪い菌に付け込まれることも少なくなります。これを防腐作用といいます。

湿気って欲しくないものに一緒に砂糖さんを混ぜておくと代わりに吸ってくれるっていう使い方もできそうですね!

【其の三】保水性
例)
・ゼリーでゼラチンの網目の中に水分を保持して、崩れないように保つ&離水防止
・ジャム作りで大量の砂糖が水分を抱え込んでペクチン同士が結びつけるようにする
スポンジを焼く時、水分蒸発を抑えてしっとりさせる
スポンジのデンプン分子の間に水分を保持して老化抑制作用を発揮

どうやら、掴んで離さないということですね。これはわかりやすいです。

ここまで親水性特集でした。
日持ちのするお菓子、しっとりとしたお菓子の理由もわかったのではないでしょうか。

3. タンパク質変性抑制[お菓子を作りやすく]

こちらは、詳しくは卵の記事で触れようと思うのでサラッといきます。
砂糖の役割として根本は同じですが、状況によって2つに分けたりするみたいです。

(α)熱変性抑制
熱によってタンパク質が寄り集まって水分を排除しようとするのを抑制する。

これには親水性【其の三】保水性が関わっていると思われます。

(β)空気変性抑制
泡立てによって含まれた空気をタンパク質が囲み硬化するのを抑制する。

これには親水性【其の二】吸湿性が関わっていると思われます。

刺激で変わりたがるタンパク質を引き止める、たったそれだけです。

4. 再結晶[キラキラと美しく]

まず、再結晶とは…

過飽和状態のシロップへの刺激によって砂糖が結晶化すること。
例)フォンダン、リキュール・ボンボン

思い出して欲しいのは、溶解度曲線です!
溶液の温度が高くなるとたくさん溶けて、低くなるとちょっとしか溶けないアレです!

では問題です!水にたくさんの砂糖を投入し、温度を上げて煮詰め、水分が減ったところで静かに冷まします。すると溶けていた砂糖さんはどうなるでしょ〜か?

正解は、砂糖は気づかずにそのまま溶けてます

でも溶解度曲線的には、そんな量の砂糖は溶けないはずです。一定量の溶媒に溶けられる溶質の量を超えているのに、現れません。
これを過飽和というらしいです。

その状態で、物を入れたりヘラで混ぜたりして刺激を与えると、なんと、
そこから一気に結晶化するのです!

そうすると、細かく白い結晶ができます。
という性質を利用したお菓子があるということみたいです!
科学ですね!お菓子作りは。面白い!!

5. 着色性[焼き色をつきやすく]

これもですね、長くなるし少し脱線するので今回はちょい出しにしておきます。

(ⅰ)アミノカルボニル反応(メイラード反応)
タンパク質・アミノ酸と還元糖が加熱によって反応し、香ばしい香りや焼き色をつける

お肉とか焼けた時の反応です。この反応には砂糖も関係しますが、必須ではないようです。

(ⅱ)カラメル化反応
砂糖単体で加熱すると茶色く色付き、苦味と香りをつける

キャラメルは、まさしくこっちで色がついているということです。
また今度詳しくご紹介したいとおもいます。

そして、スポンジやクッキーなどはこの両方を利用して焼き色がついているのですね。

6. 溶液の沸点上昇[液体のままでより高い温度まで]

ここには、色々と難しい化学の話が絡んでるみたいで、僕も調べてみたんですが、理屈的に合ってるかはあまり自信がありません。
とりあえずパティシエ的に覚えておきたい絶対合ってる結論はこちらです。

液体に砂糖を溶かすと、
その溶液の沸点は液体単体の時の沸点より上がる。

気体にならない範囲で(つまり液体のままで)もっと高い温度まで加熱できるという感じです。

例えば、お水。普通は100℃までしか上がりませんが、砂糖を溶かしてシロップにすると、なんと、200℃より上まで加熱することができます!

シロップが100℃までしか上がらなかったら、パティシエ的にはあれもできないこれもできないになります。

それに、クレーム・パティシエールを炊く時に牛乳に一部砂糖を入れておけば、沸騰までに温度を高めておいて、一気に卵の固まる温度を通過して小麦粉が糊化する温度まで火を入れ、短時間で炊くことができます!すると舌触りのいいクレーム・パティシエールができるわけです!

ごめんなさい。専門的な言葉はまたnoteで必ず一つ一つご紹介していきます!

クレーム・パティシエールの説明はこちらです。

この沸点上昇のばけ学的な詳しい話は誤解なくできる気がしないので、よかったら他の方のサイトを参照ください。

グラニュー糖の名前の由来

最後に、申し訳程度に名前の由来をご紹介します。グラニュー糖そのものの起源や歴史は調べきれなかったので勉強し次第追記します!!

英語の”guranulate”(グラニュレイト:粒状にする、ざらざらにする)の転訛。
日本では大正11年製造開始。

なぜ砂糖の名前の中でグラニュー糖だけカタカナなのか、僕はずっと気になってました。
今回の調べでも完全に分かったわけではありませんが、ここからは、妄想を言ってみたいです…!

他の砂糖に比べてグラニュー糖は日本に受け入れられるのが遅かったようです。
なぜなら上白糖が一般的に使われていたためです。

ただ世界的に見て一般的なのはグラニュー糖。
当時の洋菓子職人、西洋料理人はグラニュー糖を使いたいたがった事でしょう。
そういう需要と、外国の文化がどんどん浸透するにつれての人々の認識の変化から広まっていったのではないでしょうか。

その前時代までなら漢字を当てたり和名をつけたのでしょうが、世は大正11年。
カタカナ表記でそのまま表すことができました。
そういう訳で、グラニュー糖がカタカナ表記なのは世に浸透するのが遅かったから、だと思いました。

なんて、完全に妄想だけど書いてみました。

ちなみに、フランス語では

sucre semoule/sucre en poudre
(シュクル・スムール/シュクル・アン・プードル)
||
グラニュー糖

“poudre”は粉の事です。粉状の砂糖。

面白いのはここからです!
semoule”はなんのことだと思いますか?

正解は、「セモリナ」だそうです!
セモリナ?と思ってセモリナ調べました。
セモリナは、「粗く挽いた穀粉」のことらしいです。
パスタとかでよく聞くデュラムセモリナは、硬めのデュラム小麦のセモリナ挽きみたいな意味なんだそうな。

(↑クスクス用のセモリナ)
確かに、粒感が似てる、かも…。
お菓子以外の知識も、面白いですね!!

甘いだけじゃない、一騎当千の活躍するグラニュー糖。この記事を読んで、あなたもぜひ使いこなしてみてください!!

ということで、今回の記事は以上です!

参考文献
中山弘典 木村万紀子, 科学でわかるお菓子の「なぜ?」, 柴田書店, 2009
いろいろな砂糖の名前の由来, 独立行政法人農畜産業振興機構, 閲覧日2021-2-28, https://www.alic.go.jp/koho/mng01_000092.html
質問コーナーQ9, 小・中・高生の化学のページ,  日本化学会近畿支部, 閲覧日2021-2-28, http://kinki.chemistry.or.jp/pre/a-9.html
セモリナ, Wikipedia, 閲覧日2021-2-28, https://ja.m.wikipedia.org/wiki/セモリナ

※この記事は上記の参考文献をもとにわかりやすくイメージを交えて執筆したものです。現在の科学での見解や、主観に基づく部分は細かいニュアンスが異なっている場合があります。また、新たな事実を勉強し次第追記・編集する場合があります。ご了承ください。

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