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来日決定!プロのゲーム・ライターとメタル、二足の草鞋を履きこなすSVALBARDのセレナ・チェリー。

UKのポスト・メタル/ハードコアバンド、SVALBARD のフロント・ウーマン Serena Cherry。来日も決定したエクストリーム・ミュージックの新たなカリスマは生涯のゲーマーでもあります。その熱意により、Kerrang!ゲーム・コラムのライターとしての仕事を獲得した彼女は、その後、PC Gamer と GamesRadar でもライターとして活躍しています。つまり、ゲームのプロフェッショナル。

彼女のゲームへの愛情は、本職である音楽にも定期的に滲み出るほど。"The Weight of the Mask" からのシングル "How to Swim Down" は、"World of Warcraft" のヒーラーの視点から語られる哀愁漂うバラードです。さらにパンデミック期間中の2021年には彼女のソロ・ブラックメタル・プロジェクト NOCTULE で Skyrim をテーマとしたアルバム "Wretched Abyss" をリリース。エクストリーム・メタルのアンダーグラウンドを探求していた10代の頃に、同じくダークで自身を形成したオープンワールドの世界を描写しました。

そんなSerena の初めてのビデオゲーム体験はどんなものだったのでしょう?

「初めてビデオゲームを体験したのは、セガ・マスターシステムIIに内蔵されていた "アレックスキッドのミラクルワールド" 。今でも、2Dプラットフォーマーの中で最も難しいゲームのひとつだと思う。とても残酷だった。"じゃん拳" (セガがドラゴンボールのゲーム開発で版権を取れなかったためのDBの名残り) のボスがいて、私は消去法で、ボスごとにどんなじゃん拳だったかを書き出したのを覚えている。気分屋だった10代の頃、ダンジョンシンセのプロジェクトをやったのよ。それは "Radaxian" という名前で、アレックス・キッドの城のレベルの名前だった (笑)」

最近のお気に入りには、やはり話題のダークなあのゲームが入っています。

「"World of Witchcraft" はいつもプレイしているし、自分のキャラクターでレイドをやったりしているよ。今でも夢中になれる大好きな世界のひとつだよ。正直に言うと、"Dragonflight" にはちょっとがっかりしたんだ。
ここ数年で一番好きなゲームのひとつは "Elden Ring" ね。フロム・ソフトの最高傑作だと思う。召喚のようなメカニクスがフロム・ソフトのゲームにしては簡単すぎると感じて、あまり乗り気でない人が多いのは知っているけど、私はそれには大反対よ。ゴッドスキン・デュオを手に入れたら、召喚する必要がある。私はこのゲームのすべてのボスに挑戦している (笑)。
今 "Cuphead" のDLC "The Delicious Last Course" をプレイ中。すごい。カップヘッドが大好きなんだよね。すごくイライラするけど、アニメーションが素晴らしい!他のものとは全然違う。中毒性があるし、毎回勉強になる。何時間も同じボスに死ぬかもしれないけど、毎回少しずつ進歩が見られる。それが私を夢中にさせるゲームなんだ。つまり、私は自分を罰するようなゲームが好きなのよ。ソウルライクとかね。
"Starfield" はこれからプレイする予定だけど、今掘り下げている時間はない。今年は明らかに "Baldur's Gate 3" と "Diablo IV" よね。同じ年に最高のRPGが2本も作られたんだ!今年はゲームにとって本当に良い年だったよね」

高難易度ゲームに惹かれるのはなぜなのでしょう?

「見返りよね。投資して、そこから得られる報酬。ゲームに一番没頭できるのは、何かに挑戦しているときだと思う。"ELDEN Ring" のボスがどうしても倒せないときが大好きなのよ。ただそれを繰り返すという単純なものではない。離れてみたり、リスペックしてみたり、武器を変えてみたり、別の武器をアップグレードしてみたり。いろいろある。挑戦的なボスにはかなり執着すると思うし、それが大好きなの。私にとってそれは究極の現実からのエスケープなのよね。ボスを倒すことだけに集中する。マリオのようなゲームにはまったく興味がわかない。ただ走り回って、プラットフォームでジャンプしているだけなら、それは私の好みじゃない。プレイしているときはいつも怒っていたいのよ!(笑)」

PCゲームとコンソールゲームのどちらがベストなのでしょう?

「現時点では、それは重要なことなのかな?それぞれに独占的なものがある以外は、どれもほぼ同等だと思う。
ただコンソールを選ぶとしたら、Xbox より PlayStation を選ぶわね。もちろん、PCゲームは最も汎用性が高いと思う。私はPC Gamerで働いているからね。PCゲーミングは、PCでゲームをプレイすることだけが目的ではないと思う。ビルドしたり、改造したり。それだけではありません。もっと自由で創造性がある。より深く関わってくる。そう考えると、私はコンソールよりPCを選ぶかな (笑)。
逆に言えば、PCの方がとっつきにくい。PCゲームを始めるのは本当に大変。学ばなければならないことがたくさんあるから。同じではないよ。Playstation やXboxはとても身近なのよね。ゲーム機を買って、接続すれば終わり。ゲーム機のそういうところが好きなのよ。ゲームに頭痛の種はいらないの」

"The Weight of the Mask" には "How to Swim Down" という曲が収録されています。この曲は "World of Warcraft" のヒーラーの視点から語られた片思いの物語。

「例えるなら、遠くから黙って誰かを好きになっているようなもの (笑)。ヒーラーとしてプレイしているときは、端っこで静かにみんなを癒しているのよね。アクションから少し切り離されていると思う。誰かに密かに片思いしているという状況に似ているじゃない?
SVALBARD の曲はすべて、そのとき自分が経験していることを歌っている。あのときは片思いのような感情を抱いていたし、"World of Warcraft" もプレイしていた。処理するのに苦労するような感情を持っているとき、私は象徴やそのような感情を別の場所で表現しようとする。自分がヒーラーとしてプレイしていて、"無我夢中で人々を癒している" のに気づいたのよ。ああ、象徴的だなって!(笑)」

ゲーマーには、シングルプレイを好むものとマルチプレイを好むものが存在します。

「さっき、MMOをプレイすることについて話したけど、実際はシングルプレイのRPGの方がずっと好きなんだよね。たいていの場合、ゲームで他人と関わりたくない。"Baldur's Gate 3" はグループでプレイできるし、"ダンジョンズ&ドラゴンズ" をベースにしているから、インタラクティブな側面があるのは明らかなんだけど私はちがう。"そうじゃない!私は一人でプレイしたい!友達はいらない!私はゲームの逃避的な部分と没入感を大事にしているから!" って思うの。大人数でプレイすると、そうした感覚から遠ざかってしまうことがあるからね。大勢のゲーマーと一緒にマリオカートを楽しむ魅力は理解できるけど、一般的にはシングルプレイの方が好きなのよ」

ゲームのメカニズムを愛する人がいれば、世界に入り込んで没頭するのが好きな人もいます。

「ゲームによると思う。"Skyrim" のようなゲームは、その世界に入り込むことがすべてだと思う。私にとってあのゲームは家のような感覚。ただぶらぶら歩き回るだけで、ゲーム内で実際に何かを達成するわけではないこともあるけれども、それでもあの世界にいるのは気持ちいいのよね。世界観の構築から豊かさが生まれるようなゲームでは、それが私の優先事項のようなもの。でも、フロム・ソフトのタイトルの場合は、メカニズムのほうが大事かもしれないわね」

Serena は、"Skyrim" をテーマにしたアルバム "Wretched Abyss" をリリースしたソロ・ブラックメタル・プロジェクト NOCTULE の首謀者でもあります。

「"Skyrim" のファンタジーの世界を表現したかった。好きな武器やダンジョンについて曲を書きたかったんだけど、SVALBARD でやるにはちょっと耽美的すぎると感じたんだよね。SVALBARD といえば、感情的で社会学的なハードな歌詞で知られている。だからアルバムで "Skyrim" のことを書くのは、大きなカーブボールになるような気がしたんだ。また、バンドメンバーのほとんどが "Skyrim" をプレイしていないので、彼らを乗せることはできなかったと思う。
NOCTULE はいつも、私の超勝手なプロジェクトだと思っている。ロックダウン中に書いたのよ。毎日起きて、"Skyrim" をプレイして、"Skyrim" について曲を書く。自分だけの小さなRPGの世界に没頭していたんだよね。ゲームについての曲を書くことで、ゲームへの情熱を探求することが、今の NOCTULE のテーマであることは間違いないと思う。今はセカンド・アルバムを書いているところ。別のゲームについてね。SVALBARD とは切り離して考えることに意味があるんだ」

なぜ "Skyrim" は何年もかけて探索する価値があるのでしょう?

「第一に、ジェレミー・スールによる "Skyrim" のサウンドトラックは、これまで書かれた中で最も美しい音楽だと思う。ゲームにとてもマッチしている。
それにこのゲームは美しい。スカイリムで他に好きなことといえば、ゲームの中でただ立って空を眺めること、夜空を眺めること。特にソブンガルデに行くと、空がオーロラのように紫と青の渦巻きになるんだ!ただそこに立って空を見ているだけでいい。視覚的な面、美しい音楽、そしてクエスト、特にサイドクエスト。どこに行き着くかわからないこともある。Skoomaで酔っ払って、汚い裏の世界に行き着くクエストが大好きなの。それは予想外だったわ!」

優れたサウンドトラックは優れたゲームと切っても切れない存在でしょう。

「"ファイナル・ファンタジーVII" のサウンドトラックが大好きなの。とても悲劇的で、とても美しい。"ファイナル・ファンタジーVII" には史上最高のサウンドトラックのひとつよ。"キングダム・ハーツ" もそうね!
ただ、"ファイナル・ファンタジー" や "キングダム・ハーツ" を SVALBARD や NOCTULE で扱うことはないかな。頭の中のスクウェア・エニックス側の領域は、ドラゴンにまみれたRPGの領域である NOCTULE や、SVALBARD とは別の音楽の領域に住んでいると思う。私の頭の中では、"ファイナル・ファンタジー" について何かやるとしたら、パワーメタルになるかもしれないと思う」

Serena は PC Gamer や Games Radar で働き、Kerrang! のゲーム・コラムニストも務めています。

「とても刺激的よ。今までで一番やりがいのある仕事ね。自分の情熱と知識を毎日仕事に注げる唯一の仕事。超楽しい!とてもエキサイティングよ!"Diablo IV" が出たとき、"Baldur's Gate 3" が出たとき、そして今、"Starfield" が出たときの興奮の波紋は、自分がこの超クリエイティブでエキサイティングな時代に生きていることを実感できる!でも同時に、本当に長い時間ゲームをやって働いているわけで、現実的に余暇にプレイするゲームをかなり厳選しなければならなくなる。優先順位をつけなければならないのよね」

カジュアルにゲームを楽しむのではなく、ゲーム業界で働こうと思ったのはなぜなのでしょう?

「ゲーム業界で働く前は、ネットのプロバイダのヘルプラインなど、本当に退屈な仕事を繰り返していたの。カスタマーサービスのような仕事ばかりで、魂がすり減るような感じだった。パンデミックのとき、私は大いに反省したのよね。パンデミックの前は、ただ魂を破壊するような仕事をこなし、ツアーに出る。仕事は、食べて家賃を払うためのもので、ツアーに出るために休みを取る。ツアーが報酬だった。でも、パンデミックの影響で、1年以上もツアーができなくなって、日常生活の中で自分が信じていること、自分が気にかけていること、自分が情熱を持っていることにもっと寄り添ったことをしなければいけないと、少し考えるようになったと思う。
結局、Kerrang! でゲームコラムを書くようになり、そこから PC Gamer と Games Radar で働くようになった。毎日そこにいることがラッキーだと思えるような仕事をするなんて、本当にクレイジーよ。出社すると、"やった!" という感じね!(笑)」

Kerrang!誌のコミコンやコンベンションへの熱い記事もあります。

「今年はロンドンのMCMコミコンにも行ったし、ハイパージャパンコンでも働いた。日本の文化が中心になっているんだ。コスプレを見るのが大好きなのよ。何日も座ってコスプレを見ていられるなら、そうしたい。とてもクリエイティブで、人々がどのようにルックスを作り上げるのか。素晴らしいよ。
コミコンは感覚的な過負荷のようなものだと思う。人がたくさんいて、見るものがたくさんある。うるさいしね。会場にいて、"うわぁ、これはとても強烈だから、寒くて暗い部屋に1時間くらい隠れていたい" と思ったこともある。
同時に、共同体という感覚もある。私は社交的でない人間で、音楽業界でも、たとえ自分のショーであっても、そこにいる自分が "クール" でないように感じる。メタルの世界では、自分が十分にクールだと感じられないことがあるのよね。一方、コミコンに参加すると、気の合う人たちや、私と同じような物腰の人たち、シャイで不器用な人たちに出会うことが多い。それは本当にありがたいのよ。友人のジョーイの店で働いているときは、目的意識を持てる。何かをするためにそこにいて、人と話す方法や人と接するきっかけがある。そうすることで、ただひたすら仕事に打ち込むことができるから、圧倒されそうになる気持ちを和らげることができるのよ」

オタク文化がどんなに巨大化しても、ニッチであることに変わりはない。それは今でも真実なのでしょうか?

「そう思うわ。世代的なものだと思う。母に PC Gamer と Games Radar の仕事をもらったことを説明したとき、"あら、それは趣味で暇なときにやることなの?"って言われたのよ。それで、"フルタイムの仕事だよ "って答えたの。ゲームに対する閉鎖的な考え方や、ゲームがいかに巨大なものであるかという認識がまったくないのは確かよね。
ゲーマーではない人たちとの交流の中で、彼らは今のゲームの創造性や世界観の広さ、大きさに気づいていないと感じるようになったわ。私にとっては、ビデオゲームはどんな本や映画よりも引き込まれるもの。でもゲームは、カウンター・カルチャーのようなものだと見下されているようなのよ」

2023年はゲームにとって素晴らしい年になりました。

「あとは、"Sea of Stars" をプレイするのをとても楽しみにしているの。すごく良さそう。このゲームのノスタルジックな感じが大好き。ピクセルアートが素晴らしいね。サウンドトラックを聴いた限りでは、これもすごくいい。このゲームに関わるのが楽しみよ」

サウンド・トラックがゲームを左右することはあるのでしょうか?サウンドトラックが良いからと言って、面白くないゲームを我慢することはできますか?

「これは私が死んだら墓碑銘に刻みたい言葉なんだけど、"サウンドトラックの悪いゲームはプレイできない"。私にとってサウンドトラックはゲーム体験の大きな部分を占めている。私が最も影響を受けた音楽のひとつでもあるのよね。SVALBARD のギターのリードは"ファイナル・ファンタジー"、"キングダム・ハーツ"、"Skyrim" のサウンドトラックに影響をうけているの。そうした音楽のメロディーが持っているような、想起させるような感覚を求めているのよ。ゲームをミュートでプレイすることはないし、サウンドトラックは私にとってとても大きな要素なのよ!」

Serena にとって "家" のようなゲームとは?

「みんなが予想するようなことは言わないよ。というのも、PS1の "スパイロ・ザ・ドラゴン" は、 私を夢中にさせた最初のゲームで、今でもいつもプレイしている。不安なときは、スパイロのホームワールドに入って、何度も何度もやるのよ。リマスター版の "Reignited Trilogy" は本当にゴージャスだと思った。なんてゲームなんだ。すべてが素敵で、今でも私の心をつかんで離さない。もっと好きなゲームもある。"ELDEN RING" や "Skyrim" は "スパイロ" よりも好きだけど、"スパイロ" はともに成長し、何度も戻ってくるゲームなのよ。ポケモンブルーもね!」


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