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まるいの家族エッセイ

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まるいるいの、父親をはじめとした家族の話です。
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#エッセイ

父との徒然なる思いで【家族エッセイ】

父との徒然なる思いで【家族エッセイ】

父がセルフで髪を染めた日。
幼い頃の私は父と共に風呂に入った。
横並びになって頭を洗っていると、父がシャワー水栓の上に黒いモコモコの泡をいくつか並べていた。父の行動の意図を知る由もなかった私はそのモコモコを無慈悲にシャワーでザッと洗い流した。

「あっ!!!色の違いを見てたのに!!」

どうやら父は髪を数回洗うことで、染め粉混じりの黒い泡が白に近づいていく様子を面白がっていたらしい。
そんなことと

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私の家族の悪いところ【家族エッセイ】

私の家族の悪いところ【家族エッセイ】

今から綴ることは、私の短所の言い訳である。

私はお世辞を言うことや他人を褒めることが頗る苦手だ。
そして、褒められることも苦手だ。
その原因は育った環境にあると考えている。

私の家族は所謂‘‘イジる’’ことで仲を深めてきてしまった。
「家族」と一括りにしてしまったが、主に父と兄と私だ。

「ブサイクだなー!」
「デブだなー!」
「ハゲだなー!」
これらは常套句である。
(ハゲに関しては父に対し

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親から学ぶ‘‘結婚とは’’【家族エッセイ】

親から学ぶ‘‘結婚とは’’【家族エッセイ】

私の両親は結婚して30年が経っても毎日一緒に寝て、起きて、ご飯を食べて、晩酌をして、また一緒に寝る。時々旅行にも行く。

この先何があるかは分からないが、二人はどちらかが死ぬまでずっと一緒なのだろう。

以前、父の会社の業績が芳しくなかった時があった。
後から聞いた話だが、その頃は父も相当参っていたようで、ある日、会社を畳むことになるかもしれないと母に告げたそうだ。
すると母は
「そうなんだ。じゃ

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人を叱ったことがない【家族エッセイ】

人を叱ったことがない【家族エッセイ】

あれは4歳とか5歳の記憶だろうか。父親に激しめに叱られて泣きじゃくっていると、「おいで。」と呼ばれて膝の上に乗せられた。
そのあと何を語り掛けられたかは忘れてしまったが、父が優しく頭を撫でてくれたのを覚えている。

大人になってから思い返して、あれはなんだったんだ?飴と鞭ってことか?DV彼氏みたいなこと?などと考えていた。
ある日、SNSをぼーっと眺めていると、「子供を叱るのとフォローは絶対セット

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オヤジ狩り【家族エッセイ】

オヤジ狩り【家族エッセイ】

小学生の頃、父が飲み会に行く度に涙が出そうな気持ちになったことを覚えている。涙が出そうというか、少し泣いていた。
小学校4年生くらいだろうか。
当時テレビドラマが大好きでよく観ていたため、「オヤジ狩り」という言葉を知っていた。
今思えば当時の父は40歳そこそこだったのでそこまでオヤジではなかったかもしれない。
しかし「父親」というだけで当時10年しか生きてない私からしたらすごく年を取っていて、もう

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親の期待に応えられない【家族エッセイ】

親の期待に応えられない【家族エッセイ】

私は自分のことを大切に思うし、大好きだ。
それは両親が幼い頃から私という存在を認めてくれて、愛を注いで育ててくれたからだ。
私は自己肯定感が高い方だと思う。しかし、承認欲求も強いのだ。
その理由は私に成功体験がないからだ。親の期待に応えられた例がないからだ。

私は小学一年生の頃から中学三年生までバスケットボールをやっていた。それなのに金メダルやトロフィーを獲ったことは一度たりともない。

父は私

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母を泣かせた日【家族エッセイ】

母を泣かせた日【家族エッセイ】

人生で一度だけ、母を泣かせてしまったことがある。私が年長の頃だ。
兄と共に悪さをして叱られたのだが、叱られてる最中に私たちがケラケラ笑っていたら母が泣いてしまった。なぜ叱られたのかも、その前後のことも何も覚えていないのに、母を泣かせてしまったという事実だけは20年経っても覚えている。

小学校に上がるまで、母の口から「お父さんに電話するよ。」という台詞をよく聞いていた。父の帰りが遅い日は好き勝手が

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父の涙【家族エッセイ】

父の涙【家族エッセイ】

私の10歳の誕生日に、我が家にうさぎがやってきた。そのうさぎは灰色でもぐらみたいだからと父に「もぐたん」と名付けられた。

長年、犬を飼いたいと里親募集のページを印刷して提出し続ける私と頑なに却下し続ける母とのやりとりを見ていた父が、折衷案として連れて来てくれたのがもぐたんだった。

もぐたんはホーランドロップのメス。ホーランドロップの性格をネットで調べると、「人懐っこく愛嬌がある。活発で好奇心旺

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思春期でも父のことが大好きだった理由【家族エッセイ】

思春期でも父のことが大好きだった理由【家族エッセイ】

最近、中学生の娘を持つ男性がこんなことをぼやいていた。
「うちの子、最近口を利いてくれなくなっちゃった。やっと口開いたと思ったら「キモい!臭い!ウザい!」だよ。るいちゃんはお父さんが嫌いな時期あった?」

自分に置き換えて想像してみた。戦慄した。そんな言葉を私が父に投げかけたらどうなることか。

私が父を嫌っていた時期はない。
喧嘩している時以外、父のことは好きだ。

私の父は、恐かった。
怖いと

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父との切ない思い出【家族エッセイ】

父との切ない思い出【家族エッセイ】

私は6歳の頃、七五三に向けて髪を伸ばしていた。
幼稚園の日は、母が髪を結ってくれた。母は髪を結ぶのが得意ではなかったと言うが、写真に映る私はいつも可愛らしい髪型をさせてもらっていたと思う。

その日は休日。父と二人で出掛けることになった。
「今日はお父さんが髪を結ぶよ。」
私の記憶の中では父に髪を結ってもらったのはその日が初めてだった気がする。
どのくらい時間が掛かっただろう。母がやってくれるより

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父の酒癖【家族エッセイ】

父の酒癖【家族エッセイ】

うちの父の最大の欠点は酒癖である。
休肝日など1日たりとも存在しない。休日は昼間から飲む時もある。

父は今までに酒による悪事を何度もしでかしてきた。

父は飲酒によって気が大きくなったり、怒鳴ったり、暴れたりするタイプではないのがまだ救いなのだが、如何せん自損事故が多すぎるのだ。

私が高校3年生の頃のクリスマスの日。父は会社の部下と飲みに行ったので、母と2人で寿司をとって静かな夜を過ごしていた

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初めての彼と父ちゃん【家族エッセイ】

初めての彼と父ちゃん【家族エッセイ】

「そんな話お父さんにしたら可哀想だよ。」
と、娘を持つ男性に言われたことがある。

「そんな話」というのは所謂‘‘恋バナ’’だ。
私はよく父に恋愛話をする。
自分より人生経験が豊富で、尚且つ私のことを良く知る異性、こんなに都合の良い相手が他にいるだろうか。

私が初めて異性と交際の約束を交わしたのは高校2年生、16歳の頃だ。
彼とは1年生の頃同じクラスだった。バスケ部の彼にマネージャーにならないか

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誰よりも幸せであってほしい人【家族エッセイ】

誰よりも幸せであってほしい人【家族エッセイ】

私には4歳年上の姉がいる。
私達は顔面も骨格も似ていなければ性格も思考もまるで違う。
本当に同じ血を分けているのか疑わしい程に何もかもが正反対だ。
「るいが同じクラスにいても絶対に仲良くなってなかった」
と姉は言う。私も同感だ。

昔、私は姉に嫌われていた。
姉が就職して家を出るまで、姉が私に笑顔を向ける事はなかったように思う。
それも無理はない。

私は姉のお菓子を盗み食う悪童だった。
当時「カ

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父が居なくなった日【家族エッセイ】

父が居なくなった日【家族エッセイ】

2022年6月。
目の不調が気になり眼科に行くと、網膜剥離と診断され手術を受ける事になった。
目薬で治せるくらいの軽いものだと思っていたので医師から「このままじゃ失明するから1週間後には手術を受けて」と告げられた時の衝撃は大きかった。

実は異変はその年の1月頃から感じ始めていた。
しかしその時は横になってスマホを眺めている時のみに異変が起こる状態だった為、あまり問題視していなかった。
それが数ヶ

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