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ロンドン日記 第2章 <2018年10月-2019年12月>

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大学院卒業後、難民支援チャリティでの日々
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2019年と、この10年の振り返り

(2019/12/31) 2019年もあと3時間で終わる。 2019年が思い通りの年だったかというと、そうでもない。大学院を終えたあとの余裕のある生活ではあったが、精神的に今一つみたいな時もそれなりにあった。また、立てた目標も達成できたわけでもない。でも、今2019年の1年間と、2010年からの10年の視点で振り返ると、いい一年だったと静かに思える。 週3で通っているチャリティで、自分の居場所ができたし、信頼されていると感じられるようになった。書き物については、全く数をこな

難民支援NGOでの小旅行 - 最終日

(2019/11/30) 朝9時、エクササイズの場所にはレイ、エミリー、アナ、Wと私しかいない。昨晩遅くまで宿題をやっていたCRはベッドに入ってから、我々スタッフの隣の部屋でOと女子トークみたいなのをずっとしていたので(彼らはフランス語でずっとしゃべっていたから)、多分こないかなと思ったら、やはり最後まで来なかった。 エクササイズを終えて、ちょっと外を歩こうとアナが提案する。Wは珍しく来ない。我々4人だけでちょっと散策する。アナが、昨日のWの言葉を思い出すという「こんなに広

難民支援NGOでの小旅行 - 2日目

(2019/11/30) 朝8時、シャワーを浴びに、部屋で一番早く起きる。本当は夜に入りたかったのだけど、シャワーが壊れていて使えず、他にバスルームはないかと朝確認したら、ビンゴ!、目立たないところにあるバストイレにシャワーがあった。昨晩はインドネシア人のレイと私しかシャワーを所望しなかったので、これってアジアンな習慣なのか?と一人思う。 9時に予定通りエクササイズを始める。グラウンドフロアの小さな体育館のような所で、ドアを開けるとすぐそこは朝の緑が広がっている。タイチーの

難民支援NGOでの小旅行- 1日目

(2019/11/29) NGO「R」は年に2回、Retreat(静かな場所への隠遁、避難)を行う。その名の通り、ロンドンの喧騒を離れ、どこかの田舎の宿泊施設を借りて数泊する。一つはセラピーを主にしたリトリート、もう一つはアクティビティを主にしたリトリートで、今回私がメンバーとスタッフと一緒に行くことになったのはセラピーを主にしたリトリートだった。日常を離れ、自然の中で過ごすことで、メンバーの精神面には大きな効果があるとされ、ファンドをとって必ず行われる大切な行事である。 R

「きちんとした仕事」という呪縛

(2019/11/28) 長らくブログを更新していなかった。忙しかったとか色々あったけれど、ちょっと鬱々としていたというのがある。 もともとイギリス滞在は、1年目:大学院準備、2年目:大学院、3年目:NGO(必ずしも有給でなくてもよい)、という計画を立てていて、その通りに「大学院生」という身分を終え、念願叶ってロンドンのNGOで週3活動してはいる。NGO以外にもやることはあるので、すごい暇というわけではないものの、「無給」という選択をしたことが、こんなにも精神的負担になるとは

身体イメージ

(2019/07/03) 物心ついた時から、顔の大きさや肉付きについて悩んできた。他人がどうかは知らないが、1日のうちでも朝と夕方の顔は違うし、前日と今日も違う。体重が一キロ違えば、輪郭は結構違ってくる。自分にとって心地よい、いい状態をキープするのが難しい。渡英する前の3年くらいは、自分なりに比較的いい状況を保てていたので過信していたが、ここ最近一気に2キロ太ったことで、非常に心地悪い。 そんなことを最近毎日考えていたが、NGOで出会ったLにそんなことは言えなかった。ただ一

経験の共有 -Supervisionの時間

私のいるNGOでは月に一度、外部から雇った臨床心理士によるsupervisionがある。何かというと、臨床心理士とディレクターを除いた全スタッフが、その雇った臨床心理士に色々相談できたり話を聞いてもらえたりする時間である。(うちの団体の臨床心理士に関しては、彼らは仕事の一環として自分のセラピーの時間を必ず設けているので、ここに含まれない) 私はこの月一度の機会を割と楽しみにしている。というのも、Rで過ごしている中での何気ない感想を他のメンバーと共有すると、彼らから新しい視点が

異質で美しいもの

(2019/05/12) 今、この文章を書きながらBGMで流しているのは、金曜日にルイスのライブに行った際にもらったデモテープ(をダウンロードしたもの)である。 金曜日、NGOでのオフィスワークとガーデンでのコミュニティディナー作りを終え、キャリーと一緒にルイスの誕生日ライブに行った。キャリーとルイスと私は、毎週火曜日にコミュニティーランチを作っている仲間である。ルイスは長身のスコティッシュのイケメンで、建築家でありながらミュージシャンという才能の塊みたいな男子で、Jという素

コソボおじさん

(2019/04/26) 寿司屋のバイトは、相変わらず細々と続けている。ぴちぴちの学生じゃないし、将来飲食業をするわけでもないので、週3もするのは不毛だなと今月からは週2くらいに落ち着いている(さすがに週1にしようとしたらできなかった)。 お客が帰って掃除等すべてが終わる23時過ぎから、日本人シェフと日本人フロアスタッフは大体毎日みんな飲み始めるのだが(日本人以外のスタッフは仕事終わったらすぐ帰る)、”日本人的に”雰囲気を読んで、私も白湯を飲みながら座っているのだが、ここで

コミュニティフォーラム

(2019/04/01) 今週は、なんとなく調子が悪かった。SNSで発信される色んな人の言葉がひっかかったり、煩わしくも感じるようになった。寿司屋のバイトをはじめて忙しいのと、そもそも寿司屋でバイトすることそのものへのモヤモヤ感と肉体へのダメージの問題もある。 とはいえ、年初から抱えていた、大きなファンドレイジングの申請書を出し終え、4月を迎えるから、すっきり感も一応ある。 ***** さて、NGOのことは、記録として残しておきたい、と思うので、先日のイベントを書き留めてお

他人へのアプローチの仕方

(2019/03/11) 今年還暦を迎えられる、尊敬するご夫妻がロンドンを離れることになり、送別ということで素敵なレストランでお食事をご一緒させて頂いた(でも私は有り難くご馳走になった)。 ヨーロッパで長く暮らし、ヨーロッパ社交界や日本のトップマネジメントに長年関わっているご経験等も含めた、人生の深みのあるお話を様々伺う。豊穣という言葉が浮かんでくるくらい、お二人が人生を豊かに耕してこられたことがよくわかり、同年代と話すのとは違う感覚を覚える。 私がこれからしようとしているこ

チャリティで、金曜夜のお出かけ

先週の金曜日、いつもの通りコミュニティガーデンで皆でご飯を作って (金曜は難民のメンバーが交代でメインシェフとなって、スタッフはそのアシストをする)、皆でご飯を食べたあと(その日はイランの炊き込みご飯&トマト野菜の煮込み&サラダだった)、メンバーの一人が出演している演劇を観にバスに乗ってロンドンブリッジまでお出かけをした。 開演は19:30、イズリントン地区からロンドンブリッジまで時間がかかるので、気持ち早めにガーデンを後にする。ケースワーカーのアナが、全員いるかどうかまる

今更、イギリスの婚姻制度に驚く

(2019/02/17) 日本で同性カップルが婚姻の自由求めて一斉提訴した、の記事を読み、数日前のNGOでの臨床心理師との会話をふと思い出した。彼女の薬指の指輪にはじめて気づいて、結婚しているのか聞いたら、「婚約しているけど、civil partnershipの法律が今年変わるからそれまで待っているの。婚姻は伝統的で、家父長制的だしね」と。 私はてっきり、うちの団体はスタッフ・メンバーともにゲイ、レズビアンが多いから、彼女もレズビアンなのかな、と勘違いをした。イギリスはL

難民支援チャリティ「R」に関わることの効能

(2019/02/11) 私が関わっているNGO(Rと表記しよう)について書きたい。ここは、難民、それも拷問、集団的暴力(レイプとか)、投獄等によりトラウマを抱えた人たちのための団体だ。 私がこのNGOに心惹かれたのは、物理アプローチと精神的アプローチを両輪で回していて、家族のようなコミュニティを形成しているからである。何かというと、メンバーのニーズは人によって違うけれど、大きく分けると1物質的な、生活に関わるニーズ(難民ステイタスを得て英国に暮らすための申請に始まり、住