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コミュニティフォーラム

(2019/04/01)
今週は、なんとなく調子が悪かった。SNSで発信される色んな人の言葉がひっかかったり、煩わしくも感じるようになった。寿司屋のバイトをはじめて忙しいのと、そもそも寿司屋でバイトすることそのものへのモヤモヤ感と肉体へのダメージの問題もある。
とはいえ、年初から抱えていた、大きなファンドレイジングの申請書を出し終え、4月を迎えるから、すっきり感も一応ある。

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さて、NGOのことは、記録として残しておきたい、と思うので、先日のイベントを書き留めておこうとおもう。
R(団体名を頭文字でよんでみることにする)では、2ヶ月に一度、コミュニティフォーラムなるイベントがある。これは、スタッフ、メンバー、ボランティアが参加して、色々なことを自由に話し合う場である。今回のテーマは、Rが今皆にとってどういう存在なのか、そして皆が活動の中でどうしたいのか、という根幹に関わるものであった。

今回のファシリテーターは、初老のマリー。彼女は毎週火曜日にやってきて、Rのサイコセラピストたちのカウンセリングを担当している人物である。
まず、今のRが皆にとってどういう存在なのか、一言で表して紙に書くという。サンクチュアリ、家族、コミュニティ、村、組織、友達、というアイデアが皆から出てくる。それをサブファシリテーターのクリスティンが紙に書いてから、床に置く。その紙の周りを皆でウロウロ動き回り、同じ紙に集まった人と話しながら、紙にコメントを残していく。終わったら、それぞれのアイデアの発表である。家族と書いた人は、「兄弟を皆助けるようにお互いを助け合う」「協働する」「自分の本当に家族のような存在」、サンクチュアリと書いた人は「安全な場所」「秘密が守られる」「傷つくことがない」「ジャッジされない」、村と書いた人は「いつもそこにあり、いつでも戻ってこられる」、等々のコメントを寄せていた。そして、組織、を選んだ人が、「代表のエリーがリーダーとなって、皆を一つに纏めている」とコメントした。そしたらエリーはこういったのだ。「確かに私が色んなことを決めたり、理事と協議したり、お金をとってきたりしているけど、それはあくまで目的を達成するための役割の一つであって、メンバーもスタッフもボランティアも、皆それぞれに違った役割を持っているだけなの」

このエリーのメッセージは重要だ。Rはみんなで作り上げている家族のようなコミュニティで、誰も疎外されないし、皆が受け入れられているし、皆一人一人の存在に意味がある。そして、私自身もそのことにすごく救われている。

その次のお題は、Rの中でどのようにありたいか、また、どのような同意事項があるのか、お互いにどうすべきか、だった。その中で、今日は一人新しいメンバーがいたため、自分がRに来た時を思い出しながら、どうしたらよいのかを話しあうことになった。すると、一人のメンバーが挨拶とハグについて指摘した。時々、挨拶をちゃんとしてくれない人がいて、傷つく、と。また、挨拶のときのハグは、人/文化によっては受け入れ難かったりするから、気をつけないといけない、との指摘もなされた。文化の話にもなったので、ここでRのcharterについてエリーが触れることになった。そのcharterの中には、「皆がそれぞれ固有の意見を持っていることを尊重すること、しかし、いかなる人種、肌の色、宗教、国籍、身体的特徴、性的志向に対する攻撃も、ヘイトスピーチも偏見も許されない」と書かれていた。

すると、一人のメンバーVが、この前こういうことがあったんだけど、と話を始めた。あるメンバーがバングラディシュ人についての差別を皆がいるところで話したから、僕は、今はこの場にバングラディシュの人がいないけれど、もしいたらどうするんだ、と非難したんだと。間髪いれずに、その差別発言した本人Mが、キレ気味に話しはじめる。差別したわけでなく、バングラディシュ人から嫌なことをされたことがあったのだ云々と。彼はヒートアップして、でも発言にはやっぱりすごく差別も感じられるから、Vがお前はわかってないとばかりに応酬する。場をうまく鎮めたのはマリーだった。彼女は、「Mは本当に嫌な思いをしたんだね。大変だったと思う。差別は個人的な経験に紐づいていることも結構多いんだけど、Vがいうように、それは人種等に紐づけて一般化してはいけないんだよね。でも、差別意識をなくすことは本当に難しいから、みんな一人一人よく気をつけないとね。」MもVのどちらのプライドにも配慮した彼女の柔らかな言い方で、空気がすっと変わったのがわかった。

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その後バイトに行こうと急いでいると、エリーと一緒になった。二人で小走りしながら聞いてみる。
前にいた団体でも(彼女は大きな団体二つを経験している)、コミュニティフォーラムのような、皆がそれぞれ意見を言える場はあったのかどうか。
エリーは「皆、そういうのを作ろうとしてたけど、なかなか続かなかった」と。

Rの経験は、UKチャリティに固有のものでなく、Rに固有のものなんだな、とまた一つわかった瞬間だった。


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