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身体イメージ

(2019/07/03)
物心ついた時から、顔の大きさや肉付きについて悩んできた。他人がどうかは知らないが、1日のうちでも朝と夕方の顔は違うし、前日と今日も違う。体重が一キロ違えば、輪郭は結構違ってくる。自分にとって心地よい、いい状態をキープするのが難しい。渡英する前の3年くらいは、自分なりに比較的いい状況を保てていたので過信していたが、ここ最近一気に2キロ太ったことで、非常に心地悪い。


そんなことを最近毎日考えていたが、NGOで出会ったLにそんなことは言えなかった。ただ一言言えたのは、「人にはそれぞれ、comfort zoneがあるよね」ということだけだった。

彼女は最近うちの団体に週一回ケースワークのボランティアに来始めた。彼女には片足がない。数年前に交通事故にあったためだ。
初めて会った時、私には寒い日だったのに、キャミソール一枚で肩に大きな刺青があって、それが金髪のショートカットによく映えていて非常に印象的だった。早口でよく喋り、よく笑って、可愛いなと私は思った。
その日は、会って2回目の日だった。ランチの買い出しに一緒に行くことになり一緒に歩いて初めて、彼女が足を引きずっていることに気づいた。道すがら、今までの経歴のこと等いろんな話をしたのだが、彼女が、事故に遭う前に比べて10キロ太ったと、その前はよく走ってたけど、走れなくなっちゃったから、と話した。それに付け加えて、前は本当に細かったし、「小さい細い私」をキープしてたから、今はuncomfortableなんだ、と。足を失ってしまったことで引き起こされる様々な痛みは私には到底理解できないけれど、自分で自分の体をそれなりにコントロールできる私が2-3キロ太ったことで感じる憂鬱さの1000倍くらいの痛みを彼女が感じているだろうことは、想像できた。自分の身体イメージを強固に持っている彼女だから余計に辛いだろうことも。

その昼、ディレクターのエリーとLと三人で、持って帰ったランチを食べていると、エリーが最近あったこととして、「Love Island」というテレビ番組の話をしだした。12人のシングルの男女のセレブがフィジーの島で5週間過ごすというイギリスのリアリティー番組で、エリーはこの番組が嫌いなのだが、14歳の娘が家で見ることを禁止することができないという。「何かを禁止する」という行為に抵抗があるらしい。この番組の何が嫌かっていうと、この現代において、全員が異性愛主義者で、ほとんど白人で、出てくるセレブたちは筋肉むきむきの男性か所謂ナイスボディーの女性たちで、古いボディイメージとジェンダー観を押し付けていると。そして、誰が好きか嫌いとか、そんなことをずっと話しているだけで、何の有意義な話もないと、彼女は一刀両断した。だから、娘がこの番組を見ることでの無意識下での影響を恐れているらしい。そこで話は身体へのイメージの話になり、Lが自分の妹は自分の”美”にものすごくお金をかけていると話しだした。そこに、妹への批判も含まれているなと思ったけれど、先ほど聞いたLの話を考えると、平均的なブリティッシュ以上に身体イメージを考えるような環境で彼女は育ってきたのじゃないだろうか。

私は、イギリス、ロンドンでは、皆肌は露出しているし、太っても全く気にせず、ショートパンツ(お尻がはみ出ている)やスパッツ(お尻の線は丸見えである)を履いているから、みんな自由にありのままの自分を楽しんでいる、と思っていたのだ。
もちろん、”ヘルシー”であることへの意識も高いのだけれども(ベジタリアン、ビーガンも多いし、ランニング等エクササイズをしている人は大変多い。)

肉体を持って生まれてきている以上、何らかの自分なりの身体イメージを持たざるを得ないし、そもそも、この魂と肉体をよりよく使いきることが使命なのだろう。人は老いるし、怪我や病気もするし、心の状況とその時置かれた状況と肉体もそれぞれリンクする。社会が押し付けてくる身体イメージや自らの強迫観念的なイメージからも解き放たれつつ、自分なりの身体イメージで、その時々の身体と向き合うことが重要なのかと思うけれど、私はきちんとそこに向き合っているだろうか。

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