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毎週ショートショートnote

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たらはかに(田原にか)さんのゆる募企画、毎週ショートショートnoteに参加させていただいたものをまとめております。
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#nijijourney

小説(SS) 「残虐! 涙のポッキーゲーム!」@毎週ショートショートnote #半笑いのポッキーゲーム

小説(SS) 「残虐! 涙のポッキーゲーム!」@毎週ショートショートnote #半笑いのポッキーゲーム

 ふはははははははははははははははは!!!
 やはり侑斗はポッキーゲームを仕掛けてきたか。以前からお前が、晴香ちゃんとキスをしたがっていたことは知っていた。そして十歳も離れた兄から、変な入れ知恵をされて、ポッキーの端と端を男女で咥えて食っていくゲームを計画していたことも!

 侑斗はスケベだ! 変態だ! お前が友達に相談して、晴香ちゃんとポッキーできるように仕組んでいることはお見通しだ!
 だから

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小説(SS) 「メガネの行方」@毎週ショートショートnote #メガネ朝帰り

小説(SS) 「メガネの行方」@毎週ショートショートnote #メガネ朝帰り

お題// メガネ朝帰り


 大切なメガネだった。
 ばあちゃんが誕生日にプレゼントで買ってくれたやつだったから、いつも大事に扱っていた。
 けれど現実は、残酷で非情だ。
 身体中がちくちくする感覚で目を覚ましたとき、おれは路上の植え込みでイチョウの木を抱きかかえながら頬擦りをしていた。朝になっていた。
 二十歳になって、初めて参加する飲み会だった。数種類のカクテルを飲んだあたりから、なにも覚え

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小説(SS) 「火星の別件逮捕」@毎週ショートショートnote #火星の別件逮捕

小説(SS) 「火星の別件逮捕」@毎週ショートショートnote #火星の別件逮捕

お題// 火星の別件逮捕
 

 スコップがなにか硬いものに当たり、デマルクはその周辺からていねいに土を掘り起こした。
 出てきたのは、鈍い金色をした小型の金属だった。その形はどこか飛行機のように見え、ロケットのようでもあった。

「これはまさか、オーパーツか?」

 デマルクは、火星の開拓用プラントで掘削作業員として働いていた。いわゆる出稼ぎ労働である。プラント内は酸素で満たされているとはいえ、

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小説(SS) 「みんなの手紙」@毎週ショートショートnote #伝書鳩パーティー

小説(SS) 「みんなの手紙」@毎週ショートショートnote #伝書鳩パーティー

お題// 伝書鳩パーティー
 

 人間から手紙を託された伝書鳩たちは、旅の途中なにをしているのでしょうか。まったく休まずに、目的地に向かっている? 夜くらいは寝ている?
 いえいえ、とんでもございません。
 呑んだくれているのです。
 ここは、多くの伝書鳩たちが集まる道の駅。
 今日はその様子を覗いてみましょう。

「やっべえ! 手紙なくしちまったよ!」

「わたしもよ! 大統領から同盟国に送る

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小説(SS) 「ブーメラン発言道」@毎週ショートショートnote #ブーメラン発言道

小説(SS) 「ブーメラン発言道」@毎週ショートショートnote #ブーメラン発言道

お題// ブーメラン発言道

 
「おいおい、そんなたくさん料理を持ってきて食べきれるのか?」

「なに言ってんだ、おまえが逆にモノをとってこなさすぎなんだよ」

「おれはな、食べ放題で意地を張って、己が愚行に苦しむ連中をこの目で見てきたんだ。だからわかるんだよ。その調子だと今日も満腹に悶える姿を拝むことになる」

「とはいえよぉ、腹に余裕があるにもかかわらず、たらふく食べないなんざぁ、金の無駄だ

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小説(SS) 「なんだか気になるATM」@毎週ショートショートnote #グリム童話ATM

小説(SS) 「なんだか気になるATM」@毎週ショートショートnote #グリム童話ATM

お題// グリム童話ATM
 

 その少女は、おかあさんからケーキとぶどう酒を受け取ると、とおくはなれた森に住むおばあさんに届けるため、あしばやに家をでました。
 おばあさんに会えると思うだけで、なんだか気持ちがうきうきしてきます。少女は大好きなおばあさんからもらった赤ずきんがとてもお気に入りで今日も頭からかぶっていました。

 森へとつながる道の途中、少女は大きなATMを目にしました。それを見

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小説(SS) 「メガネ初恋バトル」@毎週ショートショートnote #メガネ初恋

小説(SS) 「メガネ初恋バトル」@毎週ショートショートnote #メガネ初恋

お題// メガネ初恋
 

 ウォーミングアップを完了した慎一郎は、メガネをくいとやると、所定の位置でクラウチングスタートの姿勢をとった。横を見る。競争相手の涼太が、鋭い視線を返してきた。

 一目惚れした初恋相手の美帆をかけての勝負だった。共に学年トップの成績を誇る二人は、勉強面では互角であり、その決着をつけるためにはスポーツ以外になかった。
 すべてが委ねられた徒競走を見るべく、校庭にはぞろぞ

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小説(SS) 「彼女を表すオノマトペ」@毎週ショートショートnote #オノマトペピアノ

小説(SS) 「彼女を表すオノマトペ」@毎週ショートショートnote #オノマトペピアノ

お題// オノマトペピアノ

 
 ひときわ目立つピアノだった。
 二回目のデートで、彼女とショッピングモールに訪れていた隆史は、中央広場の特設体験ブースの前で足を止めた。
 すかさず案内スタッフおばさんが近づいてくる。

「実はこちら、ただのピアノじゃないんです。なんと最新鋭のAIを搭載してまして、ピアノの鍵盤を鳴らしていただくだけで、あら不思議! その人を象徴するオノマトペを教えてくれるんです

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小説(SS) 「秘密の教室」@毎週ショートショートnote #理科室まがった

小説(SS) 「秘密の教室」@毎週ショートショートnote #理科室まがった

お題// 理科室まがった

 理科室をまがったところに、使われていない教室があった。鍵のかかった引き戸の内側には高くまでダンボールが積まれており、廊下側から中の様子を覗くことはできない。ぼくはいつも、その横を通る度に胸のざわつきを感じていた。理由はわからないが、なんとなく異様な雰囲気があるように思えた。
 だからぼくは休日、学校に忘れ物をとりにいったついでに忍び込むことを決めた。

 この日のため

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小説(SS) 「デブリ帯ドライブ」@毎週ショートショートnote #だんだん高くなるドライブ

小説(SS) 「デブリ帯ドライブ」@毎週ショートショートnote #だんだん高くなるドライブ

お題// だんだん高くなるドライブ

 商社に勤めるアイナ・リスボンは、火星周縁部にある採掘資源衛星N16に視察で訪れるべく、その玄関口のシャトル発着所にきていた。

「すまないがね、お嬢ちゃん。そのチケットじゃ、乗せてやるわけにはいかねぇんだ」

「なんでですか、会社から事前に発行されたもので照合はとれているはずです」

「そいつぁ、一ヶ月以上も前のレートのものだろ? ここ最近はな、毎日のように

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小説(SS) 「いつだってエコノミークラス」@毎週ショートショートnote #ダウンロードファーストクラス

小説(SS) 「いつだってエコノミークラス」@毎週ショートショートnote #ダウンロードファーストクラス

お題// ダウンロードファーストクラス
  

 飛行機で出張するといっても、会社の経費で落ちるのは格安航空会社のエコノミークラスまでだ。
 またあの狭くて気の休まらない空間に放り込まれることになるのか、そう考えると誠司はいつも気が沈んでいた。二時間しか乗らないから、機内食も出なければ、映画も微妙に見きれない。たいていは、クライマックスに差しかかった頃になると目的地に到着してしまう! その割に、新

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小説(SS) 「商店街に行こう!」@毎週ショートショートnote #ヘルプ商店街

小説(SS) 「商店街に行こう!」@毎週ショートショートnote #ヘルプ商店街

お題// ヘルプ商店街

 おばあさんは目を覚ますと、今日は天気がいいから商店街にでも行こうと思い、ゆっくりと布団から這い出ました。
 身寄りのないおばあさんにとって、毎日はとても退屈です。楽しいことといえば、商店街に出かけて仲のいい知り合いとお話するくらいのものでした。

 商店街では、若い人が優しく話しかけてくれて、買い物したものを代わりに運んでくれたりします。おばあさんは、長年生きてきてこん

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小説(SS) 「筋肉推理」@毎週ショートショートnote #名探偵ボディビルディング

小説(SS) 「筋肉推理」@毎週ショートショートnote #名探偵ボディビルディング

お題// 名探偵ボディビルディング

「わかりました。これは、類まれなる筋肉の持ち主による犯行です」

 もはや迷宮入りと思われた密室の殺人現場に現れたのは、筋肉でいまにも弾き飛びそうなタキシードをまとった謎の紳士だった。

 男は、自らを名探偵ボディビルディングと名乗ると、立ちすくむ刑事たちの前に歩み出た。おもむろに中腰になり、両腕で円を描くように構えて全身に力を込める。
 服が爆ぜてしまった。

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小説(SS) 「路上の旅先」@毎週ショートショートnote #ネコクインテット

小説(SS) 「路上の旅先」@毎週ショートショートnote #ネコクインテット

お題// ネコクインテット  ※1,600字くらい

 飼い主が出かけている隙を狙い、その気まぐれな好奇心から家を抜け出した老猫ジョーンズは、すぐに後悔した。
 帰り道が、わからなくなってしまったのである。
 老いゆえの己への過信か、こっちだと思った方向に行けば行くほど、見知れぬ建物に出くわした。

 それからの三年間、ジョーンズに待ち受けていたのは、くさい飯を食う毎日だった。

「ああ、ケーキが

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