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小説(SS) 「なんだか気になるATM」@毎週ショートショートnote #グリム童話ATM

お題// グリム童話ATM
 

 その少女は、おかあさんからケーキとぶどう酒を受け取ると、とおくはなれた森に住むおばあさんに届けるため、あしばやに家をでました。
 おばあさんに会えると思うだけで、なんだか気持ちがうきうきしてきます。少女は大好きなおばあさんからもらった赤ずきんがとてもお気に入りで今日も頭からかぶっていました。

 森へとつながる道の途中、少女は大きなATMを目にしました。それを見るのは初めてだったので、一回くらい使ってみたいと思いましたが、そもそもお金を持っていないので、気持ちをぐっとこらえることにしました。

 森の入り口に少女がふみこむと、お腹を空かせたおおかみが出てきました。おおかみはとても丁寧な言葉づかいだったので、少女は話しこんでしまい、自分が森にきた理由などをしゃべりました。

「おばあさんはどこに住んでいるんだい?」

 おおかみが言いました。少女はたずねられましたが、じつはその頭の中ではATMへの興味でいっぱいになっていました。だんだんとお腹もへってきたこともあり、会話はうわの空になっていました。

「いったい、どこなんだい?」

 二回目のしつもんで、ようやく我に返った少女はしかし、ATMのことばかり考えていたせいで、あろうことか、ATMのある場所を口走ってしまいました。

 おおかみはそれを聞いてニヤリと笑うと、少女が伝えた住所へすぐさまむかいました。おばあさんを見つければ、ぺろりと食べてお腹いっぱいにできるとたくらんでいるのです。

 しかし、おおかみが目にしたのは、おばあさんの家ではなく、ATMでした。

 それはそれはとても大きなもので、衣をまとったエビのモニュメントがどどんと置かれていました。
 看板をよくみると、そこには英語で「Amazing Tempura Museum」という文字が書かれています。
 ATMは、全国から集められたさまざまな天ぷらを食べることができる商業施設「すばらしい天ぷら博物館」のことでした。

 おおかみは目をかがやかせました。

 そして、天ぷらをお腹いっぱい食べましたとさ。

〈了〉846字



ATMとはなにか。様々なアイデアを出していく中で私がたどりついたのは、「Amazing Tempura Museum」(すばらしい天ぷら博物館)でした。。

「Amazing Tempura Mutant」(驚異的な天ぷらミュータント)とどちらにするか、最後まで悩んだのですが、ちょっと意味がわからない気がして……。
最終的に、ラーメン博物館みたいにたくさん天ぷらが食べられるところに着いて嬉しい! というお話のハッピーエンドにしてみました。

なんで天ぷらというワードが出てきたんだろう、と思っていたのですが、たぶん昨日のお昼に天丼を食べたからかもしれないです。

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