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小説(SS) 「彼女を表すオノマトペ」@毎週ショートショートnote #オノマトペピアノ

お題// オノマトペピアノ

 
 ひときわ目立つピアノだった。
 二回目のデートで、彼女とショッピングモールに訪れていた隆史は、中央広場の特設体験ブースの前で足を止めた。
 すかさず案内スタッフおばさんが近づいてくる。

「実はこちら、ただのピアノじゃないんです。なんと最新鋭のAIを搭載してまして、ピアノの鍵盤を鳴らしていただくだけで、あら不思議! その人を象徴するオノマトペを教えてくれるんですよ」

「へえ、そんな機能が。どうする、やってみる?」

 手をつなぐ彼女と目を合わせる。彼女は、無言でこくりと頷いた。
 隆史は、おとなしくて上品さもある彼女のそんな部分が好きだった。その雰囲気や彼女の人間性を、AIはどのように表現するのだろうか。

 彼女が鍵盤を人差し指で押した。まもなくして、ピロンという電子音とともに、結果がレシートのように出力されてきた。

 ぺちゃくちゃ。書かれていたのは、イメージとは正反対の答えだった。

「えっ? 冗談でしょう。壊れてるんじゃないですか、彼女はそんな――」

 しかし繰り返しても、結果は同じだった。
 べらべら。わちゃわちゃ。がやがや。それ以外のものが出てくることはなかった。
 彼女が不敵に笑った。

「アハ、アハハハハハハ! まぢすごい、めっちゃ当たってんじゃん! おとなしい演技も、ぜ〜んぶお見通しってこと!? やっべー、まぢやっべー! ハハハハハハハハ! はー、まぢ笑えねーー!!!」

 隆史は、彼女の豹変ぶりに驚愕した。
 しかしきらいではなかった。むしろそれがまた、隆史の心をさらに燃え上がらせた。
 

〈了〉643字



なんの話を書いてるんでしょう。。
苦戦したことの裏返しでもありますが。。

この企画に参加して30回を越えたあたりから、
アプローチのパターンを変えるのが難しくなってきた感じがします。(出尽くしてしまった……!?)

前回と前々回がシリアス寄りだったので、
今回はコミカルに書いてみました〜。

↓↓ 前回 ↓↓



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