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小説(SS) 「メガネ初恋バトル」@毎週ショートショートnote #メガネ初恋

お題// メガネ初恋
 

 ウォーミングアップを完了した慎一郎は、メガネをくいとやると、所定の位置でクラウチングスタートの姿勢をとった。横を見る。競争相手の涼太が、鋭い視線を返してきた。

 一目惚れした初恋相手の美帆をかけての勝負だった。共に学年トップの成績を誇る二人は、勉強面では互角であり、その決着をつけるためにはスポーツ以外になかった。
 すべてが委ねられた徒競走を見るべく、校庭にはぞろぞろと学校中の生徒が集まってきていた。最強メガネ同士の初恋バトルが始まろうとしているのである。

 ピストルが鳴らされ、二人は同時に駆け出した。
 慎一郎は、ほんの一瞬だけ出遅れたが、すぐさま持ち直し、涼太の横に並んだ。スピードに乗り始めると、少しずつその距離を広げていく。視界を遮るものはない。あとはゴールまでの距離を縮めていくだけだ。そう思ったとき、荒い息遣いがすぐ背後まで迫ってきた。涼太が追い上げてくる。引き離そうとするが、絶えずこちらに食いついてくる。横。気づくと並ばれていた。無心で、身体の赴くままに両腕を振る。しかし振りほどけない。それどころか、涼太は走りながら人差し指でメガネの位置を直しているようだった。熱視線。戸惑いの一瞬、赤い光が慎一郎の耳をかすめた。なんだ、なにが起きた。再び赤い光が、視界の端から飛んできた。炎のような熱さがある。これはまさか。

 涼太がメガネから放ったレーザー光線だった。

 信じられないことだった。
 しかし、間違いなくそれは飛ばされていた。至近距離でのみ効果を発揮する熱線レーザーは、涼太の高性能メガネのレンズ表面で生成され、慎一郎の髪や皮膚を焼き切ろうと、傍からは見えない形で幾度にも渡り迫ってきていた。卑劣奇天烈きわまりないその行為に、慎一郎のはらわたは煮えくり返った。
こんなやつを勝たせてはいけない。プライドというものがないのか。スポーツマンシップは欠片もないというのか。こいつは犯罪中学生だ。そんな危ないレーザーを人に当てていいはずがない。絶対に美帆を渡すわけにはいかない。うす汚い小細工に、屈するわけにはいかないのだ。

 慎一郎は歯を食いしばった。胸を張り、躍動する脚をさらに高く前へと振り上げる。風を切るように遠くの一点を見つめながら、全身の脈動を感じる。
 涼太の姿が視界から見えなくなった。ふと我に返ると、全校生徒たちが沸き起こり、いつの間にか、ゴールラインを越えていることに後から気づいた。

 慎一郎の勝利だった。
 美帆が、大勢の生徒に背中を押されながら、姿を現した。二人は見合い、口ごもった。

「あの……」言ったのは美帆だった。二人を取り囲むように人だかりができ、そこにいる誰もがにやけ、結果を期待していた。

「ごめんなさい! メガネの人はタイプじゃないんです!」

 慎一郎はその場に崩れ落ちると、自らのメガネを叩き割った。
 

〈了〉1,166字



また、くだらない話を書いてしまいました。。
こんな話は400字でまとめればいいものを、また無駄に引き伸ばしてしまいました。。

わたしは、メガネからレーザーが出て戦う話を書きたかっただけなのです。
とはいえ、レーザーだけのバトルではおかしなことになるので、学校っぽいとこで現実的なバトルをさせようとしたら、徒競走バトルになりました。

お題はどこに!

ではではまた〜。

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