- 運営しているクリエイター
#毎週ショートショートnote
小説(SS) 「天ぷらの先へ」@毎週ショートショートnote #天ぷら不眠
お題// 天ぷら不眠
天ぷらに取り憑かれたかれらの一日は、天ぷらに始まり天ぷらに終わる。かれらは天ぷらの揚げ方の研究に没頭し、業界の最前線に立って美味しさへのアプローチを常に更新し続ける。ゆえに風呂に入ることもかなわず己の睡眠欲をも忘れ、気づけばみなが天ぷら不眠民となっている。
調理場でもくもくとエビを油に投げ込んでいる、天ぷら研究の第一人者の加浦揚男は、そんな狂気に憑かれた研究現場に異
小説(SS) 「復習Tシャツとお金」@毎週ショートショートnote #復習Tシャツ
お題// 復習Tシャツ
それは夕食の献立を考えるよりも早く、いともたやすく行われた。通販の注文ボタンは、スマホの画面を押すか押さないか――リビングのベッドで横になりながらでも簡単にできるのである。
ほどほどの年収のサラリーマン夫を持つ二児の母トモコは、インターネットウィンドウショッピングを楽しんでいる最中、怪しい輝きを放つその商品に目を奪われてしまった。
〈復習能力が爆上げ!? 着るだけで
小説(SS) 「薬」@毎週ショートショートnote #アメリカ製保健室
お題// アメリカ製保健室
桜庭シンは、お茶ばかり飲む少年だった。
幼少期に、炭酸飲料は体に悪いから、骨が溶けるからと両親に教わって以来、ファミリーレストランのドリンクバーでもウーロン茶以外を手にとることがなかった。
だから彼は、保健室の先生が「この薬でも飲んでゆっくりしなさい」と言いながら渡してきたソレに驚きを隠せなかった。
セブンティーンアップ。レモンとライムの風味が香る果汁ゼロ
小説(SS) 「ドローンの課長」@毎週ショートショートnote #ドローンの課長
お題// ドローンの課長
課長はいつも、ハエのように飛び回っている。
小うるさいプロペラ音を響かせ、この大型倉庫で入庫作業をしているわたしたちの頭上を一日に何度も通過するのである。
こちらの仕事ぶりを監視するために、遠隔地からドローンを操作しているらしいのだが、わたしたちにとっては邪魔以外のなにものでもない。
どうせ課長はドローンの向こうで寝っ転がったりお菓子をぽりぽり食べているの
小説(SS) 「会員制の粉雪」@毎週ショートショートnote #会員制の粉雪
お題// 会員制の粉雪
その会員制サウナには、今日もたくさんのお客が集まっていた。
体験入店にきていた宇那礼二は、店員の退屈きわまりない説明を聞き流すと、すぐに服を脱ぎ捨ててサウナ室へと繰り出した。
五分とたたないうちに、全身から汗が吹き出してくる。頭にのしかかっていたモヤモヤも、外からの熱に意識が向いていくことで、不思議となくなっていく。エネルギーの高まり。礼二は、ここだというタイミ
小説(SS) 「夜光おみくじ」@毎週ショートショートnote #夜光おみくじ
お題// 夜光おみくじ
新年、明けましておめでとうございます。
ということで早速、初詣にやってまいりました!
ここ夜光神社では、一風変わったおみくじを引くことができるようです。どのようなものか、神主さんにうかがってみましょう!
「この夜光神社には、山で遭難した旅人がホタルの光に導かれたことで人里に無事たどり着けたという言い伝えが残されています。その光は、龍のように一筋に伸びたとされて
小説(SS) 「これぞ日本のクリスマス」@毎週ショートショートnote #ルールを知らないオーナメント
お題// ルールを知らないオーナメント
ハッピークリスマス。また地獄の福音の鐘が鳴らされる時がきた。毎年ジャパンの歌舞伎町では、ブラックサンタクロース忍者が笑顔で寿司をもみもみといつまでも握っている。それは、挨拶代わりの星型クリスマスオーナメント手裏剣をかわした者にしか手にできないクローズチケットが必要になる。幸いにも血を流さずに済んだマイケルは、ルールを知らぬままクリアした。歌舞伎町の夜
小説(SS) 「一千年前の旅」@毎週ショートショートnote #白骨化スマホ
お題// 白骨化スマホ
旅の途中、人だかりができている遺跡があった。
近づいてみると、野次馬たちがざわざわと噂話をしている。どうやら、推定一千年前のものとされる遺跡から珍しいものが出土したらしい。いわく、棺の中から白骨化した死体とともに、スマホが副葬品として見つかったというのだ。
この世界において、スマホは別世界から転移してきた冒険者たちのみが持つ特別なものとして知られている。信じられ
小説(SS) 「助手席の天使」@毎週ショートショートnote #助手席の異世界転生
お題// 助手席の異世界転生
二つの世界の秩序を守るため、私たち天使には、とても重要な役割が与えられています。
それは、混沌とする異世界に光をもたらす英雄をこの世界から送り込むことです。つまりは、特殊なトラックを使って人を適度に轢いていくのです。
轢かれた人は、異世界で特殊な力を手にして転生するので、たいてい喜んでいます。特にここ日本では異世界願望が抜きん出て強いので、絶好の市場として
小説(SS) 「僕のゲーム機」@毎週ショートショートnote #着の身着のままゲーム機
お題// 着の身着のままゲーム機
ゲームのセーブを終え、ヘッドホンを取ったときにようやく異変に気付いた。
我が家の一階が火事になっている。少し前から臭いがおかしいと思っていたが、おばあちゃんが料理を焦がしたのだろうと思っていた。
しかし部屋から降りようとしたときには、すでに火の手がそこへ迫っていた。煙で階段も見えなくなっている。ここからは逃げられないと思い、部屋に戻って窓を開けた。家の
小説(SS) 「戦国時代の片田舎」@毎週ショートショートnote #戦国時代の自動操縦
お題// 戦国時代の自動操縦
有力な武将たちによる合戦とは、無縁だった。
この片田舎には、のんびりと田や畑を耕している百性たちが住むだけで、大きな争いもない。
だが、小領主に仕える新右衛門は、主の居室から放出されている異臭に悩まされていた。主がずっと掃除をしないのである。普通なら女中にやらせればいい話だが、主は人を部屋に入れることをよしとせず、誰かがその一室に近づけば、必要以上の剣幕で
小説(SS) 「おにぎり」@毎週ショートショートnote #ごはん杖
お題// ごはん杖
その老爺は、おにぎりを食っていた。
武士のなりをした男たち十人が、刀に手をかけて取り囲んでいるにもかかわらず、である。
ふっかけたのは、男たちの方だった。道の真ん中で食うな、という一方的な言いがかりだった。
しかし、みなが動けずにいた。斬りかかれないのである。老爺は杖をついたまま、悠々と食い続けているだけだ。だがその所作には、武の熟練を思わせるものがあった。
「
小説(SS) 「出張暗殺サービス」@毎週ショートショートnote #親切な暗殺
お題// 親切な暗殺
そのサービスの見出しを目にしたときは、自分の眼精疲労を疑った。老眼というのもある。しかし、何度よく見ても、やはり書いてある。
〈出張暗殺サービス――特殊な暗殺技術を習得したスタッフが丁寧に対応します! 暗殺された人は、生まれ変わって新たな人生を歩める安心保証付き! 初めての方でもカンタンWEBお申し込み――〉
なんて親切な暗殺なんだ、と思った。
殺した相手を
小説(SS) 「女生徒のラブレター」@毎週ショートショートnote #忍者ラブレター
お題// 忍者ラブレター
色香をまとった女生徒だった。
転校してきた彼女は、黒板の前でクラスに向けて自己紹介を終えると、担任教師の私にだけわかるように小さく微笑んだ。
玲花。そう名乗った彼女に、ひと目惚れしている自分に気付いた。それからというもの、学校にいるときも家にいるときも、彼女のことが頭から離れなくなった。
しかし、その思いは自分だけのものではなかったとわかった。私の靴箱に、