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一生ボロアパートでよかった

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あらすじ:自慢だった新築の白い家が、ゴミ屋敷に変貌していく。父はアル中になり、母は蒸発し、私は孤独になった。ーーー1人の女性が過去を振り返っていく。 連載シリーズをまとめました…
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2023年12月の記事一覧

一生ボロアパートでよかった②

一生ボロアパートでよかった②

 ハナがいなくなってまもなく、母は仕事を始めました。近所のスーパーのレジ打ちのパートです。私は同級生に「あそこのスーパーでお前の母ちゃん見たよ」と言われるのが恥ずかしくて、早く仕事を辞めて欲しいと思っていました。
 しかし、母の勤務時間はどんどん長くなって、朝から晩まで働くようになりました。登校時も帰宅時も、鍵の開け閉めは私の仕事になりました。どうやら違う仕事も始めたようでしたが、それがなんの仕事

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一生ボロアパートでよかった①

一生ボロアパートでよかった①

 私が幼稚園の年長になった頃、両親は家を買いました。新築の白い家です。今思えば大して広くもない、よくある40坪程度の分譲住宅の一つでした。しかし、当時の私にはお城のように広く感じられて、まるで自分がお姫様にでもなったかのような気分でした。太陽の光を浴びると白色の壁面がより輝いて見え、新しく美しい家は、幼い私に自信を与えてくれました。まさか、あの白い綺麗な家がゴミ屋敷になるなんて、誰も思わなかったと

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