第12話:初デートで連れて行かれた怪しいお店
数日後、フランス人の彼との初デート。
仕事を終えて、指定された待ち合わせ場所に向かう。
「今日はどこに行くか、君に決めてほしいんだ!」
そう言うと、バックの中から、
おもむろに3枚の封筒を取り出し、私の前に差し出した。
「さあ、選んで!」
よく訳がわからないまま
とりあえず真ん中の封筒を一つ選び、中を開けてみると
そこには子どもが書いたような手書きの日本語で
“ くらやみれすとらん "
と書かれていた。
?????
あ、怪しい……
「OK!決まったね。さあ、行こう!」
困惑する私をよそに彼が向かった先は
シンガポールのBugis(ブギス)という
若者に人気のオシャレエリアにひっそりと佇む
NOX - Dine in the Dark -
その名の通り、真っ暗闇の中で食事を楽しむという
ちょっと変わったコンセプトの創作料理レストランだ。
へぇ〜こんなお店あるんだ!!!
店スタッフに手を引かれ、ゆっくりと階段を登り
テーブルに案内されて、手探りで席に着く。
コース料理になっていて、前菜からデザートまで一品一品
お洒落(っぽい)お皿が運ばれきては
スタッフの方の誘導で、フォークやナイフを握らせてもらう。
どんなに目を凝らしても、光一つ見えない真っ暗闇。
視覚を取り上げられ、
聴覚、嗅覚、味覚が研ぎ澄まされていく…
真っ暗闇の中、食事をしながら、
正面から彼らしき声だけが聞こえてくる
「想像してみて。僕たちは今、世界に二人きりでボートに乗っているんだ。
ほら、空一面にキレイな星が見えるよ。」
本気なのか
冗談なのか
巧みな想像力で甘い言葉を
陽気に語りかけるけど
「いや、何も見えませんからっwww」
フランス人のスイートなイメージをさらに煮詰め
ギュギュッと濃縮して体現しているような彼が、なんだか可笑しくて。
暗闇の中でのフルコースのディナーを終え
光の世界に戻ってきた二人。
「ありがとう、今日はすごく楽しかったよ!」
そう言って、店を出ようとすると
「ちょっと待って。デートの本番はこれからだよ!」
と彼がニコッと悪戯っぽい笑みを浮かべ
先ほどとは別の、二枚の封筒を差し出した。
だんだん要領を掴めてきた私。
一枚だけ選び、中を開けると、
そこにはこう書かれていた。
“ すけーと ”
「お、ナイスチョイスだね!」
そう言って
今度はバックの中から大きな箱を2つ取り出し、
「君にちょっとしたプレゼントがあるんだ。好きな方を選んで!」
そいういって、私の前に差し出した。
青のストライプ柄のボックスを選ぶと
その中に入っていたのは
黒の毛糸のミトン手袋
常夏の国シンガポール、一体どうやって手に入れたんだろう…
鳩が豆鉄砲を食らったようにキョトンとしていると
「せっかくだから、こっちもあげる!」
と言って、手渡されたもう一つの
赤のチェック柄の箱を開くと
中から出てきたのは
かば柄の青の靴下(笑)
「よし、これで準備ができたね。さあ時間がないよ、急ごう!」
店の前でタクシーを拾い
向かった先は、アイススケートリンク。
もう4年近く住んでいるのに
シンガポールにスケート場があるなんて知らなかった。
夜遅い時間だったせいか、ほぼ貸切状態。
久しぶりすぎる
そして、
突然すぎる
スケートに戸惑いつつ
彼に手を引かれ、童心に返ってスケートを楽しんだ。
まるで初々しい学生のようなデートっぽい、デート。
(実際の写真。動揺が滲み出てるw)
スケートを終えた頃には、もう深夜を回ろうとしていた。
タクシーに乗り込もうとする直前、
彼は、一通の真っ赤な封筒を私に手渡してひと言。
「今日はありがとう!最後の封筒は、家に帰ってから開けてね。」
帰宅後、
心地よい疲労感を感じながら
ベットにゴロンと寝転んで、彼から渡された封筒を開くと…
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今日はすごく楽しかったよ。
ありがとう!
きっと疲れたでしょ。
これで疲れを癒してね。
僕のプリンセス。
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という手紙と一緒に、
スパのチケットが同封されていた。
な、なんという計算され尽くしたサプライズ
恐るべし……
フランス人のデート力!!!!!
>>>つづく
第13話:彼氏じゃない男性と二人きりで海外旅行
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