営業は平日昼間だけ 軽井沢に子育てママのドーナツ店
長野産経新聞さまに大きく取り上げていただきました
https://www.sankei.com/article/20210821-LLXNMHYROZKWBHGA5SZAF6R3OI/
卸で扱ってもらえれば平日の昼間だけ働いて子育てと両立できると金沢市で発祥したドーナツ店「ウフフドーナチュ」。当初は価格競争で苦しんだが、育児ママ支援、食品ロス削減、地産地消…とSDGs(持続可能な開発目標)のキーワード満載のビジネスモデルを世間は見逃さなかった。高級スーパーでも取り扱われ、今や約20人が1日に最大6千個のドーナツを手作りする。今月、長野県軽井沢町の一等地に旗艦店「旧軽井沢店」を出店。この店も平日昼間だけの営業で、スタイルは揺るがない。
高級スーパーが発掘
ウフフ社長の志賀嘉子さん(37)は、雑誌の編集長をしていたが、会社が給与不払いに陥り退職。仲間を守れなかった悔しさが会社を興す原動力となった。志賀さんも5歳の娘がおり、幼子を持つ母親でもできるはずとたどり着いたのが冷凍ドーナツの卸売りだ。
「一度冷凍した方がしっとりしておいしいという人もいます」。商品特性をうまく生かし廃棄も少なく喜ばれたが、平成27年の創業時はコンビニエンスストアが揚げたてドーナツに参入した時期。価格競争のため小売価格を1個100円に決められ、最初の3年は利益が出なかった。
転機は東京の展示会。高級スーパー「紀ノ国屋」のバイヤーが、ママさんががんばっている会社を応援したいと取り扱ってくれるようになり「ママが子供に食べさせたいドーナツ」というブランド価値が伝わったこと。単価も引き上げることができた。
保存料は無添加で、原料として使う「能登海洋深層水の塩」や「珠洲(すず)市産の大浜大豆のきな粉」など地元・石川の食材を使用し、野菜は積極的に規格外のものを農家から購入している。
午前9時半から午後4時
「ママとの両立」がコンセプトなので、旧軽井沢店の仕事は平日の午前9時半から午後4時。消費者に商品イメージを伝えようと、平成28年に開店した金沢本店の営業時間もほぼ同じだ。休日は多くの観光客でにぎわう旧軽井沢であっても、従業員の家族との時間は犠牲にしない。
同店の責任者を務める大塚菜穂子さん(38)は、志賀さんとは群馬県内のウエディングプランニング会社時代の同僚。出産を経て出身の長野県に戻っていたが、平成30年に第2子の切迫早産で失職。志賀さんを頼り、軽井沢にいながらリモートでウフフの事務や営業を手伝ってきた。1年前に出店したいと訴え、物件を探していた。
ドーナツは30~40種あり、毎日20種ほどが店頭に並ぶ。価格は200~350円。旧軽井沢店では、卵、くるみ、イチゴ、ブルーベリーも長野県産を使う。大塚さんは「営業職を経験してきたので、長野でも販路拡大や農家との提携などを進めていきたい」と意欲的だ。当初は4人でスタート。「将来は1日2千~3千個作れれば」と目標も大きい。
取引先もスタイル理解
志賀さんも「チャレンジしたい人には能力を生かせるポジションを作ってあげたい。軽井沢に店ができれば会社として多様性も広がる」と、大塚さんの開拓精神に期待する。
同社は、外部のママさんハンドメード作家が作るグッズのオリジナルブランド「グッチュ」を立ち上げ、新たな事業の柱も育成する。
社名の「ウフフ」にはママたちが幸せな気分で働けるようにとの思いが込められている。出荷日や時間が制限されていても、取引先も会社のスタイルを理解して協力してくれるという。ママたちの笑顔が周囲まで幸せな気分にさせる。(原田成樹)