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蒼い真紅

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私の【自伝】です。 3年ほど前に一度私の半生を綴っておりました。 ▶︎読んでいるだけで勇気がもらえた ▶︎こんな自分でも生きてていいんだ 僭越ながらそんなお声を頂きましたので、…
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2020年9月の記事一覧

31.夫が泣いた日

31.夫が泣いた日

プロローグから続いています。

ほんの少しずつ
薄皮を一枚一枚剥ぐように私は自分を前に向かせる。
向かせたくてもすぐ戻り
それでも這うように自分を前に向かせる。

自分の命を友人に預けた私は、
何百層にも重なる薄皮の向こうの光を求めるようだったが、
それでも前へ…
まだまだ見えない遠い向こうの光を追い続けていた。

自分を傷つけることは無くなった。
保育園の送り迎えも何とか自分でできるようになった

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30.死んだように生きる

30.死んだように生きる

プロローグから続いています。

今回はとても重い内容ですので
有料記事といたしました。

優等生を演じ切った私は、
当初の予定よりも早く退院することとなった。
平日の昼間の退院。
迎えは誰も居ない。

一人で清算を済ませ
一人でタクシーに乗り
一人で退院してきた。

お世話になりました。
そう、親身に世話をしてくれた担当看護師に伝えると
もう二度とここに戻って来てはだめよ!
まるで刑務所なのかと思

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29.こんなママでごめんなさい

29.こんなママでごめんなさい

プロローグから続いています。

わけも分からず荷物をまとめ、娘を保育園に預けてから
夫に付き添ってもらい病院に向かった。
娘とはしばらく会えないのだろう。
自分から離れる娘にホッとしているのか
会えない淋しさなのか
入院することへの緊張なのか…
もはやどんな自分だったのだろうかという記憶すらない。

閉鎖病棟は二重でドアが施錠され、
看護師と一緒でなければ外に出られないところだった。
到着するとす

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28.自分を失った日

プロローグから続いています。

この子を私のようにさせてはいけない。
この子を私のようにさせてはいけない。
この子を私のようにさせてはいけない。

やがて呪文は呪と化する。

娘は私から離れなければならない。
私と居ると不幸になる。
どうにかして私から離さなければならない。
藁をも掴む想いで、区の保健センターに電話した。
母子手帳に書いてあった相談窓口を思い出したのだ。

私と一緒にいる娘を助けて

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27.幸せを掴んだ瞬間に…

27.幸せを掴んだ瞬間に…

プロローグから続いています。

可愛い女の子が生まれた。
これまでの怒りや不安が嘘のような日々が待っていた。

大学も3年生までに単位を取っていたから、
大きなお腹を抱えながら出産の直前にあった最終試験を受け、
4年間で無事に卒業していた。

あとは育児に専念するのみだ。

毎日どころか毎瞬、毎瞬見続けても、
可愛い娘に飽きることはなかった。
毎日数百の写真を撮り、散歩に連れ出し、
これまでに感じ

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26.こんな私がお母さんになるなんて…

プロローグから続いています。

子どもを授かったことに喜べない自分を責めていた。
そんな私の気持ちを誰も分かってもらえないと悲観していた。

家に帰れば喜ぶ夫。
実家に連絡し「おめでとう」という言葉を浴びせられる毎に、
嬉しさを表現しなければならなかった。
お祝いを聞くのが辛かった。
喜べない自分を誰にも言えない自分が辛かった。

子どもが欲しくなかったわけではない。
ただただ怖かったのだ。
こん

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